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『日向坂で会いましょう』取ってくれ、あの日から奥歯に詰まったまま
今回も『日向坂で会いましょう』おもしろかったですね。
正直に申し上げて、『日向坂で会いましょう』Xアカウントに投稿された次回予告をみた時、少しだけゲンナリした。しつこいくらいに「Happy Magical Tour 2024」の話題だったから。
もう何度目でしょうか。ゲンナリしたのは参加してないライブの話題を3回も放送される低刺激というよりも、他の企画がもっと見たいという気持ちが大きかった。ネタ切れなのか、時期的な調整期間だったのか、最後の1期生がいる時間も限られているこの時期に同じテーマを扱うのは何ともじれったい。
ましてや今回の企画のアプローチが「ライブのブラッシュアップ」だった点も個人的に不穏だった。わたしが参加した日向坂46ライブは、日向坂46の初の東京ドーム公演『3周年記念MEMORIAL LIVE ~3回目のひな誕祭~』と2023年ツアー『Happy Train Tour 2023』横浜公演の2度。
わたし自身と日向坂46に対する誠実を誓ったうえで率直に申し上げると、『Happy Train Tour 2023』横浜公演にガッカリしました。あの日を機に日向坂46のライブに足を運ぶことはなくなりました。理由は本稿と関係が薄いので省略いたしますが、その理由とバラエティ番組の相性を考慮すると確実に扱われないだろうと予測したため、今回の【ブラッシュアップライブ!ひな誕祭に向けて反省点を洗い出しましょう!!】企画では、おそらく、以前行ったようにハプニングやアクシデントを振り返る企画になるのだろうと思っていました。
うだうだ抜かしてきましたが、けっきょく笑い転げてるわたしがそこにはいました。予想通り今回の放送は振り返り企画で、ブラッシュアップは建付け上の造作でした。
わたしたち観客は一方的にステージを見上げるだけで、せいぜい「目が合った」「”””わたし”””を指さした」と終演後に飲み物片手に気楽なものですが、歌割、振付、立ち位置、曲順、出捌けの方向など、頭に筋書をパンパンに詰め込んだ上で、加えて物語を生きる表現力も試される。ステージという空間はわたしたちの想像の遥か上をゆく極限状態の世界なのでしょう。先日ミュージカルを見に行った時も思ったのですが2時間30分の演じ切る姿に毎回新鮮に驚きと敬意をおぼえます。
余談ですが、ステージからは案外観客の表情や服装が細かに見えてるらしいです。魔物が棲んでるとはいいますが、ステージ上から見える景色には常にファンと魔物がいつも微笑んでいることでしょう。今回の主役はそんな魔物に運悪く捕まってしまった人々だったわけですが、プロフェッショナルとして不覚と取ってしまった人間の訂正力をこの企画は捉えていた。
すべてを間違えかねなかった森本茉莉の勢いはいっそ清々しく、このまますべてを間違えてほしいと願ってしまうほど彼女は間違ってなかった。間違えた時も修正する時も徹頭徹尾楽しみつづけた森本茉莉の胆力は、同じように立ち位置を間違えてしまった平尾帆夏に比べれば一日の長があったようにみえます。
またステージの前段、平岡海月と竹内希来里が「ファンに自身を届けたい」「直前の変更は全体に混乱を生じさせる」と対立したトロッコ問題では彼女たちが寸前まで作品をブラッシュアップする様子が見られました。本気のケンカはどうしてこうも前のめりに見たくなってしまうのでしょう。石塚瑶季には申し訳ないけどあと10分くらい見たかった。
今回掲げていた「ブラッシュアップ」がわたしの考えとは異なるというのは先述いたしましたが、その予想は的中しました。実際にみたあとで思うのは、ブラッシュアップとバラエティ番組の相性の悪さは否めなかったこと。失敗を笑い飛ばす事が今回の目的であるがゆえに、バラエティ番組として初めに取り組むとブラッシュアップが不真面目に見えてしまう、ブラッシュアップを真面目に取り組むとバラエティ番組として不真面目に見える。
それを両立させる見方をしようと考えると「アイドル番組だから」「可愛いから」というところに着地してしまいそうです。それはなんだか”アイドル”を悪用しているみたいで個人的に趣味ではありません。ややネガティブな視線であるのは先述したライブに行かないことにつながってきます。
今回はとてもおもしろかったです。過熱した宮地すみれイジリに危うさを覚えつつもどうしても笑ってしまいました。ですがそのおもしろさとは裏腹に、どこか口のなかにえぐみが残る後味をいまも噛みしめているところです。日向坂46のライブに行かなくなった理由について、読者の皆様には消化不良の結果となったと思います。申し訳ございません。この話は誠実さが整った時にいつかまたお話できたらと存じます。
(おしまい)