フリーライターはビジネス書を読まない(6)
誹謗中傷事件に思う、パソコン通信時代の「炎上」
もう少し、パソコン通信の話。
SNSでの個人攻撃、誹謗中傷が社会問題になっている。
パソコン通信の時代にも個人を誹謗したり、書き込みが炎上することはあった。
当時、投稿をアップする場を掲示板と呼んでいたから、掲示板の書き込みが炎上することを「板が荒れる」といい、わざと荒らすための投稿を繰り返すユーザーを「荒らし」といった。
荒れる原因はさまざまあって、例えば小さな意見の衝突がやがて掲示板全体を巻き込む論争へ発展する。
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反論に窮したほうが、相手を黙らせるために悪口を書き込む。
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書かれたほうは、プライドを守るためだけの悪口を返す。
そうして最初の議論がすっかり忘れ去られて、延々と誹謗中傷合戦が繰り広げられる。
その様相は、今のSNSでも似たようなものだろう。
それともうひとつ、今ではみられなくなった原因もあった。
当時は、文章がヘタという理由で、しばしば荒らしのターゲットにされるユーザーがいた。
「句読点の位置がおかしい」とか「あなたのいう『それ』は、その構文では成立しない」といった、けっこう専門的な指摘が入ったものだ。
もしも当時、今のバイト敬語や若者言葉なんかを使ったら、きっととんでもないことになったに違いない。
全盛期のパソコン通信は、それほど言葉の正確さに厳しい世界でもあった。
そうはいっても、あの当時「文章がヘタ」といって荒らされていたユーザーたちの文章は、今ならむしろ上手い部類に入るのではないかと思える。
言っちゃ悪いが、Twitterに垂れ流されつづける日本語もどきの軽いつぶやきと比べたら、充分に通じる日本語だった。
「荒らし」も「炎上」も、原因は、つまるところ「文字だけのやり取り」で相手の表情や感情が見えないために起こる行き違いだ。何をいっても、とりあえずぶん殴られる心配がないから、つい言葉が荒くなる。
直接会っていても、同じ態度で同じことをいいますか? これを意識するだけで、誹謗中傷や炎上はかなり少なくなるのではないかな。
つづく