天国か地獄か現世か
気がつくと何故だかボクは夕日が射し込む広いレストランの中央の席で白いナプキンを首に巻いて座っていた。他の席には誰もいない。
テーブルにはこんがりと焼かれた豚の頭がこちらを向いて睨んでいる。
厨房ではウサ耳を付けた太った中年男が天井から吊るされた頭のない豚の腹を裂き内臓を取り出している。吊るされた豚からは赤黒い血液がダラダラと流れ落ちていく。
ウサ耳中年男が取り出した内臓をそのまま煮えたぎる鍋へ無造作に投げ入れる光景を見ながらボクは豚の頬っぺたにナイフを入れる。
特にお腹は空いていなかったけど一口食べてみる。全く味を感じなかったのにナイフとフォークを持った両手は止まらなくなり次々と口へ運ばれる。
ウサ耳中年男は豚の4本の足を次々と落としオープンへ突っ込む。
ボクはまだ毛が残った耳にかぶりつく。豚の頭は頭蓋骨だけになった。
ウサ耳中年男が鍋のままグツグツと沸騰したスープを運んでくる。長いままの腸が赤いスープに浮かんでいる。
しゃもじほどの大きなスプーンでスープを口に運ぶ。熱いはずのスープはそのまま胃に流れこんでいたけど熱さも味も感じない。浮かんでいた腸もそのまま噛まずにのみ込んででみる。さすがに長すぎてのみ込めなかったから腸は口からはみ出し鍋の中へ垂れ下がったまま。
その間にウサ耳中年男は豚の足やらお尻やらの残りの部分を一緒くたにして置いていく。
ボクはなんとか巨大な鍋を持ち上げて腸ごとスープで流し込み他の部位に手をつける。
ウサ耳中年男は2頭目の豚を天井に吊るし、頭を切り落とした。赤黒い鮮血がボタボタと床に叩きつけられる音がした。
ボクは食べ続ける。全く満腹感は訪れてこない。
豚のまるごと料理はウサ耳中年男の手によって次々と運ばれる。
ボクはそのなんの味も温度もない料理をひたすら食べ続ける。満腹感の気配もなく。
朝陽が射し込んできた厨房でウサ耳中年男はもうなん頭目かわからない豚の腹を裂いている。豚から抜け出した血液は厨房から流れ出しテーブルや椅子が浮き始めている。
椅子に座っていられなくなったボクは生温かくも冷たくもない血の海に立って眠気も便意も感じぬままひたすら豚を食べ続ける。
ここは天国なのか、地獄なのか、はたまた現実の世界なのだろうか と考えてみる
でもそんなことはどうでもいいやと思い至り 黙々と豚にかぶりつく。
ウサ耳中年男はゴムボートをふくらませ始めた。
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