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チバニアン珍道中

Rと一緒に、チバニアンを見に行った。今年(2024年)の2月半ば。
チバニアンというのは古い地層で見られる古い年代の話。(←何もわかってない)
理科ガチ勢のRはノートに綿密な予習をしてきていて、小湊鉄道に乗る間、講義を受けた。「地軸」「地球内部の対流」「ニレイ氏」……並々ならぬ情熱。

千葉県内陸部ののどかさを見よ

G〇〇gle地図に騙される

月崎駅に到着。ヤマザキショップが1軒辛うじてあるだけの素朴な風景。
午前中はクオードの森へ。行ってみたかった、人のいなさそうな観光地。
Rが手際よくマップのナビを起動し、二人はのんびりした千葉の田舎を歩き始めた。人通りなんてほとんどない。木々の間を歩く。チバニアン時代にタイムスリップしたのでは、いやいや辛うじて地面はアスファルト……とか思いつつ歩くこと十数分、「目的地につきました」とスマホ言い。「はぁ!?」と二人声をあげた。マジでなんにもない道の真ん中よ。G〇〇gleのアホが、と悪態をつきながらも私たちは笑いながら来た道を戻って、正しい道(とってもわかりやすい車道)を歩いていった。すぐだった。

駅から数分歩いてこれが見えたら正解の道

静かな森に棲まうもの

クオードの森。それほど広大ではなさそうだったが、敷地内にちょっとしたトレイルが何本かあって、けっこうな運動に。私たちは一生懸命上り下りした。足の長いRは足の短い私をあちこちで待っていてくれた。

園内の様子 人気(ひとけ!)のなさよ
ショートながらわりかしワイルド

土曜なのに人がいない。実質10人弱しか見かけなかった。こういう寂れた観光地が私は大好き。(Rはどうかわからないが……)
静かなあずまやでランチ。Rは緑色のクッションをくれた。アウトドア好きの私がどこでも腰を下ろせるようにと……(このとき以来、遠出の際必ず携帯している。本当に役立つ)
私は私でバレンタインのチョコを渡した。予想外の事態にRは動揺していた。かわいらし。

これ とっても軽くてコンパクト(畳んだ様子)

クオードの森出口で私がトイレに入っていると、
「茶ぶどうさん……茶ぶどうさーん!」
何やら必死なRの声。待ってくれズボンは上げさせてくれ。
急いで出ていくと、一匹の白っぽい猫がRに絡んでいた。Rは猫経験がないのでどうしていいかわかんなかったのだ。猫はなつっこくて、抱っこまでさせてくれた。かわいいねえ。ふわふわだねえ。

白メインの三毛だな

ヌカルミトラップを超えて

森を出てからもRをアクシデントが襲った。途中の道でぬかるみに見事にハマり、靴が片方脱げて靴下はドロドロに。しかし駅前のヤマザキショップが靴下を売っていて助かった。このコンビニ靴下、Rが言うにはたいへん性能がよいらしく、その後も重宝しているという。怪我の功名。
(Rは物事を前向きにとらえるのに長けているなあ、と振り返って思うしだい)
 
さてチバニアンである。
標識がところどころ出ているのを頼りに、古き良き日本家屋を眺めながら歩いた。けっこう歩いたけどお喋りしながらだとあっという間。土曜なのに(またしても)人通りゼロ、と思ったら皆さん車でアクセスされるようだった。

GSSP前の長期戦

川辺に下りていく。太古の地層とのご対面。
現場ではガイドたちが既に観光客相手に躍動していた。特に予約もしていないが、彼らには見学者を啓蒙するのがこのうえない喜びであるようで、近づく私たちに対しても滑らかに解説がスタート。
 
ここで見られる地層の学術的な価値。何がどうなってどうすごいのか。おっちゃんは力強く、立て板に水の説明。Rもさすがに元理科教師、負けじと玄人な質問を繰り出す。「おっ見どころのある若者が」とおっちゃんもマスクの下で口の端をあげたに違いない。かくしてトークバトルの火ぶたが切って落とされた。
 
「Global Boundary Stratotype Section and Point!」おおーエエ発音。おっちゃんの得意技かこれ。何回も言うもん。……あっおっちゃんその話さっきもしてへんかった? またそっちルート? 
「なるほど~、では〇〇については…」Rもまだまだ乗っていく。Rが質問すればするほどおっちゃんもノッていく。……ここ日陰。寒くなってきたよ?(2月半ば)
 
――実に50分弱。我々はそこにつっ立って説明を聞いていた。GSSPを示すゴールデンスパイクを前に。
おっちゃんはどうも元大学教員だったらしい。なるほど、講義しなれていた。あと話エンドレス。

ここでずっと説明を聞いておりました 悠久の大地!
よお~く見てみると貝殻の化石が

足湯よ また今度

ようやくキリがついて、最後に川辺で貝の化石(茶ぶどうはこっちの方が好み)を見てさようならした。
――15時半とっくに過ぎてる!
「Rさん これだとね 養老渓谷の足湯は無理みたい」
「!!!」
途端にRは深く悔いて嘆きはじめた。
「デートとしては20点だよ……」
「いいじゃん チバニアン見られたし」
「私が! 好きなのは! チバニアンじゃない!! 茶ぶどうさん!!」
のどかな千葉の田舎にRの悲痛な叫びがこだました……
 
月崎駅に戻る。人はいない。歩き疲れたので靴を脱いで、靴下も脱いだ。
足湯は入れないけれども、せっかく塗ってきた足のネイルを見てもらおう。狂喜するR。写真をバシャバシャ撮っていた。私の裸足の写真である。ちょっと変わった人だ。
 
小湊鉄道フリー切符を買っていたので、せっかくだから養老渓谷駅へ。
足湯は営業終了していたし、駅前には家畜小屋の臭いが漂っていた。人気のない冬の夕方の、少し怖いような駅の近くをぶらりと散歩してから、千葉行きの列車に乗った。昔の列車の暗さ。独特の風情がある。ロングシートに二人並んで腰かける。乗客は数人。私はまだRにちゃんと好きって言ってなくて、ただただRの愛を受け取るだけ受け取って満足していた。好きに振り回しても喜んでついてくる人だと思っていた……
(続く)
 
『Rと茶ぶどう』次回?予告:長瀞編

自販機だけが 明るかった


 
 
 
 
 
 
 

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