お前が俺のセーラームーン
「あなたにわたしの湯切りを見てほしくて」
と言って長い髪の女が
カゴにUFOを入れてきた
兄はときおり女ダンサーの夢を見る
これもその類いだと思った
女の足は四駆のように
どしどしと何処へでも入っていった
あとに香る甘い香水が
道を作っていく気がした
ビデオテープの巻き戻しのような音がして
カラフルな蜂がそこにいた
奥にはデジタル機器のピッチャーが
セットポジションについていた
長い髪の女がフルスイングすると
打球は一直線にホームランと書かれた看板に当たった
一瞬の出来事だった
まるで鉄の断面図みたいだと思った
「UFO食べようよ」
長い髪の女はそう答えた
長い髪の女はふいに月を見つめた
それから何度も打席に立った
湯気の間からうっすらと
鋭い打球が飛んでいくのが見えた