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イーサリアム物語②

3年後、ルービンは『サトシ・ナカモト』と名乗る人物が開発した仮想通貨ビットコインの存在を知った。

既存の金融システムの埒外で、政府や中央銀行に操作されずに取引できるまったく新しいデジタル通貨であった。ルービンはたちまちビットコインを買い始めた。そして、その技術基盤についての記事を片っ端から読み漁った。

このシステムはブロックチェーンと呼ばれる画期的な技術であった。暗号化されたあらゆる取引データを所定の電子台帳(ブロック)に記録し鎖(チェーン)のようにつなぐ、そして全ての情報をネットワーク上のコンピュータで共有する。この作業に参加する人には一定の報酬が支払われるというものであった。

だから、どのビットコインが、いつ、どこで、誰に渡ったのかを瞬時に知ることができる。
つまり、あらゆる取引が圧倒的な数量のコンピュータに監視されているから、誰かがハッキングや改ざん、偽造を仕掛けてもすぐに見破ることができるので、信用と安全が保たれていた。

そして運命の日はやってきた。

2014年1月1日

ルービンはカナダのトロントで開かれた仮想通貨に関する会合に出席し、当時19歳の若者に出会った。

若者の名はビタリック・ブテリン、天才数学者であり、『ビットコイン・マガジン』の発行者であった。

ブテリンはルービンに言った、『全く新しいブロックチェーンのアプリを考え出したんだ。』ナカモトのそれと似ていたが、はるかに野心的で仮想通貨だけではなく、あらゆる種類の取引を扱えるという事だった。

例えば、不動産の持分の売却や契約行為の自動化、プログラム化(スマートコントラクト)まで処理できる。このシステムも世界各地にある無数のコンピューターが同時に記録・共有する仕組みで各国の政府や銀行などは介入できない。

ブテリンは自分のプラットフォームに既に名前をつけていた。

『イーサリアム』

雲をつかむような話であるが、ルービンはブテリンのホワイトペーパー(目論見書)を読んで、これこそが自分が求めていたものだと確信した。この技術があれば、金融取引だけでなく、文字通り世界を変えることができる。そう思えたのだった。

つづく

ポコ♪🐸🇯🇵🇯🇵🇯🇵

【参考文献】ニューズウィーク日本版

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