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掛率一律の落とし穴と対策

まずは2つの事例のご紹介から入ります。

1つ目は、3年前にとある展示会に初めて出展される方向けのセミナー講師をさせていただい時に受講されたA社です。

私はそのセミナーで、その展示会に来場されるであろうバイヤーさんの中で、一番キツいであろう掛率は◯掛ですという具体的なお話をしました。

そして展示会当日開場直前に、私のセミナーを受講されたA社の社長さんが教えてくれました。

「山添さんのお話を参考にして、一律◯掛にしました」と。

一律にしてくださいとはセミナーで一切お話をしていなかったので、私の伝え方が悪かったのだと思い、

「あくまで一番キツいであろうバイヤーさんが◯掛くらいとお伝えしたかったのです」

「高く買ってくださる方もおられるので、そこは各バイヤーと交渉してください」

とお伝えしました。開場までにギリギリ間に合いました。


2つ目は、紹介を受けて初めてお話したB社です。

そのB社は、一律○掛にしているとのことでした。

B社が設定している一律の掛率は、この世界ではメーカーさんにとってはありがたい好条件ですが、仕入れるバイヤーさんにとっては厳しい掛率でした。

「その掛率では販路を広げるのは厳しいと思います」とお伝えしたところ、「だったら販売店さんが上代上げてくれたらいいんですよ」とB社の社長は言っておられました。


この2つの事例はメーカーさんから見ると、A社は厳しい条件、B社は好条件ですが、共通しているのは一律であるということです。

一律にするという考えになぜ至るかというと、「案件ごとに毎回考えるのが面倒くさい」という考えがあるからです。A社の社長もB社の社長も実際そう言っておられました。


私から見ると、A社は自社の利益率を下げてしまっています。

設定している一律の掛率よりも高く買ってくださる販売店さんはたくさんあるであろうからです。

面倒くさいという理由だけで自社の利益率を下げてしまうのはあまりにもったいないです。


B社はバイヤーさんに負荷をかけてイヤな思いをさせています。

仮にB社の掛率設定が8掛で、バイヤーさんが7掛でないと仕入れられないとします。

そうなるとB社はバイヤーさんに、「7掛になるように上代上げてくれたらいいですよ」と伝えるわけですが、バイヤーさんからすると、「なんで私が計算せなあかんねん!」となるわけです。

仮にバイヤーさんが自分で計算をしてくれたとしても、決めた上代の責任はバイヤーさんになりますので、仮に他店よりも高くなってしまった場合、他店の方が安かったとお客様に言われるのはバイヤーさんになります。


大きなスーパーさんに卸すような大手の問屋さんだと、むしろ上代を上げることが普通だったりします。

しかしほとんどのバイヤーさんは、上代をメーカーさんが決めた上で、それに対して何掛かの交渉だけで済ませたいのです。


B社はさらに言いますと、掛率が自社にとって好条件すぎました。

その後B社は結局、設定していた掛率では新規取引先を得ることができず、掛率を下げることになりました。


この商いにおいて、「面倒くさい」と考えるのはもったいないのです。

何掛までならOKという下限の掛率設定は必ず決めなければなりませんが、その上で、できるだけ高く仕入れていただくためにどうするかを考えるのが、卸の醍醐味です。

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小規模食品メーカーコンサルタント山添利也
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