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八月十六日:屋久島-博多|Free!

今日の予定
・トッピーキャンセル待ちとフェリーチケット確保のダブルスタンバイ

五時

 今日こそ屋久島を脱出する。
 朝五時起床。まだ暗い。歩いて宮之浦港まで。途中リュックを背負った人がだんだん増えてくる、自然と早足に。

五時四十分

 宮之浦港に着くと朝焼け。トッピー乗り場はすでに長蛇の列。四、五十人くらい。ブタくんはいつの間にかいなくなってた。多分フェリーの様子を見に行ったのだと思う。連絡するとフェリーのチケット売り場の前にも列ができているとのこと。だんだんと空が明るくなってくる。いろいろあったが今日は帰れるんだろうか。さすがに疲れが溜まってきた。

五時五十分

 列が動きだす。建物入り口では隣に新たな列ができている。ありゃなんの列だい?もうすぐ建物の中に入りそう。並んでいる人のキャンセル待ち券しかもらえないのかと思いブタくんに電話して無理言ってトッピー列まで来てもらう。建物に入りかけたところで「七時のトッピーのキャンセル待ちが三十人になりましたので打ちきらせていただきます」のアナウンス。ブタくんにはまたフェリーの列に戻ってもらう。カウンターでは三人くらいの客がトッピーの人に申し立て。「整理券を用意するだけでみんなこんなに並んだりしなくて済むでしょう」というような内容。随分ヒートアップしている。トッピーのおじさんは事情を説明していた。
 気づくと今まで並んでいた列がなくなっていた。さっき隣にできてた列が十時発のトッピーキャンセル待ちの列だそうだ。何それ?今まで並んだのは無駄。また最後尾に戻って並び直し。ちなみにこれはなんの列?もうわからないけど、並ぶ以外にないので並ぶ。朝来た時より後ろになってしまった。後ろに並んでいた大阪のおばさんと屋久島のおばさんが立ち話。こんなに混んだのは初めてだと地元のおばさんが言っている。おばさん情報「キャンセル待ちで乗れるのは八人くらい。フェリーは五百人くらい乗れる。こんなことは今までなかった」。大阪のおばさんは「遅い便は取っているけど、早い便が取れたらそれに変えたいから並んでいる」とのこと。地元のおばさんはじっと待っているのが苦痛らしく列を離れて自分の車に行ったりトッピーの受付に行ったり戻ってきたりうろうろを繰り返している。戻って来た時は何かと報告してくれる。カウンターで揉めていたお客さんは昨日の夕方からキャンセル待ちのために並んでいたらしい。昨日の夕方から!怒るのも無理はない。みんなイライラしている。昨日から並んでもトッピーは取れないのか。地元のおばさんは地元民として観光客に責任を感じているらしい。「せっかくきてくれた人に嫌な思いをしてほしくないのよ」というような。しきりにトッピー側の段取りの悪さを責めている。そのうち並んでいる人たちに大きな声で謝りながらどこかへ行ってしまった。ブタくんから七時のフェリー「はいびすかす」は出港しないとの連絡。これで十時台のトッピーが取れなかったら、今日十八時の飛行機は諦めるしかない。後に並んでいたはずの大阪のおばさんはいつのまにか自分の前に並んでいるおばさんと話し込みながら前へ。なるほど。「初心者向けって聞いた白谷雲水峡に行ったけど大変だった。だから縄文杉は諦めた」などと話している。「知り合いにね、その人も年は一緒なんだけど、毎年行ってるって言ってたの。それで私たちも来てみたんだけど、とても無理だった」とか。運動不足できついのは自分だけかと思ってたけど、他にも無理な人はいた。

