37歳。夢が叶う「可能性はゼロ」か?
昔からぼんやりと、「本を出してみたい」と思っていた。
私の知人には2人、著者として書籍を出している人がいる。自費出版ではなく、商業出版として。
※分からない人に説明すると、自費出版は著者自身が制作に必要な費用を自己負担して本を出すこと。商業出版は出版社が「この本は売れそうだ」と見込んだ上で制作費を負担してくれる出版のこと。「本を出す」と聞いたら、大半の人は後者を思い浮かべるだろう。
何年も前から何となく「自分のことを作品として文章で書いてみたい」と思い続けてきて、ようやく1ヶ月ほど前からエッセイを書き始めた。
そして、書いているうちに「作家になりたい」と思うようになった。いや、本当は前からうっすら思っていたと思う。雑誌や広告のライターをしながら、自分のことを書きたいとずっと思っていたのは、趣味としてではかった。
ある時、本の出版について調べていたら、某有名出版社の関連会社のホームページを見つけた。そこは自費出版専門の会社で、「自分の作品が世に出してもいいレベルかどうか知りたいだけでも相談に乗れる」といったことが書かれていた。
相談はタダだし、プロのフィードバックを貰うことは貴重な機会なので、早速自分のエッセイを送ってみた。
今のところ一番反響が大きい「心はカラフル。悲しみの必要性」という作品だ。
翌日にその出版社から電話がかかってきた。
編集者なのか営業なのか分からないが、とにかくその出版社の人、仮にAさんとしよう。
Aさんはこう言った。
「うちの社名(有名出版社)で本を出すからには、会社の信用を損なわない程度の作品のクオリティが必要。そういう意味であなたの作品は本にする価値がある。ちゃんと書けていると思いますよ」と。
この時点で私は自費出版しようと決めていたわけではなく、あくまでそういう選択肢もあるという認識があるだけで、メインは作品が世の中に出していいレベルのものであるかが知りたいという動機だった。
そこで私が「商業出版」という言葉を出した途端にAさんはあからさまに不機嫌になった。まぁ自費出版専門の会社なのだから、自費出版ではない話に否定的なのは、理解はできる。
だが、露骨に不機嫌な態度で「商業出版の可能性はゼロ。実績もないしフォロワーもいないし、企画を通すには売れる見込みがないと通らないから」と冷たく言った。
言っている内容は全くもって正論だし、私も馬鹿ではないため、それくらいは知っている。
私がそれについてまた話そうとすると、Aさんはそれを遮って「私はこれ以上、商業出版についての話をするつもりはありません。商業出版のためにフォロワーを増やすとなると有名になるということになりますよね。有名になりたいのか本を出したいのか、はっきりして」と言った。
まず、最初の問い合わせの段階で、莫大な費用がかかる自費出版をすることに100%の覚悟を決めて連絡してくる人の方が少数派だろう。選択肢の一つとして検討しているだけだ。
確かに実績のない私が商業出版というのは決して容易ではないことは知っているし、出版社もあくまでビジネスであり慈善事業ではないので、売れる見込みがないと企画が通らないというのも当然の話だと思う。
しかし、もう一つ知っていることがある。
それは「世の中には実績がなくSNSのフォロワーも少ない(またはSNSをやっていない)のに商業出版で本を出している人が少なからず存在する」ということだ。
実績とは、例えば賞を取ったとか、実績とは少し違うかもしれないが、フォロワー(そのうちの何割かは本を買ってくれそうな見込み客)が10万人いるとか、そういう「本が売れそう」な分かりやすい指標である。
それらの要素がないにも関わらず、商業出版で著者としてデビューしている人は現実にいるのである。
話が少しズレるが、皆さんは日本人の平均年齢をご存知だろうか。
最新の統計では、日本人の平均年齢は「48.2歳」である。
※国立社会保障・人口問題研究所が発表した「人口統計資料集2024」に基づく
なお、私は現在37歳になったばかり。平均より10歳以上も若いのだ。
そして平均寿命がどんどん伸び「人生100年時代」と言われるようになった現代。さらに、女性である私は男性と比べて長生きする可能性が高い。
仮に80歳までボケずに元気でいられるとしたら、あと43年は書き続けることができる。
43年間もあれば人生経験も積み増していき、さまざまな学びを得て、独自の哲学もより深まることだろう。
話を戻すが、私は自費出版専門の出版社のAさんから「商業出版の可能性はゼロ」と言われた。
そして、「自費出版するとしたら300万くらいかかりますよ。利益?そんなもの出ません」とも。
一体、何が「本にする価値がある作品」なのだろうか。
人の心を動かすものは、お金になる。
なので、やや極論かもしれないが「お金にならない作品には価値がない」と思う。
商業出版の可能性はゼロ、自費出版しても利益にならない。個人的な記念として本という形に残すのが主な自費出版の目的ということ。
中には自費出版からベストセラーになる作品もあるが、これは極めて稀なケースで、例外だと思う。自費出版は商業出版のような「出版社に売れると見込まれて発行する本」ではないからだ。
さて、Aさんが言い放った「商業出版の可能性はゼロ」という言葉。これは恐らく、現時点の私が書いた、Aさんが読んだ作品の話だとは思う。
私の才能や未来の可能性までも否定されたという捉え方はしていない。
私は37歳という、現代日本においては「若い」といえる年齢だ。
先述した通り、あと43年くらいは書き続けることができる可能性が高い。
まだ作品を書き始めて間もないが、ある程度の作品数が溜まったら、企画書を作って出版社に売り込むつもりでいる。
もちろん合いそうなコンテストがあれば参加する。
私には実績もないし、SNSのフォロワーが沢山いるわけでもないし、いわゆる「バズる」記事を書けるタイプでもない。
夢の実現はきっと難航するだろう。
でも、日本には中小も含めれば出版社は山ほどある。大手の出版社ともなると社内だけでも大勢の編集者がいる。
何も全員に認められる必要はない。たった1人の編集者を口説き落とすことができれば、少なくとも企画会議には上げてもらえる。
ただ、会議に上がったからと言って、実際にそれが通るかどうかという難関もある。
しかし、37歳の私があと43年間、「叶うまで諦めない」で活動を続けたとしたら…。
Aさんの「可能性ゼロ」という言葉は、私の一つの作品だけを読んだ上でのものだ。
私のエッセイ歴はたったの1ヶ月。それでよくもこんなに熱く語れるなと我ながら思うが、大人になってから夢を持てることがどれだけ貴重なことか。これを読んでいる皆さんにも、きっと分かるのではないだろうか。
可能性は果たして何%か、それは分からない。
でも夢を叶える確かな方法は一つだけある。それは「叶うまでやめない」ことだ。
Aさん。私の未来においては「可能性がゼロ」だとは、私は全く思いません。
そして、自費出版専門出版社なのに、時間を無駄にさせてごめんなさい。
私の作品を読んでくれて、時間を割いてくれてありがとうございました。
でも、自費出版の費用300万って、車の購入に匹敵する金額です。普通、車を買う時に即決しない客に対して不機嫌になるディーラーはいない。
慎重にならざるを得ない相談者(お客さん候補)をその気にさせるのが仕事なのに、露骨に不機嫌になるのは、さすがにちょっと営業が下手ではありませんか?