歯列矯正はじめます
歯並びが悪いというコンプレックスは常にあった。
でもどうしても矯正に踏み切れなかった理由は、子供の頃、10年くらいに渡ってすでに矯正をしていたから。
たまたま虫歯治療か何かで行った歯医者さんで、顎が小さいのに歯が大きいので、このままだと永久歯が全部並びませんよ言われ、急転直下で矯正を始めることになった。
治療費がいくらで、決して楽ではない家計の中、どうやって両親がそのお金を工面してくれたかは定かではないけれど、とにかく何の心の準備もないままに治療が始まった。
親がきちんと治療計画を説明されたのかどうかも定かではない。おそらく、アメリカで歯科矯正技術を学んできたばかりの先生の、ある意味モニター扱いになっていたのだろう。小学生の私に丁寧な説明があるわけでもなく、勝手に好きなように治療されているようなかんじだった。
矯正はしゃべりにくい、食べにくい。歯が動いている間はとにかく痛くて不快。その上見た目も悪い。
何の説明もなく調整が入り、どんどん歯並びが揃ってくるならまだしも、前歯の間にぱっちんどめが入るくらい隙間が空いたこともあって悲しい気持ちになったこともある。辛くて嫌だった。
そうこうしているうちに、通っていた歯科医院の先生が突然亡くなった。
治療は1時間に3本しかない電車に乗り、駅から15~20分歩かなければいけない歯科医院に引き継がれた。
そこの歯科医院でも同じように治療計画を説明されたことはなく、どういう状態を目指しているのか?どういう状態になったら終わるのか?終わりの目処についても一切(私に)説明はなかった。
同じように予約された日に通い、器具の調整をするだけ。
高校生くらいになった頃には、通う時間も無駄だし、器具を入れているのも嫌になって勝手に行くのをやめてしまった。もちろん、歯科医院からの連絡も一切なかった。
・・・そして今日に至る。
当然気づかないうちにじわじわと歯は動き、気づいたら「あれ?こんなに前歯歪んでたっけ?」という取り返しのつかない状態に。
笑うたびに歪んだ前歯が目立つのを、できるだけ見ないようにしてきた。
治したい気持ちはあっても、あの嫌な時間をまた繰り返すのか・・・と思うと憂鬱で踏み切れなかったのだ。
だけど、技術は格段に進歩しているはずだし(最初に矯正した頃から40年以上経ってる)、今なら治療費も出せる。
年齢的にはもうこれがラストチャンスと思い、一念発起した。
出ている前歯全体を下げて横顔の印象まで変えるには、抜歯が必要かつ時間もかかる。何が何でもやるぞというくらいの覚悟が必要だ。
悩んだ結果、上下の前歯部分の並び(ガタガタ)だけ治療することにした。
これならリテーナーを付ける期間をのぞいて、装置を付ける期間は1年程度らしい。ゼロが6個つく費用を出すつもりで臨んだけど、部分矯正になるので費用も少なく済みそう。
痛くて不快なのは嫌だけど、まだしばらくマスク生活も続きそうだし、約1年後、思い切ってやってみてよかったなと思える毎日が来ることを夢見て、頑張ろうと思う!