noteの小説投稿サイトについて考えてみる
noteがスピンオフ的な物語投稿サイトを作るらしい。
まだ詳細が明かされていない段階で語るのは、一方的すぎるかもしれない。しかし、新たなプラットフォームが登場するなら、これまでの小説投稿サイトの課題をどう解決できるのか、ユーザー目線で期待を語ることも無駄ではないはずだ。
noteが小説投稿に本格参入するとしたら、どのような形になるのか、そしてどんな機能があると嬉しいのか——そんな話を、現状のnoteの特徴を踏まえた上でしていきたいと思う。
(もちろん、実際に蓋を開けたらnoteと作りが全く違うサイトだった……なんてことも全然起こりうるというかそっちの方が可能性としてはありうるだろう。この記事はあくまでnoteの特徴を引き継いだ小説投稿サイトが立ち上がったらこんなことが起こるかもという、妄想、絵空事だと思って読んでほしい)
①現状のnoteはGoogle検索に強い
noteはすでに文章系のプラットフォームとして一定の実績があり、特にSEOに極めて強いという特徴を持っている。これは他の様々なジャンルで、複数のアカウントを使って活動している筆者の経験即でしかないのだが、この肌感覚に関しては自信を持っている。
noteは本当にSEOに強くて、何かを深く論ずることに徹して、一つの記事に内容をきちんと詰めればGoogle検索のトップに簡単に躍り出てしまう。それがnoteというプラットフォームの特徴だ。
実際、現状の小説家になろうやカクヨムなどの小説投稿サイトは内部検索が中心であり、Googleで特定のワードを入れてもヒットしづらく、ヒットするとしても記事コンテンツとしての最適化がしやすいエッセイなどの割合が多くなりがち(特にカクヨムのエッセイは検索妨害だと感じるレベルでやたらとヒットする)で、外部流入の期待が薄い。
しかし、もしnoteの小説投稿サイトがSEOを意識した設計になれば、検索からの読者流入が期待できるプラットフォームとして差別化できる可能性がある。特に小説家になろうのテンプレや人気フォーマットに乗らない作風・文体や、一般向けの小説を書きたい人にとっては、作品を広める手段として大きなメリットになるだろう。noteの小説投稿サイトがSEOに最適化され、作品単体で検索に強い設計になれば、「ランキング頼りではなく検索流入で読まれる小説投稿サイト」という新しい形になれるかもしれない。
ただし、このnoteのSEOが小説投稿サイトとしてそのまま適用されるかは未知数だ。確かに今のnoteは「記事コンテンツとしての最適化」が強みであって、しっかりした内容を詰め込めば検索上位に出やすいのは事実だ。
しかし、小説とは論ずることではなくストーリーが主体であり、検索ワードに最適化しづらい。
例えば「ミステリー 小説 面白い」でGoogle検索したときに、noteの小説投稿サイトが「これが面白い!」と紹介してくれる仕組みが構築できるのかというと難しいだろう。(おそらく面白いミステリー小説を紹介する記事がヒットするはずだ)
そもそもユーザーが投稿した小説そのものが検索結果に出る仕組みが作れるかというのも怪しい。記事と違ってストーリー重視の小説がどうSEOに適用されるのか? noteのSEOが強いことは確かだが、小説のSEO適用に関しては未知数な部分が多い。
②現状のnoteにはランキングがない
昨今のインターネットプラットフォーム衰退の最大要因であると感じる「特定ユーザー、コンテンツへの一極集中」。
しかし、noteはその一極集中の原因となってしまう超危険概念であるランキングというものが最初から存在していない。
小説投稿サイトにおいても、ランキングは確かに読者の流入を促す強力な仕組みだが、同時に弊害が極めて大きいと言われることが多い。
ランキングがあることで、特定のジャンルやユーザーに人気が一極集中してしまい顔ぶれが同じになる。そしてそれを模倣したコンテンツばかりが上位を占めて、プラットフォーム内での多様性を失って、新しい視点や実験的な作品、ユーザーが埋もれがちになって、「人気ユーザー、コンテンツを真似した同じような見た目のユーザー、コンテンツが同じことを長期にわたって無限に繰り返す」構図になりやすく。コンテンツピラミッドの多種多様な中間層が上がってこなくなり、次第に全体が衰退していく流れになりやすい。
実際「小説家になろう」では、ランキングを意識し人気作品を真似したテンプレ作品や特定のフォーマットに寄せた書き方ばかりが求められ、それ以外の作風の作品が目に触れる機会は限られてしまった。結果として、新しいユーザー層の流入や新ジャンルの打ち上げが極めて困難になってしまっている。
