クラスのリーダーがくれた称号 / お題:「夕方」【一行ください】
大変遅くなってしまったが、この企画に着手しようとおもいます。お題をくださった皆様遅くなってしまい申し訳ございません。
ではさっそく、口寄せさん(https://twitter.com/summonedmonster)からいただきました「夕方」で書いていきます。
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「夕方」と聞いて思い出したのは、小学5年生だったある日の放課後、わたしの性格が決定づけられた同級生のひと言だった。
門限ギリギリの時間、朝礼台から4つ隣の背の高さが切り替わる鉄棒の前あたりで、何時の記憶かすらも判別できないくらいやったサッカーして遊んだあと、学校であったこととかを友達としゃべってた。この日は、クラスのリーダー的存在のコースケと最近転校してきたサムと一年中半袖半ズボンで顔が男前なモリリンと糸目のムナカタくんと、ちょろいの5人だったとおもう。
きっかけはわからないけど(小学生にありがちな会話のすれ違いだろう)、コースケとサムのどんどん険悪になっていくのが感じ取れて、目の前で言い合いがはじまった。現代で言うところの「スクールカースト」に象徴されるように、この年頃の学校での人間関係はチカラがすべてなところがあって、もれなくわたしも日々腕っぷしが立つコースケの恐怖政治に属していたところもあるのだが、正直どちらの味方でもいたいと思いながら行く末を見ていることしかできなかった。一応彼の名誉のために言っておくが、彼は人として筋を間違えた時に怒りはするが、日常的にチカラを誇示したりむやみに振りかざしたりするタイプではない。ほんのすこしだけオトナだっただけ。
ますます言葉に険が増してヒートアップしていくのをみていたところに、ふとわたしが起こした聞き間違いによって一転その場が和んだ。自分でも意図してない状況に戸惑っているところにコースケが「ちょろいはムードメーカーだね」と言ったことが強く記憶に残っている。険悪な雰囲気が解消されたこと、自分の言葉でみんなが笑ってることへの充足感、「ムードメーカー」という未知の言葉、いろんな感情がふりかかってきてふわふわした気持ちになりながらも無性に嬉しかったのを覚えている。
彼に「ムードメーカーってなに?」と訊いてみると「場を和ませてくれる人だよ」と教えてくれた。なんかしっくりきた。おもしろいことや楽しいことが大好きで、学校生活のなかでも自分が笑うのはもちろん、人が笑ってたり笑わせたりするのがとにかく楽しかった自分に「ムードメーカー」という人物像がとてもしっくりきた。「ああ、俺はムードメーカーなんだ」、振り返るとあそこが今日|《こんにち》に至るわたしの大枠を決めた瞬間だった。31歳になった人間が「わたしはムードメーカーでっせ!」と書いているのはいささか恥ずかしい気持ちだけれど、あの日あの時リーダーがくれた称号は今も勲章として光ってる。
小学校近くのチバさん(駄菓子屋)で買った駄菓子を食べながら決闘したり、人生ではじめてもらったラブレターを大切に持ち帰ったり、わたしの人生のなかでも15時から18時ぐらいの夕方は、色濃く残る事件や毎日違う日常がたくさん詰まった刺激的な時間だった。
喜怒哀楽がつまった記憶の引き出してくれるからか、夕方の匂いが好きだ。とくにこの秋ごろの匂いは特別で、枯れ葉がかった秋の空気をめいっぱい吸い込むのが癖なのだが、”夕方”は大人になってからすっかり縁遠い場所になってしまった気がする。わたしにとっての”夕方”がまた訪れることを期待しながら、明日も朝日を迎えようと思う。
おしまい。
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この「一行ください」は今後も継続していきたいので、noteやツイッター(新:X)にて随時募集しておりますのでコメントやフォローをよろしくお願いいたします。