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1クール13話の「大氷原の小さな家」を妄想する⑤ 第4話
密かに続きを待っている方がいらっしゃるそうで。ありがたき幸せ。
ということで第4話を提出いたします。
※早い話が『聖闘士星矢』の二次創作
※小説ではありません。筆者の脳内アニメです(?)
※↓↓この第3話の続き
【スケートと聖闘士】
「今日は『特別訓練』をする。
氷河はこういうものを使ったことがあるか」
カミュが手にぶら下げてみせたのはスケート靴。
「特別訓練」は凍結した湖でのアルバイトだった。スケートで遊ぶ人々を見守るライフセーバー役。
氷河はスケートは初めてだが、アイザックに手を引かれて氷に乗るとすぐに慣れてしまう。
湖の縁で腕組みをして仁王立ちしているカミュ。赤毛が目立っている。
「あれ? カミュはスケート靴はいてない?」
「監視員は別にスケート靴でなきゃいけないわけじゃないからなー。
オレたちに履かせたのはこれで遊べって言ってくれてるんだよ、暗に」
「そうかなー」
(しばらくきゃあきゃあ遊んでいる)
氷が割れて、子どもが湖に落ちてしまう。
氷河がすぐに助け出しておおいに感謝される。(※1)
「アイザック、少しの間まかせていいな?」
「はい!」
全身ずぶ濡れの氷河をカミュは背負って走る。
先生の背中で、氷河の視界が急にぼやける――速すぎて、何も見えない。(※2)
気づくと家の前にいる。
「早く脱いで着替えろ。今日はもういいから寝ていなさい」
「……ふぁい」(鼻声)
カミュが右手で氷河の頭をさらりとなでる。
濡れていた髪から、水分が砂粒のように凍って落ちていった。
「……よくやったな」
少しだけ上がった師の口角。氷河の顔は赤らんでいる。(※3)
【夢の中で】
その夜、氷河は熱を出す。
夢の中で、マーマが凍った湖の上に立っている。
(湖は黒い。透明な氷が張っている。バイカル湖のような感じ)
「マーマ」
足元の氷が割れ、マーマは湖の中へ……。
「マーマ!」
叫んで目が覚めると、氷河がつかんでいたのはカミュの寝巻だった。
様子を見に来てくれたのだ。
カミュは初めて見る顔をしている。何かに気づいたような、少し驚いたような。(※4)
翌朝、アイザックは栄養剤を買いに村の薬局へ。
「あんたのとこの新しく来た子、昨日はご活躍だったみたいだけど大丈夫?」
「うん、大丈夫……そのうち、凍った海に落ちたって平気になるよ」
「そいつは頼もしいね。……そうだ、今度またクジラ漁があるんだけど」
「カミュに聞いておきます」
「来てくれると助かるって言ってね、ちゃんと一番いいとこあげるから」
【いざクジラ漁へ】
数日後、3人はクジラ漁に参加する。
湖での救出劇の際、氷河のコートは裂け目ができていた。
「これを着ろ」
渡された子ども用のコート。袖口にイニシャルのCが縫われている。
村の古老が、出発前の儀式を執り行う。(※5)
「今日こそは先生が銛を打ち込むところが見たいなあ」
「アイザック、わかっているだろう」
「はーい」
「おーいカミュ! こっち来てくれ」
村人に呼ばれ、カミュは船の準備に加わる。
「……カミュはさ、聖闘士だから武器は使わないって言うんだよ。クジラ漁くらい女神だって目こぼししてくれると思うんだけど、真面目なんだよなあ」
カミュが特殊能力を持った聖闘士なのは公にしてはならないことなので、あまり力を出しすぎずに協力する。隠しているつもりでも、その異常な膂力はにじみ出てしまい……(※6)
陸に戻り、クジラを解体して分けあう。
解体作業ではカミュも刃物を持つ。
「死んだ後に使うノコギリとかは武器じゃなくて、包丁と同じ道具なんだってさ」
「なるほど……」
【暖炉を囲んで】
夜になると古老の家で皆が車座になり、おばあが昔話を語る。カミュは座ったまま寝ている。
「ねえカミュ、カミュ!」
