フリーライターはビジネス書を読まない(15)
テープ起こしからの原稿書き起こし
東京でのインタビューから3日ほど経って、編プロの社長からカセットテープが送られてきた。
自分で録った音声もあったけれど、インタビュー自体が初めてのこと。もしも不具合で録れてなかったらいけないと心配してくれたのだ。しかも、マイクロカセットから標準サイズのテープにダビングしてくれていた。
話は少し逸れるが、最近はこの社長のように自社の仕事と並行して新人を育てようとする編プロを見かけない。無いことはないと思うが、見かけないということは数は少ないのだろう。
ライターの募集をかける際も「ライター歴○年以上の人」とか「○○の取材を経験したことのある人」みたいに、即戦力を求める傾向が強い。
気持ちはわかる。
新人を育てながら案件を進める体力も、時間的な余裕もない。あるいは、そもそも新人を育てる気がない。できあがっているライターを使うほうが安心だし。
だが、仕事をさせなければ経験者になれない。即戦力ばかり求めて育てることを怠っていると、遠からず人材が払底してしまうだろう。そして「こたつライター」とか「100円ライター」が巷にあふれ、クオリティの高い原稿がつくられなくなる恐れさえあると思っている。
話を戻そう。
まずはインタビューのテープ起こし。
テープに録音された音声を文字に起こしていく作業だ。この名残で、ICレコーダーで録音された音声を起す作業もテープ起こしと呼ばれる。もっとも「テープじゃないし」と考えている私は「文字起こし」といっている。
インタビューは話しことばだから、そのまま文字化しても原稿にならない。言葉には「話しことば」と「書きことば」があって、話しことばをそのまま文字にしても、読みづらいだけ。
書きことばの作法に則って、ビジネス書の体裁に合う文章に直していき、ここぞというポイントをカギ括弧で会話文にすると、文章にメリハリがつく。
それくらいの技法は心得ていた。
だが、実際にやってみると、意外に難しい。同じ話が表現を変えただけで繰り返していたり、内容が前後していたりする。それを時系列に並び替えて、矛盾がないように組み立てていく。
今ならすっかり慣れてしまって難なくできるけれど、当時は頭が混乱してしまって大変だった。
それでも第1回目にインタビューした話から、ひとまず3項目分の原稿を書き上げた。これを編プロへ送って、内容の組み立て方とか文章のタッチについてチェックを受けるのだ。
(つづく)