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ネットフリックスのフィルターを通して見る日本カルチャー

こんにちは。プロデュース部の上島です。今年は年始から減酒にチャレンジしています。目標は減酒率80%で、今日現在の達成率は68.9%です。まだまだですね。
コンテンツ業界を爆進するネットフリックスの謎に包まれた社内カルチャーについて詳しく述べられたことで昨年話題となった「NO RULES」を読みました。

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本書の内容は簡単にまとめると「最強の人材が集まれば企業にルールは不要!!ドン!!!」というお話です。

一瞬で感想が終わってしまったのでもう少し詳しく説明すると、例えばネットフリックスには休暇規定が一切ありません。社員がいつ、どれくらい休もうが自由、一切管理しないというわけです。
大事なのは「最高のメンバーがもたらす最高の結果」、いつ何時間働こうが関係ない。結果がすべて。並の成果には十分な退職金を払う。これがネットフリックスのカルチャーです。めちゃくちゃアメリカンですね。

同じ理由で、経費の決済にもルールがありません。「稟議を回して、上司のハンコをもらって」などと悠長なことをやっていたら最高のチャンスを逃してしまうからです。何十億、何百億の決済であろうと、上司の許可を取る必要はない。それについては具体的にこんなエピソードが紹介されています。

2009年に私はマーケティング・マネージャーとしてネットフリックスに入社した。入社3ヶ月後、私はダイレクトメールを300万通送るキャンペーンを準備していた。(中略)・・・「この100万ドル近い経費の承認プロセスは、どこから始めたらいいですか」。彼(上司)はこう言った。「自分でサインして、FAXしておいて」。冗談抜きで、私はひっくり返りそうになった。

いろいろと疑問が湧いてくると思います。「1年に1日しか働かなくてもいいの?」「経費を悪用する人は現れないだろうか?」「勝手に大きな契約をして会社に損害を与えてしまったら?」。それに関する答えを知りたい人は、ぜひ本書を読んでみてください。さまざまな不測の事態に対応する、なるほどと思わされる独特のカルチャーについて詳しく語られています。

僕が本日語りたいのは「ネットフリックスがいかにすごいか」ということではなく、タイトルにもある通り「ネットフリックスから見た僕たち(日本人)」についてです。ネットフリックスはグローバル展開をしてますので、ネットフリックスカルチャーの導入によって各国でさまざまなコミュニケーショントラブルが起こるのですが、それをものすごく分かりやすく「カルチャーマップ」としてまとめてくれています。よく「日本人はこうだから」と日本カルチャーについて語る人がいますが、詳しく聞くと特にエビデンスはなく単にその人の思い込みだけだったりします。しかし本書の「カルチャーマップ」は間違いなく世界基準を元にした「日本カルチャーの特性」について客観的な分析がなされていると言えますので、ぜひ「日本人」を語る際に参考にしてください。

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こちらのカルチャーマップによると、日本のカルチャーは「もっともハイコンテキストで、もっとも間接的で、もっとも階層主義で、もっとも合意志向で、もっとも対立回避を好み、もっともスケジュールに正確」というキャラクターになってます。僕ら的には「まあ、そうだよな」と納得できますが、アメリカ人から見たらかなり極端なカルチャーに見えるようです。次の図はネットフリックスのカルチャーと比べた日本カルチャーです。

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きれいに真逆ですね。ここまで違いすぎることで日本人にネットフリックスカルチャーをなじませるのに大変苦労した過程が細かく述べられているのですが、世界最高の人材たちが日本人の特殊性に一生懸命悩んでいる様子がとてもかわいらしく思えてしまいます。普通ここまで何もかもが真逆だと「もう一緒にやるのは難しいんじゃないか」と撤退するのが賢明ですが、ネットフリックスは日本をあきらめません。不屈のネットフリックスは日本カルチャーについて次のように分析し、対策を練ります。

