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フリーライターはビジネス書を読まない(27)
「避難所から出て行ってくれ」の真相がわかった
公民館なのに、なぜ避難所として使ってはいけないのか。なぜ追い出されないといけないのか。
避難してきた人たちと管理人との間で、トラブルになっている現場までやってきた。
当時、自分で書いた記事から抜粋する。
――
「ふだんは自治会の集会や冠婚葬祭の式場に使っているし、公共の建物だから、当然ここを使う権利があるはずだ」と、避難者は主張。だがこの建物は、自治会のものでも公共の建物でもないことが、このときになって判明した。
江戸時代の末期、○○町一帯が「六甲村」と呼ばれていた頃、今の○○会館と同じ場所にやはり集会所のようなものがあって「○○財産区管理会」が、その土地と建物を共同で管理していた。それが現在まで残っており、○○氏(管理人)はその会長である。
自治会は管理会に使用料を払って、会館を利用させてもらっているだけだった。
しかし事態は深刻である。「出て行け」といわれて「はいそうですか」と出て行けるなら、初めからやって来ないだろう。それでも○○氏との無用な争いを嫌って、まだ倒壊の危険性のある自宅へ戻った人が10日間で65人もいたという。残った避難者たちは3人の世話人を立て、○○氏との交渉にあたった。
その中の1人、I氏(68)が自治会と交渉を試みた結果、○○町にある22の自治会を統括する自治会連合会長の合意を得ることができ、○○会館を避難所として使えることになった。だが○○氏は「あの建物は財産区管理会のものだから、自治会長とIさんが何を話し合っても関係ない」。
○○氏の言い分は、あくまで「無許可で居すわられて迷惑だ」ということらしいが、「事態がやむをえないことだけは理解している」という。
(中略)
I氏とともに世話人を引き受けているE氏(26)はいう。「人間として、もう少し優しさがあってもいいのではないか」
○○氏は今後の展望について「いずれ、役所がなんとかしてくれるんじゃないですか?」と楽観しているが、灘区役所では「公共の建物ではないし、私人どうしのモメごとに行政は介入できない」と原則を語るのみだった。
――(SAPIO 1995.4.13号/一部伏字)
じつは財産区管理会には建て替え工事をしたときの借金があって、使用料収入が入ってこないと返済が滞ってしまうという事情があった。
管理人が意地悪をいって追い出そうとしているのではないこと、管理人にも事情があることは分かった。
記事に登場するI氏が不在だったので、取材対応をしてくれたのはE氏だ。若いけれどしっかりした人物で、世話人の1人に選ばれるだけのことはあると思った。
インタビューをしている間、会館の中がなんだか賑やかだった。
「何かやってるんですか?」
「人形劇の団体が慰問に来てくれてるんです」
といってるうちに、終わったらしい。
手に手に人形をもった団体が出てきて、撤収作業を始めた。
私のインタビューもおおかた済んだので、
「どうも、ありがとうございました」
お礼をいって、次の現場へ向かうべく荷物をまとめていると、
「あれ?」
慌ててあたりを見回すが、見当たらない。
「どうしました?」
I氏が心配そうに声をかけてくれる。
「カメラ。ここに置いてあったカメラがない」
「あ、もしかして……」
そう、さっきの人形劇団が、自分たちの荷物と間違えて一緒にもっていってしまったのだ。
「大丈夫です。次の行き先、分かってます。○○小学校です」
I氏の言葉に救われた。I氏にその小学校までの道順を聞き、私は公民館をあとにした。
(つづく)
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