見出し画像

移住先で運命的な"土地"に出合う方法〜軽井沢日記

こんにちは。2020年3月に軽井沢に移住後、いつかはこの地で持ち家を、と思っていたのですが、ようやくその計画が動き始めました。21年9月に基礎工事が着工。22年の3月竣工に向けて工事が始まりました。

まだまだ決めなければならないこと、ハードルは多々ありそうなのですが、ここで一度、「土地探し」について振り返っておきたいと思います。軽井沢での土地探し。あくまでたったひとつのサンプルにしかすぎませんが、誰かの参考になればと書き残します。あるいは、移住先がどこであるかに限らず、あたらしい場所で運命的な土地に出合うヒントになればうれしいです。


1・まずは賃貸物件ー利便性を重視!

我が家の土地探し。

少し時計の針を巻き戻して、賃貸物件をどう探したか、をまとめてみる。

移住当初は、「賃貸暮らし」からスタートさせた。場所は、中軽井沢の住宅街。別荘地の雰囲気は、ない。だが、ここに決めた決定的な理由がいくつかある。

1・立地:中軽井沢駅、ツルヤに近く、学校(風越学園)に自転車でなんとか行ける距離

この立地条件にいきついた要因としては、「妻がペーパードライバー」「毎日の東京への通勤」の2つが大きい。都内では車を所有していなかった我が家。妻が東京で教習所に通ったとはいえ、あまりの下手さに路上に出られなかったほど。最悪、車移動はできないかもしれない。その前提で、車ナシ生活ができる立地を選んだ。

今でこそコロナ・テレワークという働き方を選べているが、引越し当時は新幹線通勤が前提。となると、「軽井沢駅」にできるだけ近い方がいい。とはいえ、軽井沢駅近辺には賃貸物件が少ない。しかも軽井沢駅の周りは生活圏(スーパー・コンビニ・ドラッグストア・病院など)にも少し距離があり、踏み切れなかった。

交通の便で言うと、実際の東京往復にかんしては、帰路に「しなの鉄道」を利用する頻度は意外と高い。子どもが8時半に就寝するライフスタイルで、しかも車が1台であれば、妻による「夜の送迎」には不確定要素が多すぎる。その点、「中軽井沢駅」であれば、接続がうまくいけばしなの鉄道で、深夜であっても軽井沢駅からタクシーでも2000円。無理のない範囲だ。

結果、この選択はとても良かったと感じている。

移住の最初のタイミングで「中軽井沢」エリアを選ぶメリットは、次の5つだろう。

◉生活圏のお店が揃っている。そこに自転車でのアクセスできる(ホームセンターのD2やカインズにも意外とお世話になっている)

◉軽井沢方面(東)、追分方面(西)、発地・南軽井沢に出やすい。駅近であれば東京圏との行き来にストレスが少ない。(追分までいってしまうと車での軽井沢駅へのアクセスが30分以上になる)

◉温泉(星の温泉、八風温泉)へのアクセスが良い(車で5分)

◉住宅街なのでひとまず安心(別荘だと周囲に定住者がゼロの場合も)

◉停電がほぼない(ここ1年半)

2・軽井沢といえば・・・の別荘地エリアはどうか?

「別荘地」と呼ばれる場所を、定住地に選ぶ際に気をつけておかなければならないことがあればなんだろう? 

それは、やはり車の運用だと思う。

雪が降れば、市街地に降りられない(相当に苦労する)立地の別荘も多い。特に危険なのは、路面が凍った日だ。別荘用地であれば、行政の「雪かき」ルートに入っていないこともある。のちほど書くことになるが、今回、引越し先に選んだ「別荘地」では、定住者がいなくて、雪かきルートに入っていなかった。2駆の車では、実際に凍った坂を登るのも困難だと思う。

また、渋滞もストレスのひとつ。ここ2年ほどはコロナの影響でさほどではないと感じるが、星のエリアの前の道はとにかく混みやすいし、朝夕の18号は早く裏道に抜けたくなるほど動かない。夏の間は、混雑を避けて、御代田ツルヤを利用する人も多いと聞くが、追分からであればともかく、中・南軽井沢エリアからは遠すぎる。毎週のことなので、ストレスがないに越したことはない。

3・霧は?寒さは?家賃は??

