応募前にしっかり確認 クライアントはライターに何をさせたいのか
「フリーランスライターのブツクサひとり言」第23回
複数のクラウドソーシングに登録して、ときおりライターの募集案件を見ることがあります。
私は基本的に文字単価の案件は引き受けないのですが、自分が書きたいテーマだったり手持ちの話題を世に出したりしたいときは、稀に応募することがあります。
あるとき1件の募集案件が目に留まりました。
地元のカフェをルポするという、簡単な店舗取材です。全国規模で募集していて、各都道府県に2~3人が定員だと書いてありました。カフェめぐりが好きだし、すぐに定員を満たしてしまうだろうと思ったので、趣味と実益を兼ねて応募しました。
すぐ折り返しメールが来て、メディアの運営者とリモートで面談。業務内容の詳しい説明も聞きました。
今思えば、ここで小さな違和感に気づくべきでした。
報酬の話になったとき、メディアの運営者からは「掲載された初月に6000円。以降、掲載され続ける限り月2000円が発生します」とのこと。
私はそれを「報酬」として質問したので、メディア運営者の説明を「原稿料」のことと解釈したわけです。
「では正式に契約書を交わしましょう」
話がまとまって、メディア運営者の署名捺印が入った契約書が送られてきました。
あらためて契約内容を読み返してみると、ライターの原稿料には一言も触れられていません。では、あの「初月に6000円云々」は何だったのか。それは取材先の店舗へ請求する、掲載料だったのです。
取材先の選定とアポ取りもライターがやるというので、それは事実上、ライターが記事広告の営業をやることではないのか?
その疑問をメディア運営者に問いただすと「広告営業もやっていただきます」と認めました。ならば、もうひとつ気になる「原稿料」は、結局いくらなのか?
「謝礼程度はお支払いできます」
具体的な金額をいわないし「支払う」ではなく「お支払いできます」という言い回しが、ますます不信感を募らせます。
この案件は結局、私から「業務内容の理解に錯誤がある」として契約には至りませんでした。
「初月に6000円」の説明の仕方が原稿料であると誤解させるような言い回しだったことも、リモート面談を録音した音源データを添えて指摘しておきました。
さて、この案件はその後、メディア運営者の意図する通りに成立したのでしょうか。
募集要項の欄に一旦は「定員になりました」と表示されていたものの、すぐにまた募集を再開していました。
私のように「聞いた説明と契約書の内容が違う」と、契約を辞退するライターが相次いだのかどうか、真相を知る術はありません。一方で、営業をやりながらでも記事を書きたいライターもいたでしょう。本人が納得しているなら、それでいいと思います。
私としては、カフェめぐりはやってみたかったけれど、仕事ならば当然に条件次第です。広告営業までやらされて、原稿料の数字が明らかにされないのは論外です。
この件はいい教訓になりました。
ライターが「なにを」「どこまで」やるのか。「同じ業界にいるのだから、あらためていわなくても暗黙の了解だよね」と慣例に流されず、契約前に完全に理解しておくことです。