マネージメントやるなら、 馬術をやろう!
僕は普段はソフトウェアやアプリケーションの設計や開発に従事しています。これらは1人でも開発できなくはないですが、大きなビジネスともなるとチームで作り上げて日々利用してくれるユーザのために改善や新しい機能の提供に奔走します。
そこで大事になるのは「マネージメント」です。そんなマネージメントの語源はイタリア語の「maneggiare」(馬を手で馴らす)だそうです。この語源についてはマネージャー職の人などはご存知の方もいるみたいですが、その中で実際に馬に乗っている人はどれほどいるでしょう?
実は僕のnoteの数少ない記事を遡るとわかるかもですが、2018年の夏にこんな記事を書いています。
そう、この頃からnoteを書くのは滞っていますが2021年9月現在も乗馬を続けています。
乗馬では1回の騎乗を`1鞍(くら)`と数えます。現在は400弱鞍ほど乗っています。その間に馬場馬術ライセンス3級を取り現在は2級ライセンスを春に取ろうと練習に重ねています。
その経験から語源どおりマネージメントと乗馬には通ずるものがあるし、学びが多いのではないかと思います。
🐴 馬は空気を読んだり、気分で変わる
馬は社交性のある動物で人間の3歳児くらいの知能があるといわれています。人間の言葉も若干理解しているし、人間の表情を読み取ることもできるという研究結果もあります。また人を識別し記憶もします。
以前、レッスンで思った様にできずに凹んでいる僕に申し訳なさそうな表情で見つめてきて「あの、なんか、その、大丈夫っすか?」と鼻を寄せてきたりしました。
また、2年半くらい付き合いのある馬は遠くに僕のことをみつけると近づくまで見てきたりしますし、他の人に曳かれている際もすれ違い様に止まって挨拶をするよるように鼻先をあててきたりもします。
言葉での会話はできないけど、この様に馬は人間のことを理解したり馬同士と同様に人間との社交を意識して行動しているようです。
🐴 馬とのコミュニケーション
よく旅先などで乗馬体験ができたりします。その際に「馬に走れと伝える時はお腹のあたりを足で蹴ってくださいー」とか言われます。
これは馬にその様な合図があれば走るんだよとじっくり時間をかけて教えこまれたからこそできることです。しかしそれで確実に走るかといわれるとそうはいかない時があります。
❶ 指示が不明瞭でわかりにくい
❷ 馬を見ずに自分の要求ばかりを繰り返している
❸ せっかく走る気になっているのに手綱を握りすぎる
❹ 馬上でバタバタして馬の走りを邪魔する
❺ 走っているのに無駄な指示(扶助や合図)を送って馬を信用しない
これを人間社会で置き換えて考えてみると同じ様な経験がある人は多いのではないでしょうか?たとえば目的がわからないことをやれと命令したり、やる気になっているのに後ろから刺したり、話が二転三転して相手の活動に混乱を招いたり、任せればできるのに一から十まで手取り足取りしてみたり…。
馬も同じように独りよがりで進めてもうまくいきません。
🐴 馬場馬術での馬のマネージメント
馬術というとバーを飛び越える障害馬術(ジャンプ)が有名ですが僕がやっている競技は「馬場馬術」です。
馬場馬術(ばばばじゅつ)、ドレッサージュ (Dressage) は馬術競技の一つで、馬を正確かつ美しく運動させることができるかを競うものである。
手綱を握る指先の小さな力と騎乗の姿勢とバランス、脹脛や踵によるほんの小さな合図と扶助で馬に意志を伝えていく競技です。
つまり馬上でバタバタ指示して期待の動きになっても得点は低いですし、逆をいえば小さなことを重ねてい演技ができるのです。
馬術用語に「Harf Halt(ハーフホルト)」という言葉があります。これは日本語で「半減却」と言います(Harf = 半分, Halt = 停止)。
簡単にいうと馬の前進気勢(走りたい)という気持ちとパワーを持たせたままより停止に近い状態(100%の力を出しているけど10%の力でできる運動をしてもらう)で走らせることです。
これよって小さな円を描く運動やその場での足踏みの様な細やかで難しい運動も正確にかつダイナミックにできるようになります。
どうやってHarf Haltに持っていくのか?
それは「馬とのコミュニケーション」の節で書いた通り、馬に明確な指示をだし馬の視点にたって馬の走る気持ちを阻害せずしかし刹那的に馬の意思も汲み取って運動をコントロールをしていくことが重要になります。
馬術をやっていくともう一つ重要な言葉があります。それは「扶助」という言葉です。
扶助(ふじょ)とは。力添えをして助けること。
乗馬・馬術において騎手が馬に合図や命令を伝えるため、また馬の動きを補助し、促すための動作を指す。
馬の運動の中には「輪乗り(わのり)」といって円を描いて運動することがあります。この際に大きな円から小さな円に小さな円から大きな円に円のサイズを変えて運動することがあります。
こういう馬を外に膨らませる時は、人間の重心バランスを少し内側によせて内側の人間の足を軸にして脹脛とくるぶしで馬体を内側から外側に押し出す感じにすると膨らんでいきます。
この様に運動の際中に馬の動き方を見て人間の重心バランスや足を添えることで「次にすることの補助」になります。これが「扶助」です。
相手にやる気を持たせてかつ余計なことはせず自走する状態にもっていったとしても合図がわかりにくかったり必要以上に合図を出しても馬の自走を邪魔して帰って悪い結果につながります。これは人間同士でも同じではないでしょうか?
🧑🤝🧑 人間という生き物をマネージメントする
組織などのマネージメントの定義では時間やコスト・プロジェクトなどの「ヒト・モノ・カネの管理」という側面で語られます。特にヒトのマネージメントについてはなかなか定型のメソッドなどが通用しないことも多々あると思います。
馬術で馬をマネージメントすることによって得た気づきとして、人間も馬も「生き物」なので基本の部分は同じだと思います。
誰にでも当てはまったり、どんな時にでも当てはまるとしたらそれはマネージメントの本質ではないのかもしれないですね。
今回記事に起こしてみて考えを整理してみました。
■ 目的を明確に共有する、必要によって見える化する
■ 刹那的に相手の状況を見て必要なモノ・コトを添える
■ 相手の性質を分析して自走しやすくなる方法をか考える
■ 一方的なコミュニケーションではなく双方向のコミュニケーション
■ やる気を出させるのではなくやる気をためる工夫
エンジニア界隈では「エンジニアは筋肉・筋トレだ」みたいなのをたまに聞きますが、マネージメント界隈では「マネージメントは馬術だ」みたくなるといいかなと。
そんな感じでこれを読んで乗馬に関心をもった稀有なマネージャー職やそれに近い職能の方いればぜひお近くの乗馬クラブに体験乗馬にいくとよいですよ。だいたい一回数千円で1時間弱乗ることができます。「外乗 乗馬」でググると山や海で乗ることもできます。また、乗馬ライセンス4級を取れればそこで駈歩で疾走することもできます。おすすめです。