霧は夕方〜夜に出ることが多い。車を運転していて、さきがまったく見えません!ということも、もちろんある。けれど、これは個人的な感覚だけど、幻想的だな、気持ちいいな、と感じることが多い。

湿気についても、靴箱の革靴がカビた、、ということは経験したけれど、体調が悪くなったり、喘息が発症したり、ということはなかった。この辺りはむしろ家自体のスペックに関わってくる問題だと思う。冬の寒さ対策を考えると、ある程度の「断熱機密」が取られている家の方が間違いない。けれど、別荘地であるからか、夏仕様の家が多くて、年間通しての定住むきの物件はかなり少ない(それが価格にも出てしまうのかも)。我が家は一戸建ての築10年ほどの物件。それで、家賃は15万。もちろんこの金額で、庭付きの戸建てに住めると思えば安いのかもしれないけど、都内からきて家賃を押さえるという発想は一度脇においたほうがいいのかも。

4・「森見え」か「山見え」か

ここまで、賃貸物件探しの経験と、実際に中軽井沢駅の周辺に住んでみてのメリットを書いてきたわけだが、それでも「定住用の戸建てを建てよう!」と決心したときに、やっぱり「森の中の別荘地」というイメージは捨てきれなかった。後ほど書くことになるが、中軽井沢の住みやすさから「前沢」という、ふるさと公園近くの土地に申込みを入れるくらいには、このエリアを気にいっていたのだ。人は、最初に住んだエリアに愛着をもつので、それもあると思うけど。

さて、土地探しである。

我が家は20年9月頃から、ゆるゆるとはじめた。その頃から、軽井沢が移住地として注目されはじめ、不動産の価格が高騰。飛ぶように土地が売れている時期でもあった。不動産屋は口を揃えて、「売る土地がない」「こんなことはじめて」と言っていた。そんな状況だったので、焦ったのは事実。

まず、我が家の当初のイメージは2つ。「森の中の別荘地」、そして「浅間山が望める眺望の良い場所」。いわゆる、「森見え」か「山見え」。実はこの条件が迷走をよぶ「罠」になる。

というのも、軽井沢の土地を見ればわかることだが、その土地の形状は、北の浅間山からなだらかに南にくだっている。よほどの山の上の別荘地でもない限り、南方面に視界が開けるのがほとんだ。しかも、森の中になればなるほど、当然ながら山は見えない。日当たりや、眺望は、ない。

子どもを育てるのにぴったりの日当たりのある明るい環境(=陽)と、森の中で気持ちを落ち着かせチルアウトする別荘の環境(=隠)という掛け算のないものねだりをしていたのが、我が家の状況だった。

行ったりきたりで、なかなかエリアが絞れない。

その中で、優先順位は意外なところから決め込むことができた。

それが、子どもの通学だ。学校が位置する南軽井沢に、どのように通学するか。子どもが小学生になったときに、自立してみずから交通機関や徒歩で、歩いて帰ってくることができるか。しかもある程度の安全性を担保した上で・・。

この視点は、土地柄ならではだと思う。

たとえば、エアビーで1週間滞在するのであれば、千ヶ滝のエリアは最高だ。だが、車問題やご近所さん(定住者)がいない状況で、小学生になった娘が帰宅する姿がどうしても思い浮かばない。小学校の高学年になっても車で送迎するのはどうだろう。バス通学となれば、外灯もほとんどない通学路(というか別荘地)を一人で歩かせることになってしまう。多くの別荘地エリアの立地は、ひとけの少なさゆえに「別荘地」なのであって、車移動と夏仕様を前提としてこそ、そのメリットが享受できる面が大きいと言える

5・足で稼げ! 不動産屋をめぐり

そんなこんなで迷走を極めていた土地選び。優先順位は、少しずつ明確になっていくものの、肝心の土地との出会いはかなり希少である。

ふっと気づくとネットで検索してしまう。

取り憑かれたように・・・。

「検索しても出てくるはずないのに・・」

そうわかっていても、見ずにはいられない。病気である。そんな生活にも疲れかけていたある日。もし気に入った土地と巡り合えるのであれば、それはまだ公開されていない土地だろう、という予感から、不動産屋を直接たずねて回ることにした。というのも、「あ、ここはいいな」と思う案件のほとんどが「これから出す予定ですので、ここだけの話・・」という注釈付きで紹介されることばかりだったからだ。

