見出し画像

「心を込める」はなぜ最強の戦略なのかー自宅待機の時代、だからこそ。

コロナ禍で会社は全社リモートとなり、全国の学校が休校している。

音楽ライブ、スポーツ、映画、演劇…人との物理的なつながりが突如、暴力的に絶たれた。しかも、その影響は緊急事態宣言が解かれた後、1年は続くだろうと予想されている。(それ以上という予測も)

社会構造が根本から覆されてしまった時代、これからいったい何がおこるか。未来予測は野暮なのだけど、こんな未来が待っているのでは、いや、こうなってほしい)、と考えさせられるできごとがありました。

3歳の娘の入園する学園では、開校が延期となり、先生も子どもも「会いたいのに会えない」という状態が続いている。そんななか、園から提案があったのが、「絵本の10冊セット」という贈り物。ライブラリーから先生方がその子にあったタイトルを選び、貸し出しをするというもの。

「その子にあった」

とサラッと書いたが、まだ入学前の子どもたち。しっかりコミュニケーションをとったこともない。なのに、セレクトされた絵本のラインナップには、

「これが好きかな?」「これも気にいるんじゃないの?」

と、先生方が、想像を広げ、一人一人を思い浮かべてくれた跡がにじんでいた。(ZOOMや掲示板といったオンラインツールで何度かやり取りをした、その経験を元にしたのだと思います)子どもも、さっそく「読んで読んで」とせがんでくるではないか。

そんな「絵本ボックス」というアイデアと、その選定、そしてそこに書かれた手書きのメッセージを見て、「あぁ、手ざわりのあるやり取りだな」と思わされた。

リアルで会うことが制限されたなか、「ふれあい」の感覚という価値は相対的に高まってくると思う。たしかにZOOM の会議ツールは、仕事の打合せをスムーズにした。セミナーやオンラインサロンも代替できてしまいそうな勢いだ。それでも、まだ物足りないものがある。それが、人との交流で失われてしまった、ノンバーバルなコミュニケーション。

人は、人と会うときに、単に言語のやり取りだけを交わすのではない。話すことがない「沈黙の時間」も人と会う価値だし、見ず知らずの人と一言も会話を交わさなくても、同じ空間を共有すること(フェスとか!)だって自分を肯定させる得難い時間だ。

だからこそ、その「情報や目的」に、気持ちを乗せられることは、すごく価値になる。「心の込められたもの」が、これから、もっともっと、求められていくと思う。

たとえば、軽井沢に引っ越して行きつけにしている定食屋さん「御厨」。とても気持ちのよい空間だ。ご飯が高級食材、というわけでも、リッチな食器や内装、というわけでもない。空間も人も食材も…そこにいくと安心するのだ。そっと子どもにトトロの折り紙を渡す、そんな接客に心が温まる。

だから、なんだってよいと思う。そこに、心を込めることができるかどうか。いやいや、もっとつきつめていくと、発信者が、その商品やサービスを大好きであるか、相手に届けたいと心から思えているか。戦略でもなんでもなく、そんな「とうぜんのこと」がたいせつになる。そんな未来が訪れて欲しいなと思っています。

いいなと思ったら応援しよう!

坂口惣一|編集者|あさま社
この記事は「投げ銭」記事です。サポートいただいたお金は、家庭菜園で野菜をつくる費用に投じていきます。畑を大きくして、みなさんに配れるようにするのが夢です。

この記事が参加している募集