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Twitchなどの配信サイトなどもランキングがないのに、現状相当問題を抱えているように感じる。
ビジネスに傾倒して、少数の人気ユーザーにばかりに注目が行くサイトデザインは、
新しい中間層の発信者が出てこなくなるし、次第に流行が回らなくなる。
「人気のいつメン」は極めて危険なのである。
それでも即座に崩壊しないのは、ゲームという外部からの一次創作が供給され続ける限り、
配信者は新しいコンテンツを発信し続けられるためだ。
この構造は、二次創作の同人誌が廃れないのと似ている。
最近はその構造が逆転しつつ「配信者に選ばれるゲームが流行る」という状況になりつつ
ある。二次創作者が一次創作の運命を決めるという、本来の関係性とは逆の状態であり
これはまた別種の多様性の喪失に繋がるのかもしれない。
一方でnoteにはランキングがない。少なくとも既存のnoteのシステムを見る限り、アルゴリズムやSEOによる流入がメインであり、ランキングが存在していないので比較すると作品の画一化は起こりにくい。
もしもnoteの小説投稿サイトもこの方向性を維持するなら、ランキングに依存せず、現状の小説投稿サイトと比較すると「面白いものが評価される」「検索やシェアで広まる」という仕組みを作ることができるかもしれない。
しかし、ランキングがないことで読者がどの作品を読めばいいのか分からない問題も発生する可能性がある。ランキングがないということは即ち発掘の難易度が上がるわけで、SEOや外部シェアに頼る仕組みになると、一部の強い作品だけが可視化され、その他が埋もれるという別の問題が出てくる。
具体的には、以下の問題が発生する。
③ noteは「数を出せば勝ち」「バズれば勝ち」になりやすい
これはnoteの強みであり、同時に大きな課題でもある。
noteは更新頻度が高くてフォロワー獲得に特化している投稿者と、内容関係なしに派手にバズった記事が極端に有利になりやすい。これはnoteのアルゴリズムや流入経路に起因している。noteのおすすめや検索結果は、
「話題性」
「更新頻度」
「SNSでの拡散力」
の三つに大きく依存しており、じっくり作り込んだ記事よりも、短くて薄い作品や、炎上したり、タイトルで悪目立ちする作品が伸びやすいのだ。
これがもしもnoteの運営する小説投稿サイトにそのまま適用された場合、
短編やエピソード単位の投稿が有利になり、長編小説が読まれにくくなる
テーマに一貫性のある。しっかり構想を練った作品よりも、場当たり的な勢いで書いたものが評価されやすくなる
「シリーズもの」よりも「一発ネタの読み切り」が強くなる
過激なタイトル・炎上狙いの作品がバズりやすくなる
という問題が発生する可能性が高い。
実際、既存のnoteでも
「自分を売るのだけは得意で、SNSやnoteのフォロワーが多いため話題性ばかりあるが、中身が伴っていない
筆者のような薄っぺらい厚顔無恥な人間が自信満々に発信するクソ考察」「攻撃的で極端な主張をするが故に、SNSで目立って大炎上してPVが爆増しているのでスキがついている記事」
「ユーザー単位で外部サイトを中心に、ただ目立って金を稼ぐことを目的とした、デイリーで発信される。中身は薄っぺらい微妙な記事(なんちゃって情報商材)」
ばかりが拡散されやすく、これらと比較するとストック型のコンテンツ(長く読み継がれるもの)が埋もれやすい。
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いざ発信者のnoteアカウントをクリックしてみたら
何十本単位の記事連投して、金を要求してくるようなパターンが非常に多い。
こういうやり口は、情報商材みたいな詐欺まがいのものとは違うにしても、
「タダで釣っておいて金を取る」感じがして不愉快極まりない。
同じようなスタイルでPRの表示なしに小説をSNSで紹介されたら、
他の小説投稿サイトと比較しても、プラットフォームに対する不快感は強まるだろう
小説投稿サイトとしてのnoteがこの「バズ前提・投稿量前提」の仕組みをそのまま持ち込んでしまうと、ランキングとは別の方向で偏った作品ばかりが目立つサイトになってしまう可能性がある。
しかし、「映え」と「バズ」ばかりが重視される風潮は絶対にNGだ。
まず間違いなく長持ちしない。音楽業界もそのせいで歴史に残るレベルの新しい大ヒットが目に見えて減ったし。youtubeも最近目立つサムネ、ショートコンテンツ、バズ重視の薄っぺらいコンテンツが問題視されて、アルゴリズムが変更され始めてきている。
では、どうすればいいのか?
