小児喘息で大変だった日々を振り返って
僕が子どもの頃、苦労したのが「小児喘息」です。発作が起きると息苦しくて何もできなくなり、夜眠れない日々も多くありました。学校生活も思うようにいかず、運動や外遊びにも制限がかかる毎日。
でも、その中で喘息と向き合い、家族や周りのサポートに支えられながら乗り越えてきました。この記事では、僕の小児喘息の体験を元に、どんな症状や生活の制限があったのか、そしてどのように乗り越えてきたのかを詳しくお話しします。同じように喘息で悩んでいる方やその家族に、少しでも役立つ情報や希望をお届けできれば嬉しいです。
小児喘息とは?
まず、小児喘息について簡単に説明します。小児喘息は、子どもの頃に多く見られる慢性的な気道の炎症です。敏感になった気道が、アレルギー物質や刺激によって炎症を起こし、以下のような症状を引き起こします。
• 咳:特に夜や早朝、運動の後に出やすい乾いた咳。
• 喘鳴(ぜんめい):ヒューヒュー、ゼーゼーという音を伴う呼吸音。
• 息苦しさ:胸が締め付けられるような感覚で、呼吸が困難になる。
僕の場合、発作は夜中に起こることが多く、眠れずに苦しい時間を過ごすことがしばしばありました。横になるとさらに呼吸がしづらくなるので、布団の上で背中を丸めて過ごすしかありませんでした。その時の孤独感や不安は、今でも記憶に鮮明に残っています。
小児喘息の原因と発作のきっかけ
小児喘息の原因には、大きく分けて遺伝的な要因と環境的な要因があります。
遺伝的な要因
家族に喘息やアレルギー体質の人がいる場合、小児喘息を発症しやすいと言われています。僕の家族もアレルギー体質の人が多く、幼少期からアレルギー性鼻炎を持っていました。その延長線上で喘息が発症したのだと思います。
環境的な要因
僕の場合、次のような要因が発作のきっかけになることが多かったです。
• ハウスダストやダニ
• 季節の変わり目(春と秋の寒暖差)
• 運動後の疲労
• 風邪などの体調不良
• 精神的なストレス
• 粉塵が舞う場所(砂場や工事現場の近く)
特に砂場や土埃が舞う場所は避けるようにしていました。学校の校庭でも、風が吹いている日はできるだけ砂埃の少ない場所を選ぶようにしていたことを覚えています。
休み時間に運動できない辛さ
子どもにとって、学校生活の中で一番楽しみな時間の一つが「休み時間」ですよね。でも、僕にとってはこの時間が苦痛に感じることがありました。友達が校庭で元気に走り回って遊んでいる中、僕は教室で静かに過ごさなければならないことが多かったからです。
運動をすると発作が起きる可能性が高い僕にとって、外で遊ぶのはリスクが大きすぎました。特に鬼ごっこやサッカーのような激しい運動は、ほぼ参加することができませんでした。そんな僕に「一緒に遊ぼうよ」と声をかけてくれる友達の優しさが嬉しい反面、「また断らなきゃいけない」という気持ちが、少し孤独に感じることもありました。
体力が人より少ないという劣等感
喘息があると、体力的なハンデを感じる場面が多々あります。体育の授業での持久走やマラソンはもちろん、普段の遊びや運動でも他の子と比べて息切れしやすい自分に、正直劣等感を抱いていました。
例えば、運動会ではほとんどの種目を見学していましたし、参加したとしても途中で息苦しくなり、すぐに頓服薬を飲む必要がありました。これが続くと「なんで自分だけこんなに弱いんだろう」と落ち込むこともありました。
でも、家族や先生たちが「無理せずできる範囲で頑張ればいいんだよ」と励ましてくれたことで、少しずつ「自分なりのペースでやればいい」と思えるようになりました。
発作が起きた夜の記憶
夜中に発作が起きる時の恐怖と孤独感は、今でも忘れられません。あれはまだ幼かった僕にとって、最も辛い時間でした。布団の中で突然息苦しさを感じ、目が覚める。胸が押しつぶされるような感覚で、息を吸おうとしても浅い呼吸しかできない。そのうえ、喉の奥から「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音が鳴り響き、自分の体が制御不能に思える瞬間が続きます。
