見送る背中の寂しさを上回らせる未来/水樹奈々ライブ『NANA MIZUKI LIVE PARADE2023』感想
2023年9月2日土曜日に水樹奈々のライブ『NANA MIZUKI LIVE PARADE2023』に行ってきた。このテキストでは、ライブ本編に主軸を置かず、参加したわたし自身とその周辺の感想を中心に簡単にではあるが記録していきたい。水樹奈々のライブに通いつづけて11年ほど、水樹奈々のように生きたい31歳になった人間の吐露である。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
なんといっても今回のツアーの目玉はライブでの声出し解禁。ライブ本編はは水樹奈々、関係者、ファン共々の辛抱によって守り抜いた空間を、これまでの苦難を振り返りつつ、祝福の歓声によってライブを共有するよろこびを呼び覚ます至福のひと時だった。
個人的にこの水樹奈々ライブの前週に『Animelo Summer Live2023』(通称:アニサマ)に参加してきた。アニメソングを歌唱するアーティストや声優、アニメユニットが多数参加する国内最大級のアニソンフェスである。
ふだん熱心にアニメを視聴するでもなく、アニソンを聞くでもないわたしは予習なしぶっつけ本番でこのフェスに参加したのだが、参加者全員が選りすぐりの数曲でぶつけてくる熱量と、磨き上げられたパフォーマンスに度肝を抜かれた。芹澤優、DIALOGUE+、内山雄馬、鈴木このみ、オーイシマサヨシ…初めてちゃんと見る水樹奈々以外のアニソンアーティストの優れたパフォーマンスを目の当たりにし、わたしは揺らいだ。
水樹奈々はもはや他の追随すら許さないアニソン界のトップランナーであり、歌唱力は日本の歌手の中でも屈指の実力を持ったアーティストである、ファン歴がもうすぐ15年を数えようとしてる現在でもそう思っている。なのに、RO-KYU-BU!復活という一大事に浮足立つ衆目を自分に向けさせた芹澤優の圧倒的アイドル性を、ハードな楽曲を巧みに乗り回してオーディエンスを沸き立たせる鈴木このみの正統派アニソン歌手っぷりをみて、水樹奈々と同等の実力者は当然のように存在しているし、もはや水樹奈々こそNo.1というのは妄信的な願望になってしまったのではないか。わたしの中の水樹奈々神話が崩れかけた。
信心が不安定になりながら当日わたしは東京公演に参加したわけだが、水樹奈々はそんな不安を軽々と上書きした。やっぱり水樹奈々だ。3時間ほどの長時間のなかで、水樹奈々、バンド、ダンサー、照明、舞台、衣装などライブの世界観で統一されたすべてがわたしたち観客を楽しませるために存在する、これぞ水樹奈々によるエンターテイメントというエネルギーを全身に浴びてきた。その濃度・密度はコロナ禍を経てさらにパワーアップしているように感じた。
『LIVE RUNNER』『LIVE HOME』『LIVE HEROES』の4部作の最終章に位置付けられた今回のツアー『LIVE PARADE』は、水樹奈々のライブひいては水樹奈々は、これまでも、そして、これからも唯一無二のエンターテイメントを共有する場所であることを表明し、わたしに未来をみせてくれた素晴らしいライブであったと自信をもって言える。
今回の東京公演には友人4人と参加した。バッドコンディションから復帰して水樹奈々を聴けるようになったまゆらや、アニサマ2023を共にしたなべわたなど、わたしのnoteにも時折登場してるいつもの連中。わたしたちは大学で知り合った10年来の仲良しマイフレンズだ。みんな仲良く年を取るもんで、大学生だったわたしたちはみんなが30歳を踏みだした。最近このことについて寂しくになるときがある。
30歳という数字。「年齢なんてただのナンバー」「何かを始めるのに遅いということはない」そう強がって見せたところで自分を説得するだけの力を持ち合わせていないわたしはどうしても不安定になってしまう。
友だちが同棲を始めたり、仕事を変えようとしていたり、婚活してたり、それぞれの人生を歩んでライフステージをすこしずつ上りはじめている。一方わたしは、パートナーをつくるでもなくこうして日々チマチマと文章書きながらライブで光る棒を振り回して踊り狂うたのしい日々を過ごしている。果たしてそれでいいのか、すくなくとも他にやることがありそう。
これから数年も経てば、否応なしに生活サイクルのちがいが生まれてこれまでのような付き合いは難しくなってくるはずだ。そうなったら寂しいなとおもってしまうときがある。
ツアータイトルがLIVE PARADEと聞いて、2022年秋にこの仲良しフレンズみんなでベイマックスの仮装をしてディズニーランドに行ったことを思い出した。ベイマックスも仮装もディズニーも特に好きなわけではないけれど、あの時に行ったディズニーランドは特別に楽しかったな。
ディズニーハロウィンでは平時とは違うヴィランズのパレード「スプーキー“Boo!”パレード」が催される。禍々しいフロートに乗ったヴィランズが手下を従えて妖しく闊歩する事前に場所取りをしてまで見たいと思う気持ちがわかすくらい、はじめてちゃんと見たディズニーのパレードは思っていたよりも楽しかった。
あのときパレードの見送った背中のあの寂寥は最近感じる寂しさにどこか似ている。しかし、今回水樹奈々がライブで見せた光景は、寂しさや辛さを抱きかかえながら希望をもって明るい未来をつくっていこうというメッセージをありありと提示してくれた。
そろそろ筆を置くとしよう。ここまで軟弱で読みづらい文章だったとは思うがそれもわたしの迷いだとどうか受け止めてほしい。
どうなるかではなくどうするか、人生の境界線にたつわたしにとってこれからを歩む指標を新たに授かったような気がした。ここまでわたしが書き連ねてきた言葉がいつかわたしの人生にとって良き影響があれば幸いである。これからもわたしは水樹奈々のように生きよう、そう思えた『LVE PARADE』でした。
おしまい。