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SNSに跳梁跋扈する「日本語が分かるのに日本語が読めない妖怪」たち

X(旧Twitter)のタイムラインやYoutubeのコメント欄を眺めていると、あちこちで紛争が起きているのを目にすることがある。このしょうもないケンカの数々は、何が発端になっているのだろう?

「バカ野郎」の捉え方

例え話をする。
若い男性が亡くなってしまったお葬式で、友達が思いを吐露するシーンだ。
「なぁ〇〇よ、いくらなんでも死ぬには早すぎるだろう……!何やってんだバカ野郎……!」

普通に読めば、この友達が、亡くなった人に対して誹謗中傷しているわけではないのは明らかだろう。悲しくて、悔しくて、そんな気持ちがあふれて「バカ野郎」と叫んでしまった。

だが、SNSでケンカ騒動が巻き起こるパターンで多いのは、こういった場面に対する次のような反応である。


「亡くなった人に『バカ野郎』とか最低すぎるだろ」

そのケンカは何に端を発するのか

日本語が分かるのに日本語が読めない人の特徴を結論から言うと、彼らは常に「文脈ではなく単語に反応している」のだ。

その単語がどのような文脈で使われたのかは関係がない。彼らは単語に向かって反発心を覚えた勢いのまま、呼ばれてもないのにコメント欄へ飛び出てくる。

分かりやすい例で言えば、ネット記事のタイトルだけを読んでフガフガ怒りながら拡散するタイプがこれに近い。記事を読めば真意が分かるのに、実際の動画を見れば表情や声音で意味が分かるのにも関わらず。

妖怪に反応されたら

もしもネット上でこういった人たちに絡まれてしまったとき、その対処法は古代から伝わる秘法、「全力スルー」しかない。

こちらが理路整然と返答をしたところで、彼らに文脈を読み取る力も意思もないからだ。予想外の方向から飛んでくる歪な弾丸で精神を削られるぐらいなら、最初から相手にしない方がまだマシ。

残念ながら対話がまるで成立しない「ガチモン」が存在するのは厳然たる事実なので、ブロックやミュートなどを活用してステマチックに距離を置くしかないのが現実だ。

私たちが妖怪にならないためには

私たちが読み手として妖怪になる可能性もゼロではない。体調や感情の波によっては、うまく文脈が入ってこないこともあるだろう。前提としてそのようなタイミングでSNSに触れるのは二日酔いで飲むテキーラくらい最悪だが、いくつかのポイントを抑えておけばいくらか妖怪化を防ぐことができる。

・SNSのネット記事に「見出しだけで反応しない」
記事本文や掲載された動画をみて全体像を冷静に把握しよう。桃太郎だって、一場面だけを切り抜けば島に上陸して金銀財宝をかっぱらう横暴な簒奪者だ。

・読書に親しもう。
SNSにも優れた長文はたくさん転がっているが、プロの作家とプロの編集者とプロの校閲者が関わっている書物は、文脈を読む力を蓄えるのに最適な教材となる。本が苦手な人がいるのも分かっているつもりだが、実は世の中には信じられないほどおもしれぇ本がいっぱいあるんだゾ。

・コメントする前に立ち止まろう
文章はトリックアートみたいな側面もあるから、立ち止まって読み直すと意図が180°ひっくり返ることがある。「反感を覚えたけど、よく読むとそういうことを言いたかったわけじゃないんだな」となるケースは少なくない。

書く側に問題があるケースもゼロではない

これもよくあるのが「悪意がないのは分かるけど、その書き方は誤解を生むだろうな」という言葉の使い方をしている発信者のパターンだ。

例えば、おしどり夫婦を売りにしている男性タレントを褒めている(つもり)のコメント。

「彼は30年間一度も浮気をせず妻を愛した。意思の強い人だ」

これは逆に、単語だけなら「意志の強い人だ」という褒め言葉になるかもしれないが、一連の流れを読むとまるで「誘惑に耐え忍びながら我慢している」ような、まるで男性に浮気心がある前提で書いているような印象を受ける。

発信者は不必要な誤解をさけるためにも、「投稿する」を押す前にもう一度頭から文章を読み直しておこう。できれば書き上げた翌日に読み返すと、より客観的にチェックすることができる。深夜の情熱で書いたラブレターをそのまま手渡してはならないのと同じだ。

さいごに

言葉の凶器による悲しい事件が後を絶たない。どれだけの血が流れても、SNSでの誹謗中傷が止まることはないし、残念だがこれから先も悲劇は繰り返されるだろう。読むにしても書くにしても、言葉にはもっと慎重に向き合って欲しいと思う。

でも人を変えることはできない。せめて妖怪にならないよう自分を律するしかないが、もし私が「そうなって」しまったら、迷わず頭を撃って引導を渡して欲しい。単語だけ読んで本当に頭を撃ちに来るヤツがこないことを祈りながらここで終わり!閉廷!…以上!皆解散!


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