八時二十三分

 ブタくんから連絡。「フェリー屋久島2」は出そうとのこと。とりあえず島を出る目処はついた。少しずつだけどトッピーの列も進む。何かを配り始めたのかな?トッピーが出るなら飛行機で帰れるんだけど。列が日陰に入り過ごしやすい。なぜ列が進むのかわかって来た。みんな諦めて列から抜けていってる。おかげで「高速船チケット窓口」の建物の中に入れた。涼しい。助かる。もうカウンターで揉めてる人はいない。ブタくんからの連絡で「屋久島フェリー2」は出るらしい。トッピーのキャンセル待ちで乗れるのは多くても八人くらい。前に並んでいるのは五十人くらい。ここまで並んだのに、また列がばらけて後ろに並び直しというのもバカにした話である。誰も列を整理してないし。そもそもこの列がなんの列なのかもわからない。それよりも確実な方を優先して、それに合わせて予定を組み直した方がいいと思いトッピーは捨て。フェリー乗船券購入の待機列まで移動。
 縁石に座っているブタくんを見つけた。フェリーの待機列も外だけど屋根があるのでありがたい。「フェリー乗船券販売窓口」はまだ閉まっている。列が動くことはないので道に座って、ブタくんと今後の行動を再計画。ブタくんは飛行機は諦めて鹿児島から新幹線に決めたとのこと。「飛行機だろうと何だろうとキャンセル待ちはうんざりだし、新幹線なら自由席で立ってでも乗れることは乗れるから何かあっても東京には近づける」というのが理由。確かに。飛行機チケットの払い戻し金を調べると手数料が五百円くらいかかるだけ。ブタくんの分は即払い戻し。自分は予定などないので、飛行機を明日にずらし鹿児島に一泊して観光するのもアリかと思っていた。けれど、列車だと途中から「寝台列車八雲」に乗る選択もある。その場合ホテル代も兼ねるので節約になり朝には東京に着いてたりする。ブタくんを一人にするのも心配。鹿児島観光は諦め交通手段を陸路に。航空券も払い戻し。以後の予定は仕事のスケジュールがあるブタくん次第に。
 今日中に行けるところまで行くとしたら、新幹線で「新大阪」まで行ける。「新大阪」に着くのが二十四時くらい。夜は何もできない。翌朝は始発が五時頃だから、いっそホテルじゃなくて漫画喫茶でもいいかも。というのが第一案。別案としては、どこに行くにも乗り換えのために博多で降りなきゃけない。「博多」には二十一時頃着く。始発で「博多」から東京行きの新幹線に乗ると昼前には着ける。「博多」で泊まることにすればちょっとくらい街を見て回れる時間はある。
 今日のフェリーは乗れるだろう。鹿児島に上陸できればどんなに遅くなっても「博多」までは行ける。ということで、一泊するなら夜の時間がある「博多」にすることに。帰っても何の予定もない自分には何の意見もない。それよりも予定が固まった安心感がすごい。もう悩むことなんか何にもない。
 あとは、十三時三十分出港の「屋久島フェリー2」が来るのを待つのみ。ブタくんはお尻が痛いのでかわいそう。待っている間ずっと痛い。常に痛くないポジションを探ってもぞもぞしている。顔は疲れ切っている。
 空は快晴。写真を撮りに港をうろうろ。振り返るとフェリーの乗船券購入待機列が遥か彼方まで続いている。トッピーに乗れなかった人が集まっている。ここでも見た顔がちらほら。島中の観光客がこの場所に集まっている。

十時

 写真を撮りながらうろうろしていたら「フェリー乗船券販売窓口」が開いたので列に戻る。列が動きゆっくりと中へ。フェリーは出るようだ。朝からブタくんが並んでいてくれたので結構前の方。じきにフェリーの乗船券を買えた。よかった。とにかくこれで島を出れることが確定。本当に良かった。あと二時間くらいか。とりあえず建物の中でベンチを見つけたので死守。ブタくんはこの待ち時間にお土産を買いに別の建物へ。十三、十四、十五、十六日分の観光客が今この場所に集中しているのでどこも人だらけ。

