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黒い三角コーンで看板を作ったら、SFみたいになった話

「山下さんってあの、白い三角コーンの人ですよね」

そう言われてたよと、人伝いにそんな話をきいて嬉しさが押し寄せてきた。

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先日書いた三角コーン看板の話もたくさんの人に読んでいただけたし、少しずつ注文も増えてきている。
基本的な顔は文具屋さんなんだけど、すっかり看板屋としての表情にアイデンティティを奪われつつある。

しかしながら、看板作りはやめられない。
私は一旦、沼にハマると、ひたすらそこを掘りたくなる性格だ。

小学校に入学して、「知らない言葉を辞書で調べながら問題を解きましょう」という国語の宿題をやった時もそうだった。
辞書で調べた言葉の「説明文」にまた知らない言葉が出てきたら調べてしまう。
調べれば調べるほど出てくる知らない言葉を前にして午前0時までやっても終わらない宿題に私は泣いた覚えがある。

さすがに学校の宿題はエンドレスにやり続けたいとは思わない。
しかし、自分の興味が及ぶ範囲に置いてやっていることは6歳の頃と変わらない。

温泉が出るわけではない。
石油が出たりするわけでもない。
ほとんどの人が一瞬興味を持っても、離れていってしまうような場所があったとして、私はそこを掘り続ける。
他のライバルがいないからこそマイペースに、5年10年と掘り続けてしまう。

先日投稿した「【目立たない】というデメリットを極めたら、人気商品になった看板の話」というnoteにも100件以上の♡をいただき、ご注文も何件か頂いた。
個人がニッチに作り上げていったものにこれだけ共感していただけたことはただただありがたい。

ここまで来たら、この道を極めたい。
三角コーン看板といえばドケットストアの山下だよねと言われて、あわよくばマツコの知らない世界に出たい。
【目立たない】というデメリットを極める・・・というのなら、伝えたい情報以外は消えるぐらいのものが作れないだろうか。

SF映画に出てくる宙に浮かぶディスプレイのような。
異世界転生ものの小説に出てくるようなステータス画面のような。
グーグルが研究しているというメガネのように、今後AR技術が進歩すれば現実のものとなるかもしれない・・・そんなえげつない看板を作りたい。

もちろんただの文房具屋にはグーグルのような莫大な研究資金はないし、グーグルからスカウトが来る気配もない。
手元にあるのは三角コーンとステッカーを自由にカットできる機械。
ここになにかもう一つ、要素を加えてそんな看板を作れないものかと半年近く悩んだ。
そしてついに完成したのが、真っ黒な三角コーン看板だった。

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炎や血の色を連想させて激しく目立つ赤いコーンとは正反対。
木陰に入っただけでも存在感を失いそうな黒い三角コーン本体は、トラスコさんが販売をしている。
値段も700円程度で売られているのでとてつもなく高いということはない。
トラスコさんがどういった経緯で黒いコーンを作ろうと思われたのかは分からない。
しかしながら単体でも十分かっこいい。

一方で残念ながら、看板パーツは白と黄色しか世の中に流通していない。

そもそも、黄色だけでなく白色を販売しているだけでも私にとっては奇跡的な出来事だったのだ。
まさかほとんど流通していない黒い三角コーンのために黒い看板パーツを作れとはいえない。

しかしながら、結果として黒の看板が販売されていないことが今回は幸運と言えた。
私はいつもお世話になっているバイク屋さんを通じて知り合った、車の塗装をお仕事にされている方にダメ元で看板を黒く塗ってもらえないかをお願いすることができた。
その時に1つのアイデアが浮かんだのである。

「先にステッカーを貼り付けてから、看板を黒く塗ってもらう。その後にステッカーを剥がせば・・・、文字部分だけ白い面を残した黒い看板が作れるのではないか」

その昔、ミニ四駆というおもちゃで遊んでいた頃。
マスキングテープを使って、塗装したい場所と塗装したくない場所を分ける技術があることを学んだ。
それを、カッティングステッカーを使って再現できないかと考えたのだった。

この大変面倒くさい注文にも知り合いは付き合ってくださり、今回のコーン看板は誕生した。
なんでこんなめんどくさいことをお願いしたのか。
それは真っ暗な部屋で撮影した、次の画像を見ていただければ理解してもらえると思う。

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そう。
真っ暗な場所に置いた時、塗装されていない文字部分だけを光らせたかった。
まるで文字だけが浮かんでいるような、SFのようなことをどーしてもやってみたかったのである。
下の13秒ほどの動画で見てもらうと、明るい状態と暗い状態での比較もできるので、よかったらあわせてみてみてほしい。

もちろん暗室のように光がまったくない状況というのはなかなかない。
夜の屋外に置いたとき、コーンは視認できる。

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それでもなんの注意もしていないなかで、この看板を見かけたら心になにかもやもやっとした驚きを与えられるのではないだろうかと思う。

比較的暗く、交通量の少ないお店の前の駐車場で撮影した動画を見ていただくとよくわかる。
間違いなく、バックしてくる車は気づかないぐらい闇に馴染んでる。
コーンが全く見えないわけではない。けれど、文字だけが目立って認識できる程度の光具合を実現できている。

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これまで販売してきた白いコーン看板と並べてみると、明らかに表現しているものが違うように感じるのは自分だけだろうか。

ただ、この黒いコーン看板はまだ実験中。
ポリエチレンで看板パーツが出来ているため、塗装がぜんぜん貼りつかない。
結果として、指で触ったり雨がかかるぐらいなら大丈夫だけど、指で引っ掻いたり地面に落としたりすると簡単に塗装が剥げてしまう。
なんてデリケート(物理的)。
もはやそこを含めてアート・・・と言い張りたいと思います。
納期も1ヶ月以上かかるし、費用も1万円ぐらいプラスでかかってしまう尖りっぷり。それでも理解してくれる人には実験的に販売させていただこうと思っています。

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1年以上前に「店舗はメディアになる」という話を小売再生という本で読み、実店舗をオープンしたけれど、まさかその頃には三角コーンでこんなに色々やってるとは予想もしていませんでした。
お店運営という舞台の上で、気のむくままに踊り続けたら黒いコーンを作った男の話を読んでいただきありがとうございます。
黒い三角コーン以上のものを引き続き模索しながら、またnoteにアップしていけたらと思います。

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