声をかけても揺らしても寝ている。決然と寝ている。
おばあがしわを深くして笑う。
「いいんだよ。その子がそうやって居眠りしてくれるのが一番うれしいんだ。安心してるってことだからね」(※7)
氷河・アイザックには古い語りの言葉はわからないが、おとなしくカミュの横で聞いている。
暖炉の火が、3人の顔をゆらゆらと照らす。
古老に挨拶をして帰途につく。
「カミュ、今日はありがとう」
「いえ」(居眠りしていたとは思えない凛々しい顔)
「アイザックと、氷河もお手伝い助かったよ。……またいつでも、遊びに来るといい」
「はい!」(※8)
満天の星のもと、ゆっくりと3人は家路をたどる。(※9)
――――――――――――――――――――――――――――――
著者のつぶやきと注
……長い気がする。
スケートだけ、クジラ漁だけだと短いが、
つなげるとたぶんこれ25分以内におさまらないな。
本当は、クジラをみんなで食べるシーンも入れたいのだが、それはむしろエンディングの絵にしてしまうのがいいかもしれない(特別ED)。
あ、いいわそれが。ここがみんなの故郷だよってことで……カントリーロードだからな……
コホーテク村のみんなとのかかわりあいを描く回。
カミュ自身はあまり社交的ではないが、氷河があれほどヤコフ(の保護者)に信頼されているのは、村人たちと長い付き合いをしてきたからだろう。
カミュ自身と村人たちとの交流って原作にはないんだけど、村が危機に瀕したときに氷河が探された描写が外伝にある。たぶんこの地で修業を積んできた聖闘士候補たちが、いろんな面で頼りにされてきたということなのだろうし、カミュは義理堅そうだから、なんだかんだお手伝いをしてきたんだろうと想像できる。
で、カミュは自分の力を見せていないつもりなんだけど、隠せているのは凍気くらいで、人間離れした強さは普通にバレている(笑)
(※1)
水に落ちる前にカミュが光速で助けられる、のはそうなのだが、これはやはり弟子の訓練でもあるため、本当にヤバいことになるか見極めて、あえて動かないでいるのだ。
なお、幼児がシベリアの冬に落水したら高熱が出て後遺症が残るなどの危険性はあるが、カミュはそういうことにはわりと無頓着である。自分が丈夫なので。
そもそも、あらかじめ氷をぶあつくしておけばよさそうなものだが、それをするとカミュたちがいないところで人々が危険に気づかないことになってしまうし、聖闘士の力はいたずらに人には見せないものなのだ。
(※2)
ダレン・シャンのアレです
(※3)
「一瞬もためらわずにすぐさま冷たい湖に飛び込んだお前はえらい、聖闘士としての資質をちゃんと持っている、私はお前を誇りに思う」
……みたいな気持ちがあるわけだが、流暢に誉め言葉が出てくるタイプではない。
(※4)
自分が氷河にとって親でありうる、むしろ実際そうなのだという気づき?
アイザックは(私の設定では)親との縁が薄いため、こういうことは今まで起こらなかった。
(※5)
コートはカミュが幼いころ着ていたもの。Cはカミュのイニシャルで、この後物語をするおばあが刺繍してくれた。
村の古老は実は教皇(シオン)の命でカミュ達を見守る役目も果たしている。彼が教皇の中の人の交代に気づいているかは謎。
(※6)
クジラ漁についてはさらなる調べが必要。それによって、氷河らを乗船させるかどうか、カミュの仕事などが決まるだろう。
クジラに一番銛を打ち込む役を、カミュはきちんと村の若者に譲る。
村の若者たちはカミュに一目も二目も置いているが、敬遠している。
村の中では、カミュに同年代の友だちはいない。
(※7)
おばあに代表される村の大人たちにとってはカミュは「子ども」である。
(※8)
カミュは早いうちに新顔を古老の元へつれていって挨拶する。これは「いざとなれば逃げ場がある」ことをそれとなく教えるためだろう、とアイザックは察している。
(※9)
シベリアで3月ごろはどんな星座が見られるか?