読了率や滞在時間を評価基準に入れる(最後まで読まれた作品を優遇)
更新頻度だけでなく「総合的な評価」を指標にする
短期間のバズだけでなく「長期間読まれ続ける作品」を発掘する仕組みを作る
これらの対策がなければ、「当たり障りのない内容で数ばかり出して目立つことでフォロワーを獲得する」「過激なタイトルやフォロワー獲得に特化してとにかくバズを狙う」という戦略だけが正解になり、時間をかけてじっくり読ませるタイプの小説は評価されにくくなるのではないだろうか?
バズる作品が強いのは確かだが、それが小説投稿サイトの最適解ではないし。そういった作品群は既存の小説投稿プラットフォームで既にレッドオーシャンと化している。この問題をどう処理するかで、noteの小説投稿サイトとしての未来が大きく変わりそうではある。
④シンプルに低品質なコンテンツが目につかない仕組みも必要
小説投稿サイトとして運営するなら、上記のバズ目的とは別に、文章としてシンプルに低品質なコンテンツが目立たない仕組みをどう設計するかも非常に重要になる。
現在のnoteでは、スパムと判断された記事に対して、検索エンジンにインデックスされないよう「noindex」タグを付与する措置が取られている。これはSEO的な対策としては一定の効果があるものの、プラットフォーム内でシンプルに中身の薄いコンテンツに対してどう対処するのかという点については、まだ明確な仕組みがあるとは言い難い。
既存の小説投稿サイトでも、新規参入しやすいが故に「ゴミのような作品が大量発生している」問題が深刻だろう。文字数が少ないまま未完になっているような低品質なコンテンツがユーザーの消費を圧迫してしまっているし。内部検索の妨害をしてくる。今後、AIによってそういった粗製乱造が加速していくことも懸念されている。
では、どのような仕組みが必要になるのだろうか?
運営者がAIによるコンテンツ品質評価を行う → 低品質・スパム投稿を機械的に除外する
読者のエンゲージメントを指標にする → 「読了率」や「滞在時間」を重視し、ただPVやスキが多いだけの作品が評価されないようにする
適切なレコメンド機能を提供する → 「類似作品を読む」だけではなく、「一定期間読まれ続けている作品」が可視化される仕組み
スパム的な大量投稿に対するペナルティ → 内容が薄い作品の乱発を防ぐため、一つのアカウントで投稿ペースに一定の制限を設ける
このような仕組みが整備されれば、ランキングがないnoteの小説投稿サイトでも、「じっくり読まれるべき作品」が正当に評価される環境が作れるかもしれない。最も現在のnoteでは、プラットフォーム内で低品質コンテンツを抑制する明確な仕組みがどこまで機能しているのか不明な点も多い。
小説投稿サイトとして正式に稼働するなら、この部分の設計が非常に重要になるだろう。
⑤収益化の仕組みはどうなるのか? 金稼ぎ目的でプラットフォームがぶっ壊れるのは、もう「うんざり」
noteは既存の文章コンテンツに対して「投げ銭」「有料記事」といった収益化の仕組みを提供している。これは他の小説投稿サイトにはない大きな強みだが、小説投稿サイトとして運営する場合、これがどう適用されるのかが重要になってくる。
投げ銭がメインになるのか?(→結局注目度やフォロワー数ばかりがものを言う世界になる可能性)
一部のお話を有料で販売できるのか?(→この部分だけでは全て無料である他の小説投稿プラットフォームに負けてしまう)
サブスク型のシステムが導入されるのか?(→ 「月額課金で特定の作品が読める」モデルになる可能性)
例えば「小説家になろう」では書籍化による収益化。「カクヨム」ではPVでのインセンティブが存在している。
しかし、noteの収益モデルがそのまま適用されるなら、「個人が直接収益を得られる」仕組みが組み込まれる可能性がある。
……もしこれがうまく機能すれば、「個人で稼げる小説投稿サイト」として新たな市場を開拓できるかもしれない。
しかし、正直収益化という概念自体に対して、
筆者はあまりいいイメージがない。
これは完全に個人のお気持ちでしかないのだが、運営会社が収益を得られたとしてもクリエイターがあまりお金が稼げないような。少なくともそれだけで生活ができてしまうようなサイトにはしないでほしい。
もちろん収益化の流れ自体は避けられないだろう。そもnoteは立派な株式会社だし、現代のインターネットは金稼ぎができるからこそプラットフォームに人が集まるのだ。しかし、筆者個人としては、新規参入が容易な環境下での収益化はインターネットにおけるあらゆるジャンルの創作の面白さを根こそぎ奪う要因になり得ると思っている。
どんな場所でも金儲けという概念が前提になってしまうと――