十一時三十分

 ブタくんが外に列ができていることに気づく。またか。何がどうなっているのかわからないけど並んでおかないと何かあった時に悔やみきれない。空調の効いた室内を後にして外の列に加わる。ここでも待ち。ひたすら待ち。じっとしていのが苦手なブタくんが「ライフセンターオノデン」でお弁当を買って来てくれるらしい。港にはたまにエンジン音をあげて高速船トッピーが入港してはまた出てゆく。ああ。十三日の段階で十六日のトッピーに変えていればもうとっくに鹿児島についているのに。とついつい考えてしまう。もちろんその時に今の状況なんかわからない。それでも後から「どうしてあの時......」とつい考えてしまう。そんなものよね。
 「フェリー乗船券販売窓口」とベンチがあるのが「宮之浦港県営待合所」。営業はしてないけどいい感じの喫茶店もある。建物の脇には船体に太陽のシルエットがデザインされた大きな船が繋がれてる。あれは種子島と屋久島の間を運行しているフェリーらしい。屋久島のすぐ隣には種子島がある。ということは「種子島宇宙センター」も隣にあって、ロケットの打ち上げは屋久島からも見えるらしい。いつか「種子島宇宙センター」でロケットの打ち上げを見てみたい。
待ちの間に港(埠頭?)の写真を撮る。フェリーの乗船待機列はとんでもないことに。しかも、「宮之浦港県営待合所」の向こうにはフェリー乗船券購入の列がどこまでも続いている。何人くらいいるんだろう。千人以上はいるように見える。
 港に伸びた堤防の上にはコンテナがいっぱい。日差しも強い。空も晴れており、海を挟んだ向かいには最初に泊まった「ペンションスカイビュー」らしきところも見える。山の頂上は相変わらず雲に覆われている。ブタくんはお尻が痛くて辛そう。かわいそうに。我々の前に並んでいた女の子の元におじいちゃんとおばあちゃんが登場。高校生の友人同士かと思ってたら姉妹だった。おじいちゃんとおばあちゃんは見送りに来たみたい。屋久島の実家でお盆を過ごしてこれから帰るのだろうか。屋久島はセミも元気だけどお年取りもみんなちゃきちゃきしてて活きがいい。きゃっきゃ言いながら記念写真を撮って帰って行った。

十二時三十分

 時間通りにフェリーが入港。でかい。待機列がそわそわしだす。埠頭にはフォークリフトとかトラックがどんどん集まってきた。パンという破裂音とともに、何かが船から打ち出される。舫綱の導綱が落ちてくる。係留する綱をあんな方法で船から港に降ろすのか。幾つになっても知らないことは多い。
 フェリーが接岸し終わるとお客さんが降りてくる。屋久島に帰ってくるらしき人もいるけど、明らかに観光や登山目的っぽい人も多い。ずっと鹿児島で待機してたのだろうか。地元の人ならこういう時の対処も慣れているのかな。お客さんが降りた後は、船の荷おろし。郵便局の車もたくさん集まっている。船尾ではトラックがどんどん降りてきて、フォークリフトはコンテナを抱えてそこらじゅうを走り回ってる。その間に乗船。一時間の間にお客さんの入れ替えと荷下ろしと積み込みも行うということらしい。何日分も溜まっているだろうからいつもより時間がかかりそう。鹿児島へは大体四時間くらい。船の中はどうなっているかわからないけど、ブタくんのお尻もあるのでちゃんと座れる場所を確保したい。事前に船内の地図を確かめる。
 列は進み、タラップを登り、船に乗ったらそそくさと客室へ。中は広い座敷席が荷棚に区切られてる。一番近くの空いたスペースに潜り込む。早速横になっている人もいる。あれは多分島の人。椅子の席は見当たらない。どうやらこれは寝っころがって行くものらしい。とりあえず、隣の人との距離を測りつつできるだけ楽にできるスペースを確保。出港まで様子を伺う。人はどんどん入ってくる。どんどん人が通路に溢れ出す。様子がわからなくて不安だけどとりあえず待つ。ブタくんが横になれるスペースを死守。

