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小説|パラレルハウス|⑥2つの扉―永美編

4人は入口に入った。。


すると大きく数字の「9」と書かれた扉が2つあった。

浩司「なんだ、これ?どっち行けばいいんだ?!」
明「ホントだ。。。どっちでもいいんじゃね?!」
恵巳「そうかも。さっき黒服の人が途中で分かれても、最後は一緒に出られるみたいなこと言ってなかったっけ?!」
永美「なら、明は私と一緒に入って」
明「え!なんだよ、勝手に決めるなよ」
浩司「それイイじゃん!ふた手に分かれて進んでみようぜ!」
恵巳「なら、私は浩司くんと、ってこと?!」
浩司は嬉しそうに恵巳を見ていた。


浩司「そいじゃ、そういうことで!俺らはこっちの扉にしようか!」
と、浩司は恵巳の手をひっぱり右の扉へ入っていった。。。

明はあっという間の出来事に少し混乱していた。

永美「さ、ボーッと突っ立ってないで、早く行くよ!」
女子の割に力強い永美に手を引っぱられながら、左側の扉に入った。


****

扉を入ると2人は大学のキャンパス内にいた。

永美「あ、ここ学校」
明「おぉ、そうみたいだな」

2人ともなんでここにいるのか、呆気にとられながら立たずんでいた。コロナ以降、ほとんど学校に行くことがなくなっていたので、久しぶりの学校だった。

2人はとりあえず、食堂のあるテラスへ向かうことにした。。
しばらく歩いて、テラスに着いた。ガランとした様子に、慣れない違和感があった。


コロナ以前はいつも学生たちがいっぱいで、座る場所を探すのにも一苦労していたのに、今は学食も閉まっていて、人はほとんど居ない。ソーシャルディスタンスでテーブルの間がかなりあいていて、席数もかなり少なくなっていた。


明「自販機でジュース買ってくる」
永美「わかった。適当に座ってるね」

2人分のジュースを持って、永美の座る場所に明が来た。永美に1つジュースを渡しながら、明も座った。

明「なんか、話したいこと、あるんだろ?」
永美「え?!まぁ、、、ね」

「実は私、学校辞めようと思ってるんだ。。。」

明「は?!なんでまた!」
意外すぎる告白に明は驚いた。

永美「ちょっと別の学校に行きたくて。。埼玉の地元に帰ろうと思ってるんだ。」
明「そうなんだ、、別の学校って、なに?」
永美「実はさ、、、1年前にお姉ちゃんが事故に遭って・・・」

永美には6つ離れた看護師の姉がいた。未婚のまま子供を産んだシングルマザーで、3歳の息子がいた。
当時、彼女は自転車で息子を保育所に預けた帰り、慌てて信号を渡ろうとして、交差点で車と衝突事故を起こしてしまった。幸い命はとりとめたが、下半身不随という大きな後遺障害が残ってしまったのだ。

そんな永美の姉は大好きな看護師の仕事ができなくなってしまったことに大きなショックを受けていた。そのため、事故以来何度も自殺しようとしたり、かなり情緒が安定しなかった。

「仕事したいよぉ」としきりに泣く姉を見ていた永美は、姉になんとか元気になってもらいたかった。そんな時ふと、(私が看護師になって姉の分まで仕事したら、元気になるかも。)と永美は思ったのだ。

姉の事故前までの永美は、大学は適当に行って、卒業したらネイリストとかして楽しく好きなことしようかなぁと気楽に考えていた。そんな永美にとっては姉の事故は大きな転換だった。

永美は明にこの1年の話をした。。。


明「なら、もしかして、、好きな人ができたっていうのは、、、」
永美「うん、嘘。」
「ごめん、ちゃんと話さなくて。私もあの時すごく動揺しててさ。。家族があんな風になるの初めてで。」

永美は大きく伸びをした。

永美「あ〜あ、明は新しい彼女いるみたいだしなぁ〜」
「ホントはチャンスがあれば、ってちょっと考えてたんだけど、まぁ、遠距離も辛いし、ちょうど良かった♪」
明「永美、なんか、、大人になったな。。」


(あれだけ派手なメイクやネイルとかのオシャレが大好きな永美が、そんなオシャレが一切許されない世界に入ろうと思うなんて、、、)
明にとっても、すごく衝撃だった。

明「それで、お姉さんは、今どおなの、、?」
永美「今は車椅子生活に慣れるのに頑張ってる感じかな。それで、”日本は障がい者に対してのシステムが成ってない!”とかなんか文句言ってるから、少しは元気になってきてる感じ(^^)」
明「そっか、なら良かった」

永美「で、明はどおなの?将来やりたいこととか、、、就活はしてるの?」
明「いや〜」
永美「いや〜って何よ。あぁ、そういえば明ってさ、見かけによらず文学少年だったよね?!」
明「文学少年ってなんだよ。その少年っていうのやめろよ」
永美「そうそう、明の書く文章、私すごく好きなんだよね。なんというか、文だけみてたらすっごく素敵な男性を想像しちゃうっていうか♡♡」
明「なんだよ、それ笑」

「あー、でも文章書いたりするのは好きかも。けどあんまりそれを人に見せたいってのはないからなぁ」
永美「なんかイイじゃん!将来は作家志望です。なんてね(´∀')」

2人は昔付き合っていた頃のように、楽しく会話した。

明「何だかんだで話し込んじゃったな」
「そういえば、俺たちパラレルハウスにいたんじゃなかったっけ?」

と、立ち上がって伸びをした瞬間、辺りが真っ暗になった。


*****

気づいたら2人は薄暗い灯りの部屋にいた。
真ん中には小さいテーブルがあり、その上に1枚の紙が置いてあった。


永美「あ、なんか紙があるよ」


2人はテーブルに近づき紙を見た。

「スキナミチヲイキナサイ」

と書いてあった


すると少しだけ上る階段があり、その先に1つの扉があった。

階段には数字が書いてあった。1番下に「12」、1段目には「11」、2段目は「10」、3段目は「9」、、、


(スキナミチか、、、)


階段に書いてある数字に意味があるのか、少し気になったが、あまり深く考えずに明と永美は幼い子供のように手をつなぎながら、一段一段、一緒に数字を言いながら階段を上った。


そして2人は一緒に扉の中に入っていった。


つづく……


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