「どうすれば面白くなるか?」より「どうすれば稼げるか? 目立てるか?」ばかりが優先されて、純粋な創作熱意のあるコンテンツが埋もれる
新規参入が容易なので、話題性や炎上狙いのコンテンツが瞬く間に増える
PV至上主義になり、質の高い。消費に時間がかかるタイプの面白い作品が伸びにくくなる
――という流れが絶対的に避けられないからだ。
身も蓋もないことを言ってしまうと金儲けを主目的として行われるインターネットの創作行為は、純度が下がっていくというか、当たり障りがないというか、どうしても安直で無難で無個性で、つまらない方向に偏っていきがちだ。
そして大金を稼げるのなら、転売ヤーのように、必ず手段を選ばず金儲けに走って環境そのものをぶっ壊す人間が一定数出てくる。
そういう人間はSEOを含めた評価システムにハックして、ありとあらゆる方法で目立とうとするし。そういった金稼ぎを第一目的としているユーザーが発信するコンテンツには、熱意や信念なんてものはない。
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「発信者にとって創作こそが第一目的であり、その結果としてお金がゲットできた」あたりが、
インターネットの面白さを担保できる限界点なのだろう。
そのラインを超えて「お金を目的として創作する」方向に偏れば偏るほど
新規参入が容易なインターネットにおける、
ありとあらゆる創作活動の場が瞬く間に瓦解していくし
つまらなくなっていく。
小説投稿サイトとして、noteが「金稼ぎありき」にならないことを切に願う。集客という観点で、完全に収益化から逃れることは絶対に不可能(ユーザーを集めるための餌として収益化は必要)であることは理解しているが、お金を稼ぐためではなく、創作の楽しさや純粋な面白さを重視する場であってほしい。
収益化の仕組みがどのように設計されるかは、noteの小説投稿サイトの方向性を決める大きな要素になりそうだ。
⑥noteは「現実のネームバリュー」で無双する輩が出やすい
noteは他の小説投稿サイトやブログプラットフォームなどと比べたら(そも小説投稿サイトと比較すること自体がナンセンスな節はあるが)何を言ったかではなく、誰が言ったかが重視されやすい仕組みになっている。今のTwitter(X)と似ている。noteはフォロワーの数が可視化され、その影響が強すぎるため、流石に現状の小説投稿サイトと比較した場合、コンテンツそのものの評価よりも、発信者の知名度がそのまま評価に直結しやすい。
誰が書いたかで評価が決まる構造では、既存のネームバリューを持つ人が圧倒的に有利になりやすい。これは(※公式がそう明言したわけではないが)現状のnoteが「企業やクリエイターのブランディングの場」として機能しているためであり、小説投稿サイトのような純粋に作品単体で評価されるべき場とは根本的に性質が異なる。(まあ、現状の小説投稿サイトも純粋な作品内容で評価される場とは程遠いのだが)
昔のインターネットが持っていた現実世界にない魅力は、「現実の肩書きやステータスを超えて、純粋に中身だけで評価される場であること」だったという点だ。
現実世界では、どれだけ面白い考えを持っていても、学歴や職歴、社会的地位や名声がなければ評価されにくい。
しかし、インターネットはそうした固定された価値観をリセットし、各々にどのようなバックボーンがあろうとも「発想が斬新であったり個性的な人が生み出した面白いものが注目される」という、現実とは異なる公平な競争の場を提供していたはずだった。
商業化が進むことで、インターネットが現実世界の延長となって日々退屈になっていく昨今の流れが大嫌いな過激派老害筆者としては、こうしたnoteの「ネットで現実のネームバリューを振りかざして大金を稼ぐ空気感」には、ぶっちゃけ死ねでござるという気持ちしかなく、現実のバリューなんか捨てて、何ならお前個人の現実世界の肩書すらも捨てて、中身の面白さだけで勝負しろよと言いたくなるのだが……まあそういった行き過ぎた理想主義はさておき。
この特性がそのままもしもnoteの小説投稿サイトにも適用されると、プラットフォームとしての知名度が上がれば上がるほど、最初から知名度を持つ作家やフォロワーの多いインフルエンサーが無双する環境になり、新規の参入障壁がさらに高まる懸念がある。
ランキングがないからこそ公平になるのではなく、むしろフォロワーの影響がすべてを決める仕組みになってしまえば、結果的に既存の影響力がそのまま可視化されるだけで、新しい才能が評価される機会も少なくなる。
小説家になろうのようなランキング型の問題とは別の形で、より固定化されたヒエラルキーが生まれることになる…………かもしれない。