20年のデザイナー人生でぶつかった15個の壁と成長の話(前編)
こんにちは、クックパッドのデザイナーの米田(@tyoneda)です。クックパッドでは生鮮食品ECプラットフォームの「クックパッドマート」を作っています。よかったらnoteみてください。
今年で38歳になるので、デザイナーとしてお金をもらい始めた18歳から数えると、デザイナー人生20年になります。
今日はデザイナーをやっていてぶつかった「💀ちいさな壁(失敗や挫折)」と、ぶつかったからこそできた「🌱ちいさな成長」の話をします。半分自己紹介エントリーです。ダラダラ書いてたら長くなっちゃいました😝
💀アイデアの壁
表現の試行をしていた大学生時代、私は「尖ったアイデア」に飢えていました。私が考えるアイデアはどれも普通で、行儀がよい優等生的なものばかり。型破りで驚きがあり、新しい表現になるようなアイデアは、いつも私が憧れる「尖ったアイデア」を作れる人により考案されるのです。
どうやったら新しい表現を生み出せるのか悩み、それができる人々に憧れ嫉妬していたのが最初のちいさな壁でした💀
そんな新しい表現を作るべく、表現の感覚を研ぎ澄ませていた当時、広告や表現の世界で活躍されていた先生の批評はいつだって「普通」で「純粋」でした。
▲ たぶん©2002 佐藤雅彦研究室
ソートのアルゴリズムの表現や、映像と音のシンクロに気を張っていたこの作品に対し、先生の批評は「アスパラガスかわいいね」でした。えっ?そこなの?音ズレ気にならないの?(気にならなかったらしい)
この例だけでなく、先生のラディカル(根源的)な視点はいつも、新しい表現に執着して狭くなった視野を広げてくれるものでした。マス広告で実績を残してきた先生にとって、「普通」という視点は、数多くの普通の国民の心をつかむマス広告をつくるのに重要な視点だったのだと気づきます🌱
この気づきから、徐々に「普通」の視点を持てる事:多くの人に共感できる事の重要さに気が付きました。良い表現を作るには、良いアイデアをつくる能力と、それを正しく評価する能力の両方が必要なのです。批評をする上で「普通」であることは、ことデザインにおいてはアドバンテージだと思います。
ここから「普通の目」を持てることをアイデンティティーとし、表現の世界からデザインの世界へとシフトしていきました。制作会社時代にPCの環境はデフォルトのまま、一番使われているソフトをつかい、デュアルディスプレイを毛嫌いしていたのも、ユーザーの「普通」を自分になじませようとしていたからでした。デザイナーの宇野さん(@saladdays)も、結婚式で友人代表の挨拶をお願いした際「米田さんのデザインは普通です」からはじまりました。
普通であることを強みと認識する一方で、アイデアをつくること自体はこの仕事をしている以上逃れられません。未だに苦手意識はあるのですが、だからこそアイデアを生み出す方法は人より詳しくなったと思います。
詳しくはまたの機会に👋
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💀脱参考サイトの壁
大学卒業後、ウェブデザイン受託の制作会社に入社した私は、ディレクターからデザイン、コーディングまで納品までをすべて一人で行う働き方をしていました。そこで「参考サイト」の洗礼を受け、ちいさな壁にぶつかります💀クライアントと制作物のすり合わせをする過程で、様々なウェブサイトを「参考サイト」として例を挙げるというものです。
案件によっては「このサイトのヘッダー構成と、このサイトのカラーリングと、このサイトの見出しを組み合わせてデザインする」ような着地をすることすらありました。この手法により素敵なクリエイティブを短納期でおさめ、クライアントの満足度も成果も良しとなることも少なくなく、評価の高い手法の一つでした。
制作会社の名誉のために補足をすると、直接デザイン指示をするような意見の強い一部のクライアントを除いて、イメージのすり合わせのみで参考サイトは使われ、デザインをコピーする手法というわけではありません。
制作物のすり合わせが大事だと分かっていても、青臭かった私には他人のふんどしで相撲を取っていると捉えられかねないこの「参考サイト」を使った進行に嫌悪感を覚えていました。どうにか違う手法で案件を進行できないかと模索した結果が以下のような方法でした🌱
上記の改善の結果、クライアントからカジュアルに小さい依頼も来るようになり、自分にしか進行が難しい案件が大量に発生し、なおかつ制作会社の売上が上がったかというとそうではないので、会社に貢献できたかは甚だ怪しいです。
