膝まくらの上で約束
僕はソファーに寝そべり、君のやわらかい太ももに頭を乗せて、君に訊ねる。
「ねえ 僕達がおじいさんとおばあさんになっても、君は僕のことずっと好きでいてくれる?」
「あなたがおじいさんになって、わたしがおばあさんになっても、私はあなたのことをずっと好きでいられるわ」
「じゃあ もし僕が犯罪者になったとして、刑務所に何年も入れられたとしても、それでも僕のこと好きでいてくれる?」
「あなたが理由もなく悪い事をするような人じゃないことは、私が一番知っているわ。だから何があったとしても、私はあなたのことをずっと好きでいられる」
「だったら、もし僕が人間じゃなく、猫になってしまっても好きでいてくれるかな?」
「あなたがもしも猫になったのなら、こうして私の膝の上でずっと撫でていてあげる。あなたがニャーって、何かを求めて鳴き声をあげたら、私には、あなたがどうして欲しいのかすぐにわかるはずよ」
「そしたらさー、僕がゴキブリになっちゃったら、どう?」
「うーん、ゴキブリは気持ち悪くてヤだけど、それがもし、あなただったら、虫かごに入れて、エサをあげながら毎日あなたに話しかけるわ。でも、大丈夫よ。あなたはゴキブリにはならないし、私があなたのことを好きなのは、一生変わらないんだから」
僕からの訳のわからない質問にそう答えながら、彼女は僕の頭をやさしく撫でてくれた。
そんな彼女が婚約したという話しを昨日、友達から聞いた。
相手の男は、彼女のやわらかい太ももに頭を乗せたまま、彼女に結婚を申し込んだのだろうか?
「ねえ 僕達がおじいさんとおばあさんになっても、僕が犯罪者になっても、たとえ人間じゃない他のものになったとしても、ずっとずっと、僕のことを愛してくれますか?」って。
そして彼女は、相手の男の頭を撫でながら、きっとこう言うんだ。
「あなたと私が、歳をとっておじいさんとおばあさんになっても、あなたが犯罪者になったとしても、たとえ人間以外の生き物になってしまったとしても、ふたりの命が続く限り、ずっとずっとあなたのことを愛し続けると誓うわ。嘘いつわりなく」と。