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ドキュメンタリー『ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック』

アリソン・エルウッド『ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック』(2020、アメリカ 、120分)

ロック音楽が最も輝いていた時代を、ローレル・キャニオンという場所から語り直すドキュメンタリー。

米国の西海岸、カリフォルニア州の最大都市ロサンゼルス。

多くの店や人で賑わうハリウッド大通り、そこから車でわずか5分ほど走ったところに、その峡谷はあった。


時は1965年、ロックが爆発的に成長し始める時期。


知名度やヒット曲はまだないが、若さと野望と潜在能力はある音楽家の卵たちが集まり始める。

大都会のすぐ近くでありながら、周りは自然豊かで、創作活動にはもってこいの環境だった。

加えて当時は家賃が安く、その現実的な面も大きかったのだろう。


何十年経っても我々を魅了し続ける楽曲の数々は、自由な風潮のもとだからこそ誕生したのだろうか。

お互いを支え合い、新しい曲を書くよう励まし合っていたらしい。


学生時代からよく聴いてきたミュージシャンばかり次々と登場するので、最後まで興奮しつつ観れた。

その中でも特に、1960年代ではThe Byrds ~ Crosby, Stills and Nash と渡り歩いたDavid Crosbyの証言は興味深い。

その少し後、作曲においても抜きん出た才能を発揮するJoni Mitchell、Jackson Browneらに改めて感銘を受ける。


主な語り部として、写真家の二人、ヘンリー・ディルツとヌリット・ワイルドが振り返る逸話もどれも楽しい。

撮影したポートレイトの数々も、どれも被写体が心を開いているのがよく見て取れ、表情がまたとても良い。



そのような愛と平和を謳歌していたはずの60年代にも、終わりは近づいてくる。

シャロン・テートの事件、オルタモント・コンサートと、不幸にも相次いで人が亡くなる。

今作でも、それらはやはり象徴的な出来事として位置付けられている。



音楽が好きで自由に表現したい、当初はそれだけで集まった若者たちも、大きな成功を手にするにつれ変わっていかざるを得ない。

誰もが純朴なままではいられず、社会と、そして自分と折り合いをつけていかねばならない。


理想郷の、終わりの始まりが体現されているバンドがEaglesだと思った。

初期の開放感ある乾いた音作りから、アルバムごとに洗練されていき、売上はさらに記録を塗り替えていく。


この映画が描くのは、1975年辺りまで。

ちょうど、音楽業界が巨大な産業と化していく頃だとも言えるだろう。


この時代の音楽を全く知らない人でも、幸福な追体験ができるはずの傑作。

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