一方で、作ったものと求めているものとの差異が、サービスサイトのユーザーよりも、明確な意思として言語化されるクライアントワークでの失敗経験が、いかに人は思い込みをし、意識のすり合わせが重要であるかを教えてくれました。
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💀グラフィックデザインの壁
制作会社に入社してまもなく、社内の誰よりもキャリアの長いシニアデザイナーがジョインします。圧倒的なデザインの品質もさることながら、スピードも、コミュニケーションの丁寧さも、どの面を切り取っても尊敬できるデザイナーでした。ディレクターとしてデザインを依頼したり、コーダーとしてデザインデータを弄ったりする中で、尊敬や憧れと同時に、何年経っても先輩のようにはなれないであろう「超えられない壁」を感じるようになます💀
界隈のデザイナーが「ウェブデザイナー」とひと括りにされがちなご時世でしたが、今の言葉でいうとその「越えられない壁」は「グラフィックデザイン」のスキルのことです。具体的にはバナーやLP、コーポレートサイトのファーストビューなどです。
グラフィックデザインができないという自覚が芽生えてから、自分の強みや価値について考えるようになり、下記のような視点を持つようになりました🌱
①②は「それはそう」という感じなのですが、②で伸ばす絶対的なスキルよりももしかしたら大事なのが、③の能力を活かすシーンで、この観点が当時の私にはありませんでした。これを「砂漠で水を売る」能力と読んでいます。スキル(=水)の伸長するのではなく、環境(=砂漠)を変えることでスキルの相対価値をあげる能力です。
「グラフィックデザインができなくても自分のスキルが輝ける環境」とはつまり、グラフィックデザインの必要がないB2Bや管理画面の案件、機能性や便利さを求められるUIデザインの領域です。これもまたUIデザインという言葉がなかったので、自身の得意分野の言語化に苦しんだ覚えがあります。この考えが、のちのちフリーランスになってから「会社で一人だけのデザイナー」である環境を好む理由にもつながりました。
聞こえは悪いですが、絶対的価値を2倍にするより、相対的価値を2倍にするほうが、大体の場合簡単です。
振り返ってみると、自分を変えるか環境を変えるかという2択の選択肢にたいして、真っ向から解決せずに環境を変えてばっかでかっこ悪いな!
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💀ワンオペの壁
サイト制作までワンオペで回していた時、自分の実力以上のアウトプットを出すことはできませんでした。また、その制作物もどこか似通ってしまう課題にぶち当たりました💀
一方で毎回高い品質で納品し、表現の振れ幅も大きい優秀なディレクターが何をやっていたかというと、案件ごとにパートナー(外注先)のアサインに注力をしていました。特にビジュアルへの影響が大きいカメラマンやイラストレーターをアサインされた時は、絶対に自分だけでは作り上げることのできないクリエイティブがそこにはありました。
「やりたいことのすべてを自分でできないのであれば、他の人に頼めば良いのか!」
あまりにも当たり前のことですが、外注経験のない自分にとっては目からウロコの発想でした。それから見様見真似でアートディレクションめいたものをするようになり、素晴らしいパートナーさんの力を借りて制作を進めるようになりました🌱今でもパートナーさんとの関係性づくりや、採用活動が他の何よりも優先度高く置いているのは、そういった理由があります。
また、ディレクションをすることによって、今までクライアントが自分に思ってきたであろう気持ちが分かり働き方も変わりました。自分が依頼された時は、クライアントが「あたかも自分がデザインできるかのように身体を拡張された感覚」を持ってもらえるよう務めています。お客様と外注先という関係ではなく、人馬一体であろうとします。(だからか距離が近いとお叱りをよくいただきます・・・)
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💀ひとりで働くフリーランスの壁
友人と起業するため制作会社を辞めたものの、プロダクトの方向性が固まらず、日銭を稼ぐために成り行きでフリーランスになった頃の話です。ありがたいことに大学時代の友人から仕事をもらったり、麻雀をしている時に山田進太郎さんにお声がけをいただけたりしました。