飛ぶように土地が売れている。

良い条件がネットに残っているわけがない。

そこで、地元の不動産屋さんに片っ端から電話をかけ、会いに行った。「せっかくきてくれたのだから」と、未公開の土地を見せてもらった。もちろん、それもご縁。「残念ながら・・・」と断られることの方が多かったけど。

そんなこんなで、一件、気に入った土地に出会う。

妻も「ここでいいんじゃない?」という。ほぼ決めよう、とまで思っていた。

でも、なんとなく、ここでいいのかな、という引っ掛かりが晴れない。

そんなときに、別件で電話を入れた担当さんに、「ちょうど坂口さんに電話しようと思ってた案件があるんですよ」と提案を受ける。

それは、雪の積もった日だった。

今思うと、バカなんじゃないか、、と思うけれど、今すぐ見に行かねば!!と、雪の中、自転車を走らせて、現地を見に行く。妻が車を使い、出払っていたからだ。

しかし、、、雪にハマって自転車が動かない・・・。

「え、こんななか、自転車で来たんですか??」

画像1

自転車を乗り捨てて、走って向かった姿を見て、不動産屋さんもびっくり(そりゃそうだ)。おかげで無事に土地を見ることができた。

こうして結局、浅間山は見えないものの、森の中の別荘地に土地を買うことになった。まとめておくと、決め手は下記の5つ。順番に並べるとこんな感じだ。

1・こどもの通学への立地(徒歩圏内)

2・年間で管理費がかからない別荘地

3・価格帯(1000万円代前半で)

4・山の中の雰囲気(建蔽率20%エリア)

5・定住者が一定数いるエリア

みていると、当然ながら「別荘地」エリアの案件数は多かったのだけど、その中でも「定住者がいる」「管理費がかからない」という逆行する条件を上位にあげてしまったのは、混迷を極める原因になったかもしれない。

6・土地の価格だけで決めてはいけない

ここで一点、当時の自分に伝えたい反省点をいくつか。

まず、土地から注文住宅で建てるということは、土地購入金額にプラスアルファがかかるということを覚悟しておかないといけない。具体的には、伐採費と地盤改良だ。うちは、伐採でおよそ80万、地盤改良で200万円ほどかかった。となると、土地代にプラスして、300万円弱。正直、多少の値引きなんて吹っ飛ぶプラスオンだ。

実際に土地を探すときや検索するとき、金額のソートをかけると思うが、似た条件で300万円安ければ、当然安い方を選ぶことになだろう。けれど、その土地に改良が必要かどうか、周囲の実績から確認しておいた方がいい。もちろん、伐採については、目で見ればわかるだろうが地盤改良は調査してみないとわからない。たとえば借宿・大日向は地盤が比較的良いとされ、南軽井沢(小倉の里あたり)は確実に改良が必要と言われるなど、傾向はある。その視点で、土地にかける費用をおさえて建物にかけるという判断は(今思えばだが)賢明なものだと思う。

7・土地でもう一つ、大きな問題が生じた

実は話はここで終わらない。

土地の決済をしたときに、以前の持ち主から引き継ぎを受けたのだが、それが後々、なかなか大変な事態を引き起こすことになった。その引き継ぎというのが、この言葉だ。

「土地に希少な花が咲いているので、大事にしてあげてください」

この言葉を聞いたとき、「あぁ、そうか、そうだよね。長いこと山林な場所だし、希少な植物がいても不思議じゃないよね。むしろ、そんな大切な植物がいてくれるなんて、大事にしなくちゃ♩」

その植物は、「ヤマタバコ 」というらしい。

画像2

さっそくネットで検索してみる。「環境省レッドリスト絶滅危惧種1A類指定」とある。全国でも軽井沢に多く、独自の調査によると、花茎を確認できる1600株という数は日本でも唯一と言える自生地らしい。

さっそく、その記事に名前の載っていた、NPO 団体「サクラソウ会議」に連絡をとる。それと並行して、軽井沢に詳しい人物にもコンタクトをとった。まずは自分の置かれている状況がどんなものか、客観的にアドバイスをもらいたかったからだ。その方曰く、「これまで植物保全のために建設反対運動があったこともありました」

