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Thandi Ntuli(タンディ・ントゥリ)初来日公演

昨夜(10/8)観たライヴ、忘れないうちに感想を書いておく。速度重視で雑な文体をお許しください。

南アフリカ出身のピアニストThandi Ntuli(タンディ・ントゥリ)が来日公演を行うと知ったのは、バラカンさんのラジオから。そもそもこの音楽家の存在を意識したのも同番組。まるで讃美歌のような曲"Nomayoyo (Ingoma ka Mkhulu)"がかかっていて、一聴して美しいと感じた。


長野県のキャンプ場で開催された「EACH STORY」というイヴェントに参加後、都内でも演奏するということだった。代官山の通称「晴れ豆」。
本人のみのソロ公演。
舞台上はグランドピアノのみ。マイクは1本のみ、加えて歌用にもう1本。簡素なステージ。
3曲ほどを一塊にしているのか、湧き出すままに繋げているような演奏に思えた。実際のライヴは録音に比べて意外なほど力強さがあり、思い切りよく鍵盤を叩いている。特に左手つまり低音を中軸としながら、反復しつつ少しずつ展開していく。即興的に連なっていく様子は、やはりジャズが基本にある人なのかなと窺わせた。左足だったか、打楽器をつけてシャカシャカと鳴らしリズムを刻む箇所も。
まるで1950年代におけるブルーノート・レーベルのピアノ録音みたいでもあったし、いかにも南アフリカらしい明るい旋律もあった。簡単な曲紹介でミリアム・マケバのカヴァーも含むと言っていたので、それだったのかもしれない。
歌もアドリブが多そうだったが、旋律は柔らかで声も伸びやかなので、聴きやすさも同時にあった。
どこかにありそうでいて、他の誰にも似ていない音楽だと思った。
上述の"Nomayoyo"収録の最新作『Rainbow Revisited』はCarlos Niño(カルロス・ニーニョ)との両名義ながら、私が聴く限りでは実質的にタンディ・ントゥリのほぼピアノ弾き語りが中心。やはりMCで語っていたところによると、人種隔離政策=アパルトヘイト以後を「虹の世代」と呼んでいるらしい。その人種差別制度は1990年代初めまで続いていたから、1987年生まれのタンディ・ントゥリにとっては自らの根幹部分に立ち返るぐらいの意味合いがあったのだろう。自分自身と、自らが背負う歴史と、巨視的な立ち位置から見つめながら音楽を紡いでいる人だと感じた。そのアルバムタイトル曲も演奏していたはず。
2回のアンコール含め約80分ながら充実した内容。日本での知名度はまだそこまで…ということなのか、でももっと大きな会場なりフェスに出ていてもいい才能だし、もしバンドを引き連れて来られるのなら、さらに強力な音楽を聴かせてくれるだろう。自分は『Rainbow Revisited』(2023)と、まるで黄金期のソウル・ミュージックを彷彿とさせる傑作『Blk Elijah & The Children of Meroë』(2022)の2枚を聴いていたが、さらに過去作も掘り下げてみたい。

会場では開演前に音楽ライターの柳樂光隆さんがジャズ(関連する南アフリカのものだったらしい)をかけて場をあたため、客席にはそれこそピーター・バラカンさんも。本当に音楽が好きな人たちが集まって、みんなで盛り上げようという雰囲気がとても良かった。

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