横になっているとさらに呼吸が苦しくなるので、起き上がって背中を丸めた姿勢で過ごすしかありませんでした。でもその姿勢でも呼吸が楽になるわけではなく、苦しさが続きます。真夜中の暗闇の中で、ただ苦しい時間をやり過ごすしかない。部屋の中は静まり返っているのに、僕の耳には自分の喘鳴が大きく響き、余計に怖く感じたことを覚えています。
そんな時、家族がすぐに気づいて駆けつけてくれることが唯一の救いでした。特に母は、どんなに深夜でもすぐに起きてくれました。冷静に頓服薬を手渡し、「大丈夫だからね」と優しく背中をさすってくれる。その手の温もりがどれだけ心強かったか。薬を飲んでから効き始めるまでの30分ほどは、僕にとって永遠に思えるほど長い時間でした。でも、母が隣にいてくれることで、不安が少しずつ和らいだのを覚えています。
呼吸が少しずつ楽になると、やっと横になって眠ることができましたが、完全に安心することはできませんでした。「また次もこんな夜が来るかもしれない」という思いが常に心の中にあり、毎晩眠るのが怖くなることもありました。
特に恐怖を感じた夜の出来事
一度だけ、夜中に発作があまりにひどくなり、救急車を呼ぶことになったことがあります。あの日の記憶は、今でも鮮明に覚えています。薬を飲んでも症状が治まらず、呼吸がどんどん苦しくなっていく。胸が締め付けられ、息ができない恐怖で泣きたくなる気持ちを必死で抑えました。
子どもにとっての夜中の不安
夜は、子どもにとって特に不安を感じやすい時間です。昼間は周りに家族や友達がいて気が紛れますが、夜は一人で暗闇と向き合う時間。喘息の発作はそんな夜に起きることが多く、その恐怖感は言葉では表現しきれないほどでした。
発作が起きると、「このまま息が止まったらどうしよう」という考えが頭をよぎります。幼い僕にはその恐怖をうまく表現する言葉もなく、ただ泣きそうな気持ちで耐えるしかありませんでした。だからこそ、家族がそばにいてくれることが何よりも心強かったです。
今振り返って思うこと
今となっては、夜中に母が起きて背中をさすってくれたり、薬を準備してくれたりしたことが、どれだけ大変なことだったかを実感します。きっと母も眠りたい夜があったはずです。それでも僕を第一に考えて支えてくれた家族の愛情が、どれほど大きな力になったか分かりません。
あの頃の体験は決して楽なものではありませんでしたが、それでも僕を支えてくれた人たちのおかげで乗り越えることができました。そして同時に、夜中に発作が起きる子どもやその親御さんの辛さを、今でも深く理解しているつもりです。
もし夜中にお子さんが発作を起こして苦しんでいるなら、すぐに病院に連れて行ってください。発作が軽そうに見えても、夜中の喘息は命に関わることがあります。小さな命を守るために、どうか一歩早く行動してください。そして、その辛さを誰かと共有することを恐れないでください。あなたもまた、サポートが必要なのですから。
お子さんが発作を起こしていると感じたら
小児喘息は、症状が軽く見えても命に関わることがあります。特に夜中に急に息苦しさや咳が止まらなくなった場合は、迷わず病院を受診してください。僕自身、幼い頃に何度か夜中の救急病院に駆け込んだことがあります。早めの対応が何より大切です。
また、普段から定期的に医師に診てもらい、予防薬や頓服薬を適切に管理しておくことが大切です。
日常生活での工夫と対策
喘息との付き合いには、日々の工夫や対策が欠かせません。僕が実践していた具体的な方法をいくつか紹介します。
1. 薬を常に持ち歩く
頓服薬は命綱です。どこに行く時でも必ず携帯していました。外出先で発作が起きるかもしれないという不安が少し和らぎます。
2. アレルゲン対策を徹底する
家では空気清浄機を使ったり、寝具をこまめに洗濯するなど、アレルゲンの除去に努めました。また、砂場や工事現場の近くのように粉塵が舞う場所は避けていました。
3. 運動は無理をしない
