【音楽】Harold Budd & Brian Eno - Ambient 2: The Plateaux of Mirror
<2006年03月09日の手記より>
音楽が音楽であるための必要条件とは何か。
バンドという形態から生み出される規則的なリズムと絶え間ないメロディ。あふれ出る情熱や悲哀、音波から伝わってくるエネルギーこそ音楽だと主張する人もいるかもしれない。確かにそれは音楽の一形態であろう。しかし、そうあらなければならないわけではないと感じるのは私だけだろうか。
このCDからあふれ出てくる音には、そういったアグレッシブさ、エネルギッシュさはない。ただただ、清水が音もなく湧き出てくるように、ぼんやりとした淡い音色が漂い出してくる。
そこに私は、ジョン・ケイジによって提示された音楽の一形態を垣間見るのである。音楽家によって作りこまれる音の連続のみが音楽を主張できるのではなく、偶然と環境とによって発せられる音の集合、環境による偶然のインプロヴィゼーションさえも、それは一つの音楽とみなすことができるのではないか。
夕暮れの帰り道、民家から流れてくるラジオの音が、風や、それによって擦りあわされる草葉の音と重なったとき、えも言われぬ美しさを感じることがある。
このCDから聴こえてくる音楽は、そんな優しくも切なく、懐かしい美しさを包含しているようだ。