フリーランスあるあるですが、独立した時の不安と喜びからキャパシティ以上の案件を受けすぎる状態に陥っていました。工数見積は正確に関わらず品質や納期に問題があった原因は、会社務めのときと同じパフォーマンスを出せない「効率の悪さ」によるものでした💀自宅に持ち帰って行うひとり仕事のスタイルが私には合っていなかったのです。
学生時代から自宅で宿題できないマンの自覚があったので、自宅での仕事効率向上はさっさとに諦め、すぐに環境改善しました。その方法はシンプルで下記のような「自分が怠惰にならない、緊張感のある環境で制作する」でした🌱(また環境で解決してるやん・・・)
この改善は概ねうまくいきましたが、人は環境になれるとすぐ甘えてしまうので、緊張感を求めて更に下記のような環境を好んで選びました。
緊張感が好きなんです。共感されたことないんですが、人が熱く口論しているシーンとか高まりますよね!!!そういうシーンに出くわすと嬉しくてニヤけてしまい「米田さん何ニヤけてるんですか😡」と怒られるんですけど、好きなんだから仕方ないじゃないか・・・。
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💀刺激不足の壁
常に5件以上の案件を同時並行で進めている経験しかなかった頃、ソーシャルゲーム市場が勃興します。それまでは曜日ごとに違う会社に行ってデザインをしていたのですが、ゲームの大規模化と市場変化のスピードに応える形で週3日以上同じ案件をやることになります。もともとゲームが好きで、IT業界にいながらゲームの仕事できるなんて夢にも思ってたなかったので嬉しかったのもあります。
チームメンバーはもちろん緊張感や市場の面白さもあり、高くモチベーションを保って楽しく仕事をしていたのですが・・・飽きる・・刺激が足りない・・・💀
複数案件同時進行が当たり前になってしまったので人よりも「飽き」に対する耐性が少ないのかもしれません。この記事を書くのもとっくに飽きてます。
「緊張感のある環境」でもある程度クリアできるのですが、下記のような工夫で(ある程度は)拭えることができました🌱やっぱ毎日が刺激に満ちた環境で働きたいですよね!?
制作会社の人にありがちな「作りきりではなく、その後の運用までやりたい」という転職理由をお持ちの方は、自分の「刺激を求めているか」に向き合ったほうが良いかもしれませんね。
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💀成果物の安定性の壁
フリーランスをやっていると色々な方と仕事をする機会があります。良い成果を出せて長い付き合いになったクライアントもいれば、残念ながら良い成果を出せずに一回きりで終わってしまうクライアントもいました。スピードや品質が安定せず、期待に答えた成果物をご用意できなかったのです💀
良い成果を出せるかどうかは、明確に「自分とクライアントの関係性」で決まることが、失敗を繰り返すうちに分かりました。
具体的に言うと「一緒に働いたことがない人からの案件は(初回は)良い成果が出せない」という法則がありました。一緒に働いたことがある人と違って、初顔合わせの状態だとお互いの得手不得手や、良い進め方も分からないのでそれはそう・・・。クライアントとの距離感を重視してきた私の働き方の功罪でもありますが、新規・単発・短期の案件で成果を出している方は本当にすごいと思います。
このちいさな壁を乗り越えるために、一部の例外を除いて「一緒に働いた事がある人からの案件のみを請ける」ことにしました。消極的ではありますが、この方法で安定したスピードと品質を保つことができるようになりました🌱
ちなみに例外とは下記の4つと決めていました。
また、一緒に働いたことがある人と、会社や事業が変わった後も仕事をしていく経験は「事業より会社も人」に向かっていくきっかけになっていきます。
下記の記事でもちょっと話していますが、この記事の後編にも書きたいなと思っています。
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【追記】後編書きました
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長くなってしまったので、この記事を前編とし、気が向いた時に後半を書いていこうと思います!下記のようなことを書こうと思っています。エモみたっぷりなので、恥ずかしくて飲まずには書けないかもしれない。
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