「え・・」

「もしや自宅建設の反対運動が起きるの??」

自然保護について賛同していながら自分が破壊側に回るのでは?という懸念が立ち上がる。まさに綺麗事ではない、当事者になってしまった…。

だが、結論から言うと、おおきな問題にならずに解決することができた。その理由の一つは、保全団体のサクラソウ会議に皆さんが、建築それ自体に理解を示してくださり、植物の移植に協力してくださったからだ。

希少植物の移植は勝手にしてはならないそうだ。県への届け出が必要になる。実はこの届出も、3〜4往復くらいしてようやく受理してもらえた(こちらの不備とはいえ、かなり細かな申請が必要なのです)

移植先の問題もある。その点に関しては今回、移植先に軽井沢植物園さんが協力してくださった。

こうして、5月の若葉が大きくなってきたタイミングで、サクラソウ会議のみなさんと一緒に移植作業に取りかかった。そのことは、地元の新聞記者の方が記事にしてくださった。

写真がヤマタバコ です。キャベツみたいで可愛いですよね。

8・運命的な"土地"に出合う方法

実は、この移植騒動がきっかけとなって、自分が購入した土地と、そこに生きる植物に強い関心をもつようになった。

それまではただの植物・草木、という総称(概念)でしかなかったものが、その希少性とともに「名前」をもって自分の中に入ってきた気がした。樹木についてもそうだ。植木屋さんにお願いして、土地にどんな名前の木が自生しているか調べてもらったりもした。スマホアプリで、植物の葉や花を撮影して、同定する作業を何度も繰り返した。

知るほどに愛着は湧き、希少種以外の植物たちを、できるだけ建築するエリアから脇にどいてもらうよう、移植をした。それこそ家族総出で。

前述の伐採作業費のところで、たしか費用感として80万円と書いたけれど、これは40mクレーン車を駆り出したからでもある。木を倒すだけ、というやり方の方が費用は抑えられたかもしれない。けれど、それでは土地が傷み、伐採以外の木も全滅してしまう。多少の費用がオンされても、最小限にダメージにしたかった。これも、もはや愛着のなせる発想であろう。

今回の一連の出来事を通じて、人生についてすごく豊なものをもらった気がしている。そう書くと大袈裟に捉えられるかもしれないけれど、やはりこれだけ動いて(お金も動いた)いろいろと話を聞き、情報を探し回り、心の声に耳を傾けた結果、山野草への出会いと、土地への愛着が湧いた。

移植を手伝ってくださったあるスタッフのかたがこうおっしゃった。

「これは、フカフカしていい土ですね〜!」

実は、植物の移植の一件があるまで、僕は正反対の見方をしていた。湿度が高すぎて生活しづらいかもしれない、早まったか、悪い案件を案件に突っ込んでしまったかもしれない、、、と。

だけど、視点を人間から植物に移してみると、そこは、ある程度の湿度が保たれて、日照も適度に入り、なにより西日の影響を受けないとても希少な環境だった。しかも何十年も降り積もったカラマツ の落ち葉が何層にも腐葉土を形成している。ホームセンターに行く必要もないくらいに、栄養土が高そうだ。

「ここは運命的な土地だったな」

その確信は、もしかしたら付き合いだしてから徐々に醸成されていくものかもしれない、そのことを今回知ることができた。

よく、土地探しのエピソードなんかで、見た瞬間に一目惚れでした、感じるものがあって、なんて話を聞くけれど、実際のところどうなのだろう。間違いなく言えることは、初見にビビッときた運命的なものがなくとも、土地を知り、環境を知り、そこにすでに住んでいる生き物たちを知ることで、自分とのかかわりは強く太くなっていくのだろうということ。もちろん、土地の購入だけじゃない。どこかに根を下ろして生きようとする時、知ろうとする行為は、きっと思いもかけないものと出会わせてくれるエンジンになってくれると、僕は今回のことを通して実感することができた。


この記事は「投げ銭」記事です。サポートいただいたお金は、家庭菜園で野菜をつくる費用に投じていきます。畑を大きくして、みなさんに配れるようにするのが夢です。