
ドキュメンタリー『主戦場』
『主戦場』(2018年、アメリカ、122分)

これは観たいと思っていながら、公開から早くも3年が経っていた。
今回の再上映も好評だったようで、当初より期間が伸びたおかげでやっと鑑賞することができた。
私も含めて、誰しもが感情を掻き乱されずにはいられない慰安婦の問題。
これに真正面から、できるだけ距離を冷静に保ちつつ、逐一検証していくドキュメンタリー。
中核となるのは、幅広い人たちに直接語ってもらうインタビュー。
登場するのは、日米のジャーナリストから歴史学者まで実に様々で、さらには韓国の学生たちから声を拾ったりもする。
その中には、極端に見える意見を言う人もいる。
一方で、元従軍者の体験し目撃してきたことも明かされる。
それらを両論併記ではなく、並列に置き、観ている人たちに考え判断してもらう様式だ。
自由に話してもらうことで、まさに「語るに落ちる」場面もあったように私には思えた。
過去に犯した過ちをなかったことにできたら…と妄想する人たちの気持ちは分からないでもない。
しかし、現在がどこから来ているかを見つめられない人は、未来もまた見ることができないのではないか。
自分たちの主張を正当化するために、どの部分を、どのように都合良く、狡猾に曲解しているのか。
歴史を否定したり、事実を捻じ曲げようとする思惑に対しては、一つ一つ、きめ細かく丁寧に、論理的に反証していくしかない。
その作業が、とてつもなく労力と時間がかかることだとしても。