【SLAM DUNK GI】133話「帝王の盲点」
入団2年目、24歳シーズン後半戦はリハビリから始まり、牧は調整に出遅れた。
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プレーに復帰しても怪我の影響かメンタルの問題かあるいはその両方かとにかく精彩を欠いた。
結果的に日本の若手有望格は、期待を裏切る形となる、そうなると厳しく捲し立てるのがマスコミで世間であった。
「ダンプカーのメッキが剥がれた」
「帝王、牧紳一陥落」
そして1つの仮説をマスコミが作り上げる。
牧紳一が海南の所属した7年間、実績、実力ともに申し分なく神奈川NO1プレーヤー、帝王と形容された。その代名詞に甘んじることなくエリートづらしないハングリー精神を常に保ち、
帝王としての戦い、
帝王との闘い
を繰り広げてきた。しかしそこに帝王の盲点が生じたのかもしれないと牧は自問自答した。
「海南がぬるま湯だった、、、のか?」牧
自身が歩んできた道を否定するようなことが浮かんでくると同時にある言葉が牧の脳裏に浮かんだ。
「何か物足りないと思ったら、自分のことを知らない環境に飛び込んで行ってほしい。」
イタリアで会った三田良佑の言葉だった。
「環境を変える、、、?」牧
3年目を迎えるシーズンオフ、牧の様子を気に掛け1人の男が訪ねた。
海南大付属高校時代の監督、高頭力だった。
「牧、元気か? 元気ではないか? そうだよな。怪我の具合はどうだ?」高頭
「元気ですよ。怪我のほうはそう大きな問題ではないはずです。」牧
「怪我のほう? 問題はメンタルのほうってことか。にわかに騒がれているな。」高頭
「自分の歩んできた道を否定するつもりはないです。しかし疑うことも必要なのかもしれないと。」牧
「何か盲点があるのでは、、?」牧
「海南で作り上げた実績、積み上げた努力が帝王と化した。さらに帝王として敵と戦い、帝王との自分との闘いが牧紳一を作り上げたことは間違いない。誰でも帝王になれるなんてことはないんだ。海南に天才はいない。その努力は否定するなよ。」高頭
「・・・・」牧
「まぁ 思い詰めるな。今日訪ねたのは、こうやって今、マスコミに海南がどうとか?言われているのはわしにも責任があるからな。」高頭
「いや、そんなことは、、。」牧
「海南に声をかけたのはわしだからな。わしもお前と一緒に出来て恩恵を受けている。ちょっと遅くなってしまったが就職祝いをさせてくれ。」高頭
「えっ?」牧
「いや代表祝いでもいいか。ははは(笑)」高頭
高校時代の恩師、高頭力は牧に何かを用意しているという。
「そんな気を使わないでください。」牧
「牧、お前の考えていることはわかっているつもりだ、、、、」
「環境を変えたいのか?」高頭
「!?!? そういう考えもあるかなと。しかし現状、何があるというわけではないです。」牧
「変えるまでいかなくても、新しいものを取り込んで見てもいいのかもな。」高頭
「新しいものですか?」牧
「お前はエリートづらしないハングリー精神を持ち合わせた。だが破天荒かと言えばそうではない。確固たるキャプテンシーを発揮しチームのことを理由に自身への鍛錬も怠たるということは決してなかった。それ故に優秀な選手でエリートなんだよな。」高頭
「それが常勝軍団、海南です。」牧
「うむ、その通りだ。」高頭
「しかしそれこそが帝王の盲点かもしれん。帝王でありつづけるためエリートとなった。外の景色を結果的に弾いてしまったのかもしれんな。」高頭
「しかし海南は卒業したんだ。それにまだキャリアは始まったばかり。ここから新しいものを取り入れてもいい。」高頭
「はい。」牧
「破天荒と聞いて、思いつく人物はいるか?」高頭
「破天荒ですか、、、、、三田良佑!?」牧
牧は昨年オフの三田良祐との出会いを高頭に話した。
「そうかそうか! いいじゃないか! 三田良佑のメンタルは日本人アスリートとして目を見張るものがある。しかしもっと身近にちょこちょこしていた滅茶苦茶なやつがいただろう?」高頭
「身近にいた滅茶苦茶なやつですか?」牧
「湘北の桜木花道だよ」高頭
「桜木!?あー確かに破天荒というか、、。まぁでも変な奴でも勝負をしたくなるような奴でしたね。」牧
「桜木が今、どこにいるのか知っているか?」高頭
「今? 知らないです。バスケットはやっているのか?」牧
「アメリカだよ。どうだ? 破天荒だろ?」高頭
「アメリカ!? 桜木がアメリカでプレーしている?」牧
「大学からもCBAリーグ、JBAリーグでのプレーも閉ざされた桜木は、安西先生のツテでアメリカのストリートバスケで腕を磨きNBAドラフト指名を目指しているそうだ。」高頭
「桜木がNBAドラフト? はは 笑っちゃいけないですね。でも いいね あいつ。」牧
「そこでだ牧、お前もアメリカに行って経験し、学んで、桜木のマインドに触れてみろ。それがわしからの遅れた就職祝いだ。」高頭
「えっ?」牧
「安西先生とは未だにライバル校として戦っている。わしも牧のことを心配して話したらな。桜木のことも安西先生は心配しておられた。牧が様子を見に行ってくれるならぜひ力を貸したいと話をつけていただいた。」高頭
「そうなんですね、、、。」牧
「牧、いろいろあるだろう。社会人としては正解だ。しかし少しくらいは何も考えず飛び込んで見ろ!なあに、本田トラベルにはわしも知り合いがおる、牧が少々、やらかしてもなんとかしてやる(笑)」高頭
「はい。 ありがとうございます。行かさせていただきます!」牧
シーズンオフに訪ねてきた海南大付属高校時代の恩師、高頭力の遅れた就職祝いは、環境を変えるということを考えていた牧紳一へ、
桜木花道が日々ストリートバスケに明け暮れるアメリカへのチケットと才能の発掘を目的とした大会の参加だった。
続