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総理大臣のいない国家、それが日本!!(憲法夜話)⑥

憲法とは、生命、自由、財産の保護という、国民の基本的人権を守ることを最大の使命とする・・

井上準之助の戦い

官僚にとって大臣の命令は絶対である。

それがどんな命令だろうと問答無用!ただちに実行すべし。

その根拠は大日本帝国憲法で統治権は天皇にあり(第4条)、第55条に「国務大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ズ」(輔弼とは補佐の意)とされていたことによる。

日本国憲法とは違って、明治憲法はこの規程が充分に守られていたのであった。

高橋是清はそれをもって実践したわけだが、これに類した話は戦前の日本にはゴロゴロ転がっている。

例えば、高橋と同じく大蔵大臣に着任した井上準之助の話もその一つだ。

浜口雄幸内閣、および後継の若槻内閣で蔵相となった井上は行政改革の一環として、官吏の俸給(給料)を一律一割減額するという大鉈を振るった。

世はデフレ不況で、農村は困窮し、都市には失業者は溢れている。

なのに、官吏の給料はいっこうに昔と変わらないのはおかしいではないかというわけだ。

この井上の政策を世論は支持した。

「一割減では生ぬるい。半額にしてもよい」という声もあった。

右翼に至っては、「一割減ではなく、俸給を一割にしてしまえ」と主張した。

しかるに、当の役人のどもの反応やいかに。

小泉内閣が、一部エリート役人の天下り先である特殊法人を整理・統合すると言っただけでも、あれだけの騒ぎが起きたのだから、推して知るべしである。

何しろ、このときは裁判官までが「もし給料を下げるのならストをやる」と息巻いたくらいである。

いや、そればかりか商工省にいたっては、「給料が下がったら、ただちに全員辞職する」とまで脅した。

ところが、時の若槻内閣はこれだけの役人の猛反発を受けてもビクともしなかった。

井上準之助は裁判官のスト通告を聞いても、微動だにしなかった。

「できるものならやってみろ。常識人の裁判官にそれだけの度胸はあるまい」と思ったのか。

また、商工省の辞職脅迫に対しては、時の商工大臣・桜内はただちに啖呵を切った。

「よし分かった。それなら商工省を潰すだけのこと」

どの道、行政改革は天下の急務である。

手始めに商工省を解体してやろうと言うのだ。

ここまで上の覚悟が堅ければ、いかに役人が徒党を組んで抵抗しようとも、負け犬の遠吠えにすぎない。

かくて、役人の給与一割引き下げは実施に移されたわけである。

つづく

【参考文献】『日本国憲法の問題点』小室直樹著 (集英社)

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