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失敗した展示会出展の実例から考える

先日、飲食店さんからの依頼で、そのお店のオーナーさんからのご相談を受けました。

そのオーナーさんはほぼワンオペでお店を経営されているのですが、業績向上のために以前OEMである商品を製造してもらって販売していたそうです。オーナーさんがこだわってレシピ開発をしたその商品は美味しくて人気もあったらしく、満を持して東京の大きな展示会に出展されたそうです。

展示会には全国から様々なバイヤーさんが何万人も来場され、圧倒されたそうです。その商品の試食は味がとても好評で、引き合いが結構あったようです。ただ、オーナーさん曰く、「見積りを出したら掛率が合わないって言われて、話が決まらなかったのです」とのこと。

「何掛けで提案したのですか?」と聞くと、「9掛です」とのことでした。9掛とは販売価格=上代の90%のこと。100円の上代のものだと90円で卸すという意味です。

9掛では絶対に仕入れてくださらない、というわけではありません。その商品が超有名人気商品で、儲からなくてもいいから扱いたいとバイヤーさんが思うものであれば。

そうでないなら、9掛はハードルが高すぎます。9掛にした理由を聞くと、「原価が高いので」とのことでした。であれば、販売価格を上げて掛率を下げるべきです。

結局、出展された展示会での成果はゼロだったそうです。地元の商工会のブースでの出展ということで、出展料は商工会負担でかからなかったそうです。ただ、会期中の自分の人件費、旅費交通費、店をお休みして出展されたそうなのでその期間の店の利益を回収できていないという話になります。

その経験もあって、展示会に出て行っても話がまとまらないと結論づけられ、そのオーナーさんはそれ以降展示会には出展していないそうです。

このお話を聞いて、私ははすごくもったいないと感じました。上代を上げて適度な掛率にしておけば、成約に至れた案件もあったはずです。本件は、ただ上代設定が低すぎたという話に尽きます。

そのことに気がついて再チャレンジしていれば、卸事業が利益を生み出して、飲食店経営を少しでもラクにできていたかもしれません。

さらに言いますと、この初めて展示会に出展された方に無償で展示会出展の機会を設けてくださった商工会さんが、商談が成立しやすい掛率や上代設定のアドバイスをされていれば、初回から注文がもらえたかもしれません。

商工会の経営指導員さんがそこまで具体的に話をすることが難しいようなら、私のようなこの世界の専門家と初出展の方を引き合わせて、展示会の前に適正な上代や掛率について協議しておく機会があると、とても良いなと思います。

このオーナーさんのように、卸の世界へ打って出ようと展示会に出展し、うまく行かずに1度出展しただけで卸の世界を諦めてしまう方が多いです。そうならないためにも、場の提供だけでなく、そのサポートが大切だと思っております。

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小規模食品メーカーコンサルタント山添利也
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