十三時四十分ごろ

 思っていたより遅れずに船が動きだす。外は見えず様子はわからない。とりあえず大人しくしていよう。お茶を買いに自販機へ。船のロビーに出るとびっくり。壁沿いにスーツケースがずらりと並び、その隙間に人が座り込んでいる。ヨーロッパからアメリカに向かった移民船はこんな感じだったのではないだろうか。人をかき分けて自販機へ。階段にもずらっと鞄が置いてあって人がその隙間に座り込んでいる。人や物を踏まないように席まで戻る。どこも混雑しているし船は揺れるので、極力その場にいることにする。ここまでくれば調べることもないので通信機器の電源は気にしなくていい。iPadの「蒼天航路」をブタくんに勧めるが読まないらしい。ということで「あれよ星屑」の続きを読む。
 我々が確保した席は子供がたくさんいて親が大変そう。終始泣いている赤ん坊もいるし、立って歩ける子は基本じっとしていない。歩き出す騒ぎ出すで、この混雑では親はさぞ周りに気を使うだろう。せっかくなので船の写真を撮ろうとカメラを持って写真が撮れそうなところを探す。どこもいっぱいなので人が映らない場所がない。途中、船の食事コーナーが開店したという船内放送がかかったので、早速お店へ行ってみる。どこも人だらけ。立ち食い蕎麦屋のカウンターに椅子が並んでいる場所があったので、そこへ。列がどこかわからないので、最後尾らしいおじさんに「ここが食事の列ですか?」と聞くと「みんなちゃんと並んでるんだから、お前もちゃんと並べと」と怒られる。どうやら誰か抜かしたらしい。どこも人だらけでどれが列かわからないから聞いたのに。あんまり関わらないようにしていたけど、やはりみんなイライラしている。蕎麦を楽しみにしていたけど機嫌の悪い人とどこで関わり合いになるかわからないので席に戻り大人しくすることに。
九州についてからの道を調べようと思ったが、スマホは電波が届いてない。通信が死んでるので地図は確認出来ない。諦めて漫画の続き。
 「あれよ星屑」に夢中になっていると、〈間もなく到着〉のアナウンス。もう着いた。漫画凄い。嫌、これは「あれよ星屑」の引き込み力が凄いのか。
 岸が近付き電波も入ったので鹿児島上陸後の作戦。確認することは「新幹線に乗れる鹿児島駅へ行く方法」と「博多までの新幹線のチケット確保」。着くのは鹿児島南埠頭。来る時トッピーに乗ったところなので市内からはそう遠く無いはず。でも地図を見ると港から駅へ向かう電車は無い。交通手段はタクシーかバス。近くに市電が通っているけど市電の路線は「鹿児島駅」は通らないっぽい。タクシーはおそらく並ばないといけないし、バスは駅行きの路線がいつどこに来るか調べるのが面倒。港に着いたら市電の駅まで歩いて市電で「鹿児島駅」近くまで行くことに。この時点で薄々「鹿児島駅」まで歩くパターンになるだろうなという予感。

十八時

 鹿児島本港南埠頭に到着の館内放送。でもきっとここからが長い。列に並ぶのはもううんざりなので、降りる人がいなくなるまで客室で座って待つ。

十九時

 待つこと一時間。遂にタラップを降り、島から脱出ーーー!本土に帰って来た!!いやー長かった。どうなる事か先の見えない日々ともこれでオサラバ。口に出すと余計なトラブルが起きそうで我慢してたが陸続きの場所に着いたらこっちのもの。着いたぞー!帰れるぞー!!地面の上では島や船で仲良くなったらしい若者たちが別れを惜しんでいる。楽しそうで何より。我々は一路「博多」を目指す。グーグルマップを見ながら市電の駅を探して歩く。ウロウロしていると繁華な交差点。大通りっぽい。市電やバスが行き交っている。銀座で言えば四丁目交差点?札幌で言えば四プラ前?バス停もずらっと並んでいる。メインの通りっぽいし、路線バスなら「鹿児島駅」へ向かうだろう。「鹿児島駅」行きのバス停を探していると丁度「鹿児島中央駅」行きの表示があるバスが来たので飛び乗る。新幹線の出る「鹿児島駅」じゃない駅へ行くバスだったらその時考える。

