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コスモス

君は教科書を丁寧に鞄へと仕舞う。
そんな姿を視線の隅に置きながら、僕は慌てて帰り支度をする。
教室を出て、校門を抜ける君のあとを距離をとって追いかける。

いつもの川沿いの道に出た。
土手に桃色の花が咲き並ぶ。
綺麗に揃った花弁は、夜空に広がる星座のように整然と秩序を守る姿から、アントニオ・ホセ・カヴァニレスによりコスモスと名づけられた。(wikipedia調べ)

君はスカートの裾をひざ裏に仕舞い込みながらしゃがんでコスモスの一輪を愛でる。
君の美しい所作に目が身体ごと釘付けになる。
おまけに微かに汗混じりのフローラルな香りを風が運び、僕の鼻腔を刺激する。
思春期の僕にはとても刺激的な状況だった。

僕は瞼を閉じ、想像の世界に没入する。
目の前にいる君を瞼の中に映し出す。

きちんと一番上までとめられたシャツのボタン。
正確な折目をキープしたスカートのプリーツ。
その下に覗くけがれのない白い肌。

完璧で優等生な君を壊したい。
なにもかもぐちゃぐちゃに。

僕が求めるのはカオス。
秩序を乱した後に現れる渾沌。
カオスこそが僕にとってのコスモス。

僕はただやり場のないエネルギーを体内に溜め込む。
ゆっくりと息を吐きながら瞼を開く。
しかし、視界の先には既に君の姿はなく、薄暮の空に一番星が浮かんでいた。


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しめじ
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