本物は 圧倒的に 美しく存在する
はじめて「写真」をみて、感動した。はっとして、息を飲み、吸い込まれてしまうような写真。
「MINAMATA」のあの写真だ。
今はいろいろあって 非公開というか、そういうことになっているようだ。
MINAMATAを取材した写真だから、とても大変な人々の暮らしや、工場から垂れ流される写真などが映し出されていくのかと思っていたが、その有名な写真に写るのは、あえていうなら「愛」だった。静かな愛。
モノクロで、静かな母娘の入浴を撮ったものだけれど、そこにあるのは、公害でもたらされたことよりも、母と娘のあったかいものが写っていた。
それは公害に対して戦いを挑むような、賠償を望むような写真ではなく、圧倒的な存在感が、それでもそのようにしますか?と訴えているようだった。しずかに、そして美しく…
ユージンスミスは映画の中で、写真は撮られる方が魂を吸い取られるというが、撮る方も魂を消耗する そんなことを言っていた。確かに彼の人生は、魂を剥き出しにしているようだった。
善悪とか、裁きとか、そういう視点ではなくて、圧倒的な存在美というか、そういうものを叩きつけられた写真だった。