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「それ盛ってんで!」は名残惜しく『日向坂で会いましょう』にこだました
今回も『日向坂で会いましょう』おもしろかったですね。
今回の企画は【トークの盛りすぎ注意!高瀬愛奈のそれは盛ってるで!】。気がつけば第7弾を数える大人気企画。『日向坂で会いましょう』が持つ定番企画のなかでもメンバーのフルネームを冠する企画はこれだけで、高瀬愛奈の卒業後もこの企画が存続するのかは個人的には気になるところです。
この企画はタイトルはもちろん、「それは盛ってるで!」という決めゼリフやギミックなどこの企画は高瀬愛奈という存在が根幹となっています。今後彼女の名前を使用できなくなるなら、番組形式は維持できても世界観はまるっきり更新しなくてはいけなくなるはずです。贔屓目ですが高瀬愛奈の雰囲気が面白話一本勝負なこの企画をまろやかにしてくれていると思うので、今後もひきつづき【高瀬愛奈の~】と冠されることを願います。本人不在なのにいつまでも声だけがいるって面白いと思うんですよ。
と希望を述べたところで今回の企画を見ていきます。この企画は包括的に「トーク」が大きな見どころで、メンバーの知られざるエピソードをいかに上手く展開できるかが結果を左右するところでした。
一口に”上手く”と言ってもその方法は多種多様です。ユーモラスに整理された起承転結、話す時の音量やトーンや抑揚、間も大切でしょう。目くばせやマイムなどの身振り手振りも視覚的に大事な要素ですね。これらを聞き手の温度感を読んで空気に合わせて話題を展開する。
こうして見ると高度な技術を要求されているように見えますが、【それは盛ってるで!】のように大勢で参加するひな壇トークで大事なのは「間」だとわたしは考えています。キーワードは「接続詞」です。
「ということは」「ってか」のように文と文を繋ぐ接続詞。文と文が繋がるという点では先述した「と希望を述べたところで」「こうして見ると」も広義では接続詞といえるでしょう。
この接続詞を上手に使うと大勢でのひな壇トークで会話に割って入ることができます。例として藤嶌果歩と宮地すみれが早口友達だという話に割って入った石塚瑶季の「速いで思い出したんですけど・・・」を挙げたい。つづくトークは速さとは関係ない話でしたが、あらかじめ接続詞を打つことによってスムーズな話題転回を実現していました。
ここ最近『日向坂で会いましょう』で感じていた若干のテンポの悪さはオードリー発日向坂着のターンで断続していたからなのかもしれません。道中の信号機がほとんど赤信号だった時の運転のような歯がゆさに近いです。それが今回オールグリーンで展開していったことでトークにドライブ感が生まれていたように感じました。端的に気持ちいいくらいテンポが良かった。
関節を鳴らすのが苦手だと訴える森本茉莉への若林の疑問に即時実演で示した髙橋未来虹の対応は見事でした。というか森本茉莉編での彼女の活躍が全体的に素晴らしかった。その姿はかつて記した選抜制度から出発した彼女の努力の結実のように映りました。とても頼もしくなりました。
「接続詞」をキーワードにトークをみていきましたが、一方で森本茉莉のように聞き手が光る回でもありました。この企画のあるある対象者は主役でありサンプルであり、全演者の受け手です。四方から浴びせられる注目を一手に引き受けなくてはなりません。
企画上あるある対象者は真実を語る者でなくてはいけませんが、その真実をいかにして語るかがトークの如何を左右し、これを飼いならせた者が話題の中心として存在感を示すことができると思います。ホラーゲームが平気だった藤嶌果歩はその性質上不利ではありましたが、他の部分では(私は可愛いという自認でもって可愛いアイドルを演じる胆力といいましょうか)彼女の自信家な部分を見ることができたと思います。
今回企画に大いに貢献していたメンバーを見渡しても多くが3期生以下のメンバーでした。『日向坂で会いましょう』の世代交代が済んだといっていいかもしれません。寂しいことではありますが、今回見られた奮闘は成熟してきた下の世代からの餞のようにも思えました。寂しくもあり嬉しくもあります。ドラえもんの為にジャイアンと戦ったのび太を思い出しました。
タレこむメンバーのスキルと、それを受け止めるメンバーの人間性と、侃々諤々は【それ盛ってんで!】企画でしか見ることができないと改めて思い知りました。おそらく今回が高瀬愛奈が在籍中に行われる最後の【それ盛ってんで!】になると思います。「高瀬愛奈」という名が変わってしまったとしても、彼女の名残が後世まで受け継がれてゆきますよう願いを込めてこのテキストを〆させていただきます。
(おしまい)