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札束を手に
※この文章は、日本仕事百貨のニュースレターに寄稿したコラムを加筆修正したものです。ニュースレター登録はこちらから。
人生にはいろんなドラマがあります。
先日は出張先のとある大きな駅で、ベンチに座るカップルを発見。いつもならとくに気にしないけれど、どうやら修羅場のよう。女の人が涙を流しながら男性に何かを訴えかけていて、すっと鞄から取り出した手にはなんと札束が…。
なにか揉め事があったのか、別れる直前なのか、はたまた復縁する話なのか。数メートル先で展開されているドラマに、ついつい気を取られていました。
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現実は小説より奇なり、と言ったりしますが、まさにそうだなぁと、インタビューの仕事をしていても思います。どんな人でも、話を聞いていくと「そんなことが!」とびっくりするような出来事が掘り出されてくる。
自分は平凡な人生だからなぁ… なんて話す人でも、深ぼっていくとなにかしら驚くべき出来事が出てきたりするもので。ぼくはそういったことを引き出すのが仕事でもあるし、それがインタビューの面白いところでもあると思っています。
もちろん、決して無理やり引っ張り出そうとするわけではありません。その人が話したいと思う空気や雰囲気をつくることを心がけて、適切なリアクションを続けていくと、不思議なことに自然と出てくるものなんですよね。
そんな振る舞いをどれだけ自然に、そして相手が心地よく感じられるようにできるか。インタビューをする者として、そんなことをいつも考えています。
普通の場だと、人は自分の話をするほうが好きな生き物なので、ついつい聴くことをおろそかにしがちかもしれません。
話すことが好きだ、という人も、ちょっと聴く側にまわってみると、意外とおもしろいことが出てくるかもしれないですよ。
(稲本 琢仙)