リフレッシュかばん
夜も遅い電車内。
一人のサラリーマンが今まさに電車内で眠りにつこうとしていました。
ローカル線ということもあり、乗客の人数もポツリポツリといるだけでした。
車内アナウンスが、終着駅を告げるころ、サラリーマンはとうとう眠ってしまいました。朝から晩まで働いた体は休むことを選択したのでした。
サラリーマンの体は左に傾き、右に傾きと絶妙なバランスを保ちながら気持ちよさそうに眠っていました。
そして、体は左右の傾きから正面の倒れていきました。
サラリーマンが、正面に倒れそうになった時です。
足元に置いていた、かばんが開き、サラリーマンはそのまま吸い込まれていきました。
かばんに吸い込まれたサラリーマンは、なぜかすべり台ですべりだしていました。
さすがに、眠っていたサラリーマンもこれには驚き目を覚しました。
「なんだここは‼︎」
しかし、いっこうにすべるスピードは落ちません。それどころかますます速さを増していました。
突然、水でスーツが濡れたかとおもうと、だんだんと泡が立ち、スーツごとサラリーマンの全身を洗い出しました。
「うわっ、ぷっ」
サラリーマンはされるがままです。
全身を洗い終わると、すべり台の横から暖かい風が吹き出し、サラリーマンを乾かしはじめました。
すべるスピードと熱風で、スーツも体もあっというまに乾きました。
「なんだかどんどんキレイになっていくぞ」
すべり台からはいろんな道具が出てきていろんなことをしてくれました。
髪を切ってくれたり、歯を磨いてくれたり、鼻毛まで抜いてくれました。
サラリーマンが電車のようにここちよくなっていると、すべり台がマッサージをしはじめました。
気持ちのいいゆれとツボ押しにサラリーマンはまた眠りかけました。
その時、すべり台の先に出口の文字があらわれたのです。そして、サラリーマンはそのまま出口からすべりでました。
かばんから無事に戻ってきたサラリーマンはあたりを見渡しましたが、その車両には誰も乗っていませんでした。
不思議と体の疲れがとれていて、とてもスッキリしています。
かばんをみると、一人でにかばんのチャックが閉まりました。
「ありがとうな。おかげで元気になったよ」
サラリーマンがかばんにお礼をいうと、電車はちょうど終点につきました。
そして、サラリーマンは颯爽と電車を降りていったのでした。