音楽映画花盛り ~極私的2024映画振り返り~
何はともあれ、まずはバーバラ・デインだろう。
今年一番良かった映画は、ドキュメンタリー『七転八起の歌手 バーバラ・デイン』。
監督のモーリーン・ゴズリングは『ルーツを掘る アーフーリー・レコード物語』という、やはり音楽ドキュメンタリーの大傑作を撮っている。
今年もいよいよ劇場まで出かける回数は減ってしまった。
画期的な企画である「イスラーム映画祭」も今年は結局『私は今も、密かに煙草を吸っている』の一本だけで終わってしまった。
そんな中でも、音楽映画に関してはピーター・バラカンさんがキュレーションする「Peter Barakan's Music Film Festival」を中心にいくつか観ることができた。
『ガーランド・ジェフリーズ ジャンル知らずの帝王』
『ボビー・チャールズ 極楽の歌』
『セッションマン:ニッキー・ホプキンズ ローリング・ストーンズに愛された男』
は特に印象に残った。
どれもこれまで過小評価されてきたり、光が当てられてこなかった人を主役にした点が共通している、意欲的な音楽ドキュメンタリー。
ようやく鑑賞できた『リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング』と『コンサート・フォー・ジョージ』も、劇場の大音量と大画面で体験できたのは良かった。
音楽に関する作品で言えば他にも、芸術家の肖像を描く『シド・バレット 独りぼっちの狂気』、祖国の政変に苦悩し世界的な名声の重圧にも迫る『ビバ・マエストロ!指揮者ドゥダメルの挑戦』、政治的サスペンスとも言いたい『ブラッド・スウェット&ティアーズに何が起こったのか?』、戦後にブルーズマンたちを「再発見」した旅を追体験できる『TWO TRAINS RUNNIN’』、現代のドラマーたちから通して見えるポピュラー音楽の歴史『COUNT ME IN 魂のリズム』などが記憶に残っている。
極私的には、長いこと入れ込んでいるフランスの映画監督ジャック・リヴェットの未見だった作品を何本か鑑賞できたのも嬉しかった。
『地に堕ちた愛 完全版』
『彼女たちの舞台』
は代表作と言ってもいいだろうし、少し珍しい『シークレット・ディフェンス』なんかもご厚意で観ることができた。
あとは一時期、配信で何本か観たのみ。
そこから一つだけ挙げるとしたら、メーサーロシュ・マールタ監督の『アダプション/ある母と娘の記録』が出色と思う。
そもそも映画に関する情報も、ラジオの1コーナー「アメリカ流れ者」を中心に町山智浩さんによるものぐらいしか取っていないし、何人かいる映画を愛する同好の士も頻繁に会える距離にはいないので孤立状態に近いが、2025年はもう少しだけ積極的に観るようにしてもいいのかもしれない。