二十時

 無事に「鹿児島中央駅」へ。「鹿児島駅」じゃなくて「鹿児島中央駅」でいいのかな?まあ行けばわかる。
 屋久島の感覚が残っているので、どこもやたらと賑わって見える。お祭りでもあったのか浴衣姿の女の子もちらほら。駅前では、若い女の子数人がクロアチアのジプシー音楽のような曲に合わせて、アロハシャツの生地で作ったフラメンコ衣装を着てフラダンスなのかフラメンコなのかベリーダンスなのかを踊るパフォーマンスが行われていた。世界は広い。いや。自分の世界は狭い。駅ではトッピーの待合室やフェリー乗り場で見たような人もチラホラ。混み合う券売機で新幹線のチケットを買って改札へ。せっかく鹿児島に来たので駅弁でも買おうと思ったけど新幹線が直ぐ出るらしいので急いでホームへ。
 「博多」行きの新幹線。席はガラガラ。車内の内装がカッコいい。窓のカーテンが簾になってたり、椅子の背もたれが一枚の大きな木の板だったり。最新の新幹線かしら。ブタくんのモバイルWi-fiは死んでたけど、新幹線Wi-Fiみたいなのがあるので席に落ち着いたところで「博多駅」近くでホテルを探す。夕飯は着いたら外で食べるし明日の朝は早くから新幹線に乗るので素泊まり。ブタくんが一軒電話している間に他の宿を何軒か「じゃらん」でリストアップ。ブタくんが電話したホテルは一杯らしい。今日はホテルは混んでいるのだろうか?さっき探した宿のリストを見せて、ブタくんが選んだホテルをそのまま「じゃらん」で予約。

二十一時

 途中、熊本で早く博多に着く新幹線に乗り変える。熊本から乗った新幹線は内装も見たことある感じ。車内は混んでいたので通路に立って博多まで。いよいよスマホのバッテリーが心許ない。節約しながら。まあでも博多でホテルまでの地図が見れれば大丈夫。身も心も疲れてはいるが、もうすぐ休めると思うと大丈夫。どこで食べるかはホテルの人に聞くのがいいとブタくん。確かに。マストは博多ラーメンと明太子。少ないバッテリーの中、博多、ラーメン、オススメ、で検索。レストランのランキングサイトが出てきたのでとんこつラーメンのお店を一位から順に細かく調べるが、一位から十位まで豚骨ラーメンという以外違いがわからない。そうこうしているうちに「博多駅」到着。

二十一時三十分

 ここが博多かぁ。駅や駅近辺で若い人が陽気にたむろしてる。「博多駅」筑紫口を降りてグーグルマップを頼りに「HOTELLAFORESTA」へ。ホテルは思ったより駅の近く。建物は小さいけどカウンターにはちゃんとスーツを着た男性。チェックインを済ませて、この時間でも空いているラーメン屋さんを教えてもらう。駅ビルのラーメン屋さんが集まったところと、中洲近くの何とかというビルを教えてもらった。ひとまず部屋へ。
 ホテルは女性専用らしく。男性単独では利用できないらしい。建物は普通のワンルームマンションをリノベーションしたみたい。部屋は浴室を広くして大きめのベットを置いていっぱいいっぱい。立てる場所は本当に廊下くらい。その代わりお風呂は広くて備品もリッチな感じ。狭いけど内装とかアメニティはいい感じ。必要最小限の設備でうまいことやってる。なるほど勉強になる。荷物を降ろしてスマホやなんかを充電して、ご飯を食べに外へ。