ネットフリックスの拠点がある国のなかでも、最も間接的なのが日本の文化だ。日本人は否定的フィードバックをするとき、大量の緩和語を使う傾向がある。(中略)・・・日本語の文法はもっと柔軟だ。主語も動詞も目的語も省くことができる。日本語のこうした特徴は、対立回避の文化に都合のよいものだ。日本人の社員たちはこうした日本流の言い回しを駆使して、英語で話しながらも敢えて責任者の名前を口にしないようにした。・・・だがそうなると、唯一日本人ではない私はしょっちゅう議論を止め、内容を確認しなければいけなくなる。「待って、コンテンツを制作しなかったのは誰?ネットフリックス、それともエージェント?」「待って、その承認をすべきだったのは私?私のミスだったのなら、今後はどうすればいいか教えてほしい」・・・日本の文化において、修正的フィードバックが明確に伝えられることはめったにない。立場が上の者に対しては、まずないと言える。

めちゃくちゃ面白くないですか?普段何気なく使っている日本語ですが、英語圏の人から見ると「主語も動詞も目的語も省いて大事な点を煙に巻く技術に特化している特殊な言語」と見えるようです。しかも、英語がペラペラでもマインドが日本人だとそれが英語にも現れてしまうとのこと。カルチャーマップからわかる通り、とくに日本はネットフリックスに一番馴染みづらいカルチャーなので、苦労の様子がこの他にもみっちりと語られています。ネットフリックスが「曲者」の日本カルチャーにどのように対応したのか。ネットフリックスが編み出した「対日本手法」は僕らから見ても「なるほど」と思わされるもので、日本人同士のマネジメントにも活用できるテクニックでしたので、気になる方はぜひ読んでみてください。
余談ですが、話は日本人以外にも及びます。僕が一番笑ったのはオランダ人とアメリカ人のやり取り。日本人から見たら他の国のカルチャーはすべて「直接的で厳しい」のですが、カルチャーマップにおいてもっとも直接的で厳しいのはオランダ人であり、これにはさすがのアメリカ人もかなわないようです。次の事例は「オランダ人から見たアメリカ人」です。

アメリカ人はフィードックをするときは常に本当に言いたいことを切り出す前に、まず相手のやり方を褒める。アメリカ人は「否定的なことをひとつ言うなら、肯定的なことを3つ言う」。オランダ人はこれに戸惑う。・・・ミーティングが終わると、ドナルド(アメリカ人上司)は(オランダ人の私に)「とてもうまくいったんじゃないかな。どう思う?」と聞いてきた。私はすかさずこう答えた。「スティンネはこの会議に出るためにわざわざノルウェーから足を運んできたのに、あなたがしゃべりすぎたからひと言も口を挟めなかった。ミーティングの80%はあなたが話したために、他の参加者は意見を言えなかった」

オランダ人、辛辣ゥーーー!

私のフィードバックはまだ終わっていなかったのに、ドナルドは打ちひしがれた様子でうめき声をあげた。アメリカ人にありがちなことだが、「最悪だ、すべてをぶち壊しにして本当に申し訳ない」と言う。だが、「すべてをぶち壊しに」などしていない。私はそんなことは言わなかった。ミーティングは成功したし、ただひとつ問題点があり、そこを指摘すればドナルドがさらに成長できると私は思ったのだ。私がアメリカ人に不満を感じるのはここだ。何か褒めるところから始めないと、アメリカ人はこの世の終わりのような反応を見せ、批判の効果を帳消しにしてしまう。

クッソwww オランダ人厳しすぎるやろwww
日本人がそうであるようにもちろんオランダ人が全員こういう性格なわけではないと思いますが、このオランダ人とは友達になれる自信がない。ドナルドの方がまだわかり合えそうです。あとからこんなに厳しいことを直接言うぐらいなら、なぜこのオランダ人はミーティング中に「ちょっと待ってドナルド、さっきからあなたしかしゃべってない。わざわざノルウェーから足を運んだスティンネにも発言の機会を」と言わなかったのか。ドナルドの性格(いいやつそう)からして、ミーティング中にその忠告がはばかられるとは思えない。「ドナルドがさらに成長できると、私は思ったのだキリッ」ってやかましいわw 戦いの最中に成長させてやれwww

このように、魏志倭人伝から読み解く倭人や、ルイス・フロイス「日欧文化比較」から読み解く戦国時代の日本人などが好きな人にとってもたまらない一冊となっておりますので、その点でもおすすめです。

僕が本書で学んだことは「オランダ人と話すときにはメンタルを鉄にしろ」です。オランダに行く予定がある人は是非参考にしてください。

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