体育の授業や運動会では、参加する種目を選んで無理をしないようにしていました。また、運動前に頓服薬を飲むことで発作を予防していました。
中学生まで続いた喘息
僕の喘息は中学生まで続きましたが、少しずつ症状が改善していきました。高校生になる頃には発作の頻度も減り、大学生になる頃には喘息の存在を意識することも少なくなりました。
小児喘息を経験して感じたこと
小児喘息は確かに辛い病気ですが、その経験から学んだこともたくさんあります。自分の体を大切にすること、そして周りの人のサポートのありがたさを実感しました。
もしこの記事を読んでいる方の中に、小児喘息で悩んでいる方や、その家族の方がいるなら、「喘息は必ず乗り越えられる」ということをお伝えしたいです。
僕自身、喘息があった頃は「なんで自分だけがこんな目に遭うんだろう」と思うことがたくさんありました。でも、振り返ると、その経験があったからこそ、健康のありがたさを心から感じることができます。そして、何よりも支えてくれた家族や友人、先生たちの存在が、自分にとってどれほど大きかったかを改めて実感しています。
親御さんへのメッセージ
小児喘息を持つお子さんを育てている親御さんにとって、毎日の生活は不安の連続だと思います。特に夜中に発作が起きた時や、外出先で突然症状が現れた時など、どう対処すればいいのか戸惑う場面も多いのではないでしょうか。
でも、お子さんは確実に成長しています。喘息の症状は、適切な治療や予防を続けていれば、少しずつ改善していくことが多いです。中には大人になっても喘息が残る方もいますが、それでも生活の中でうまくコントロールできるようになります。
また、周囲のサポートを得ることも重要です。学校の先生や保育園・幼稚園の職員に、お子さんの症状や対処法をしっかり伝えておくことで、安心して学校生活を送れる環境を作ることができます。僕の親も、学校の先生と頻繁に連絡を取り合い、僕が無理をせず過ごせるように配慮してくれていました。
小児喘息を持つお子さんがいる家庭へのアドバイス
最後に、僕自身の経験を踏まえた、小児喘息と向き合う上でのアドバイスをいくつかお伝えします。
1. 医師との連携を大切にする
定期的に病院で診察を受け、お子さんの症状に合った薬を処方してもらいましょう。予防薬や頓服薬の適切な使い方を学び、症状が悪化しないように日常的にケアすることが重要です。
2. 発作が起きた時の対応を学ぶ
発作が起きた時に焦らず対応できるよう、医師から具体的なアドバイスをもらっておきましょう。また、お子さんにも「発作が起きた時はどうすればいいのか」を丁寧に教えてあげると安心です。
3. アレルゲンを減らす工夫をする
お家の中ではハウスダストやダニを減らすために掃除をこまめに行い、空気清浄機を活用するのもおすすめです。また、ペットを飼っている場合は、その毛やフケが発作の原因になることもあるので注意が必要です。
4. 無理をさせない
運動や遊びの中でお子さんが「苦しい」と感じた時は、無理をさせないようにしましょう。周りの子と同じようにできないことがあっても、それを責めたりするのではなく、寄り添ってあげることが大切です。
最後に
僕の小児喘息の体験は、決して楽なものではありませんでした。でも、その経験を通じて得たものは多く、今の自分を作ってくれた大切な一部だと思っています。
もし、この記事を読んでいる方の中に、小児喘息で悩んでいるお子さんやその親御さんがいるなら、一番伝えたいことは「焦らずに続けていけば、少しずつ必ず良くなる」ということです。
喘息は一朝一夕で治るものではありません。でも、正しい治療とケアを続けることで、必ず改善していきます。僕もあの頃の苦しい日々を乗り越え、今では健康に過ごすことができています。
お子さんが喘息を乗り越え、笑顔で元気に過ごせる日が来ることを心から願っています。そして、その日が来るまで、周囲のサポートを得ながら少しずつ歩んでいってください。
この記事が、少しでも多くの方の助けや励ましになれば幸いです。
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