二十二時

 ホテルのカウンターでもらった地図を片手に駅を目指す。教えてもらった筑紫口「博多めん街道」へ。夜も九時を過ぎてるはずだけど、お店も普通にやってるし観光らしき人も地元らしき人もたくさんいてすごい賑わい。さっきスマホで調べて目星をつけてたお店があった。奥まで行って「博多一幸舎」へ。混んでるし店員の声はでかいし、券売機のメニューはわかりづらいけど適当に普通のラーメンとビール。ブタくんはチャーシューメン的なもの。席で一息ついてカメラを忘れたことに気づく。取りに戻る時間は惜しい。スマホのバッテリーは切れそうだし博多では写真はなし。まあしょうがない。店員の元気がいいしお客は飲んだ後なのかみんなやたらと大声で話してるしで煽られてる気分。ビールを飲んでいるとラーメンもすぐ来た。ラーメンは普通にうまい。これが本場のとんこつかぁ、替え玉を頼もうか悩みつつ屋台も行ってみたいのでここはセーブ。あんまり詳しくはないけど、東京で食べるとんこつより十五%くらい美味しい気がする。店の活気に煽られるように慌てて食べ終わり外へ。
 ホテルでもらった地図を片手に中州から天神を見てみようと歩き出す。ブタくんがクッキングパパで読んだ知識を披露。「博多では屋台を食べないと本当の博多を知ったことにはならない」らしい。「屋台」がどこにあってそれが何なのかはわからないけれど、とりあえず中州に行ってみることに。道を間違えつつも大通り沿いに中州へ。
 「ここが中洲かぁ」
 着いてみると何となく納得感。遅い時間なのに人が多い、バスも普通に走ってる。賑やかな繁華街。というか歓楽街。ススキノみたいなとこなのかな?観光客も多いし地元の人もいる。若い女の子も多いけどみんなそれなりに夜の街仕様。なるほどこうゆう街なのか。そういえば家の近くの唐揚げ屋が「中州から来ました」みたいな店だったことを思い出すが、中洲と唐揚げは関係なさそう。(それとも大分だったかな?)橋まで来ると電球的な明かりにテントがたくさん並んでいるところが。これがひょっとして、クッキングパパや島耕作で見聞きした「屋台」というやつでは?行ってみると居酒屋の屋台営業という感じの店が延々と並んでいる。それぞれに料理の趣向は違うけどカウンターがあって「飲んでけや」というもの。電球の光に照らされた屋台と店員さん。観光客なのか夜なのに子供も多く不思議な絵面。川沿いに歩くと広場があってステージでは催し物。虎(のぬいぐるみを来た人)がカラオケで歌い踊ってた。お祭りみたいだけどこれが通常営業っぽい。随分賑やか。昼までいた屋久島との落差がすごい。歩いているとひとけがなくなる。地図を確認。賑やかなところは過ぎたらしい。この距離感だと天神も徒歩距離っぽいのでそのまま歩いて行くことに。
 大通りへ戻るとまた人がたくさん。大通り沿いに天神へ。天神はメインが大きなファッションビルなのか、大抵のところは灯りが消えている。ここは夜の街ではない雰囲気。「屋台」は出てるけど、ちらほらとだけ。戻りながら何処かの「屋台」に寄ってみようかと思ってたらブタくんが「ライフの少なくなったバイオハザード」みたいに片足をひきづり壁に手をかけて歩いてる。もうこれ以上歩くのは無理っぽいので交通機関を探す。タクシーはブタくんが嫌がるので、ちょうど看板の出てた地下鉄へ。何線かわからないけど流石に「博多駅」は通るだろうと思ってたら「博多駅」へ行く路線がない。仕方なく上に戻るのにエレベーターを探すが見つからない。気がつけば必要もないのにブタくんを階段で上り下りさせてしまった。さっきよりライフは下がっているしハーブは無い。地上に戻るとこんな時間でもまだバスが走っている。近くのバス停で路線と時刻表を確認してるとちょうどバスが来た。すかさず乗車。歩いて来た道をそのままバスで「博多駅」まで。お盆だからか、とても夜中とは思えない賑わい。飲み屋だけじゃなくいろんなお店が営業してるしバスも走ってる。観光客も多いが地元っぽい人も多い。しかも若い人が目立つ。駅で降りて近くのコンビニでビールと煙草を買いホテルに戻る。
 ブタくんはベットで安静に。流石に疲労がお尻にきたか。腫れてはいないので動かさないようにじっとするしか無い。氷をもらって来たけどいらないらしい。湿布や痛み止めで痛みをごまかしても無理してひどくなったら意味がないので、かわいそうだがそのままに。多分疲れているだろうから、痛くて寝れないということはないだろう。

 自分は荷物の整理。ゴミは捨て、すぐ使わないものはリュックの奥に、明日着る服をハンガーにかける。パソコンとスマホは充電。ビールを舐めながら眠気を待つ。始まりが朝早いので一日のボリュームが多い。今日の朝は屋久島に居て、晴天のもと大自然に囲まれ不安にかられながらあらゆる長い列に並んでいたのが信じられない。今は博多の狭いホテルのベッドの上で明太子を食べ忘れたと悔やんでいる。明日はまた五時起きなので明太子屋さんによる時間はないだろう。駅弁かなんかで博多の名物は食べられるだろうか?テレビをつけると何とも言えない番組ばかりでようやく眠たくなった。

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→ 八月十七日:博多-東京|Free!

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