(ネタバレなし)『FF16』は魅力と失望が絶妙な天秤にかけられた「振り切れない」ゲームだった

FINAL FANTASY XVI (以下FF16)は、制作陣が強く推している「ストーリー」「バトル」の各要素において「大きな感動とそこそこの失望」が入りまじるせいで、「おもしろい!」「つまんない!」といった単純な感想が出てこないんですよね。言いたいことはたくさんあるのに、感想を結論付けられない不思議なゲーム体験でした。

バトル面は通常・召喚獣バトルの派手さ・スタイリッシュさ・手応えにおいて感動の連続でした。だけど、右肩上がりで盛り上がりを見せてくれた召喚獣バトルで突然の肩透かしをくらったせいで「召喚獣バトルがマジでヤバいのよ!!」ってテンションで語れない。「ヤバい!……んだけどあそこはちょっとね~」みたいなノイズが入ってしまう。

とある召喚獣バトルに関して、不満や不完全燃焼感を吐露しているツイートをそこそこ見かけました。「題材のおもしろそう感」と展開とのマイナスギャップがあまりにもデカすぎた。既プレイヤーなら、どのバトルを指しているのか分かってくれる方も多いのではないでしょうか。

ストーリーに関しては「ゲーム・オブ・スローンズ」や「ウィッチャー3」といった名作と呼ばれる作品から早々に脱落するほど西洋ファンタジーが苦手な私でもぶっ通しで半日遊んでしまうくらい、ツカミや盛り上げは最高でした。私が苦手な「カタカナ専門用語」をリアルタイムで解説してくれるアクティブタイムロア機能は、没入感を高める大発明といえるでしょう。

しかし、

「結局あの伏線は何だったんだろう?」
「なぜクライヴは根拠なく信じて行動できる?」
「活動への疑問や葛藤は描かないの?」
「大切な人と再開して嬉しくないの?」

といったストーリー展開に関する疑問が後半につれて増えていき、次第に心が離れていくのを感じてしまいました。

なので、「ストーリーは合わなかったけどアクションがとにかく最高だから!」「アクションはそこそこだけどとにかくストーリーが良いのよ!」みたいな結論が出せない。推し方に迷いが出る。

ストーリーもアクションも、大きな感動とそこそこの失望があるから。

そして、今回が初めてのFFとなる私はプロデューサーさんの発言に「騙された」と思っています。
プロデューサーの吉田直樹さんは「1週目で物語を気に入ってもらえたら2周目のサブクエで深掘りするのがおすすめ」と発言。

その通りに遊んで後悔しました。

なぜならストーリーの魅力を左右するサブクエストが終盤に多発することを、クリア後に知ってしまったから。
それなら、一番ストーリーが新鮮な状態で深掘って楽しみたかった。

「いや、遊び方ぐらい自分で決めろよ(笑)」

そうですよね。でも、初めて入った天ぷら屋で店主さんから
「まずは塩で食べてみてください」
と言われたら、「とりあえずはそうしてみようかな」と思いませんか?
私は「店主おすすめの食べ方よりも、いつも通りつゆで食べれば良かったな」って、そういう後悔をしています。

話を本筋に戻すと、FF16は「褒めればステマ」「貶せば炎上目的」といった極端な枠に嵌めにくいゲームだと思っています。
プレイヤーによっていつ、どのタイミングで、どちらに感想が転んでもおかしくないくらい、凄い魅力と気になる点が天秤で釣り合っているゲームだったから。

私は「遊んで良かったな」と思っています。



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