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映画『大都会』

映画は映画でまとめた方がいいかと思い直し、今日はこの感想のみを記します。
過去の投稿も、映画関連のところだけ抜き出して加筆修正のうえ編集し直そうかな。時間が空いたら。

インドの映画監督サタジット・レイ1963年の作品。
『ビッグ・シティ』の邦題になっていることも。

この作家は初めて観たが、これが現在にこそ触れられるべき名作と言える。特に2023年の日本で。
主題は、厳格な家父長制が通念となっている社会での、女性の進出。
「専業主婦として家庭を守るべき存在」の妻が、外へ働きに出る。
そのことで引き起こされる親世代との摩擦、彼女自身の内面の変化、夫婦間の行き違いが丁寧に汲み取られる。


舞台は1950年台初頭のコルカタ。
その大都市に生きる中流階級の一家が描かれる。
銀行員の夫は家族内で唯一の稼ぎ手。老いた両親、まだ学生の妹、妻、幼い息子と、一人で全員を支えるには苦しい家計状況が続く。

見かねた妻は、自身も当初は乗り気ではなかったが仕事に就くことを決心する。
富裕層への外回り営業で、すぐに要領を得て優秀な成績も収めるようになる。

助かる反面、大黒柱としての存在意義を否定されたように感じる夫は、釈然としない心持ちでいた。
そんな中、勤め先の銀行が突然に破綻し、失職してしまう…。


かなりゆったりとしたテンポで、モノクロの陰影や、アップを多用する撮影も効果的。
とりわけ、雇われる側の女性という弱い立場でありながら、経営者である中高年男性の抑圧に対して、はっきりと意志を表明する力強い眼差しが印象に残る。

この当時の街並みなども珍しく、服装や現代的な職場の様子なども興味深い。
そして都市部とはいえ、これだけ女性の社会進出に対して分厚い壁がそびえ立っていたのだなと、前世代の父と母が心底嘆いている姿で痛感させられる。
でも翻って、ジェンダー・ギャップ指数2022で、146か国中116位と大きく低迷し続ける日本は、この映画で描かれている現実からどれだけ進歩しているのだろうか。


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