らくがき王国④
今日は、らくがき王国の感謝祭です。
国民は、この日お城の中庭に集まり、王様の言葉に耳を傾けていました。
そんな中、ピーターとジョナサンは頃合いをみて、人気のない場所に移動しました。
「いよいよだな。本当にいいんだな?」
ジョナサンが小声でピーターに聞きました。
「もちろんさ。ジョナサンこそ大丈夫かい?」
「へっ、もうここまで来ちまったからな。まっ、足はふるえているけどな」
二人は気持ちを確認しあい、お城に入る準備をしました。
ピーターが壁にトンネルのらくがきをして、お城への入り口を作りました。
その中を通り、二人はお城の中に入ることができました。
お城の中は、静かで兵士の姿はみられませんでした。きっと兵士たちも感謝祭に参加して、いまは誰もいないのかもしれません。
「やっぱり、お城の廊下は長いな。おい、みろよあのシャンデリア!らくがきじゃないぜ、あれ!本物だよ、本物」
はじめてみるお城の中にジョナサンは興奮していました。
「そこが変だとおもわないか?この国はすべてらくがきでできているのに、なんでお城だけ本物のシャンデリが使われているんだ」
「たしかにな。どこから持ってきたのかな」
「それをたしかめるんだ。ここからは頼むよ、ジョナサン」
「はいよ。感謝しろよ、このらくがきはオレしか描けないんだからな」
そういって、ジョナサンは小さくて美しい鶴のらくがきを描きました。
「本当にキレイだ」
ピーターはジョナサンのらくがきに感心しました。
「オレの家に代々伝わる願いの鶴のらくがきだからな。習得するのにめちゃくちゃ時間かかるんだぞこれ」
「感謝してるって。それじゃ、行こう」
「願いの鶴よ、このお城の秘密の部屋にオレたちを連れて行って」
ジョナサンがお願いをすると、鶴が光だして進みはじめました。
迷宮のようなお城をあっちに行ったり、こっちに行ったりとだんだん二人は疲れてきました。
「なかなかたどり着かないね」
ピーターが汗をぬぐいながらいいました。
「そう簡単に秘密にはたどりつかないんだな。あー、のど乾いた」
ジョナサンがいいました。
しかし、突然、願いの鶴は進むのをやめ、何も変わったところのない壁の前で止まりました。
「きっとここなんだ」
ピーターはいいました。
「なんかいかにも秘密を隠してますって感じだな」
二人は、壁に手をあてて、ゆっくりと押してみました。
すると、壁がゆっくりと前に開き、小部屋があらわれたのです。
ピーターとジョナサンは、緊張をしながら、小部屋に足をふみいれました。