ここに生まれたい
『子は親を選べない』よく聞く言葉だ。
果たして本当にそうなのだろうか。
数年前、子ども自身がお母さんを選んで生まれてきた、という内容をTVだったか、何かで耳にしたことがある。
私の夫の弟、義弟が幼い頃に義母に話したことが頭に浮かんだ。
「兄弟たちとお母さんのところに生まれる列に一緒に並んでいた」と。
それが本当のことだとしたら、やはり子どもは親を自ら選んで生まれてくるのだ。
数年前に読んだ記事ではこうあった。
《温泉のような穴がいくつもあり、そこの広場には子どもがたくさんいた。
その穴を覗くと、人がみえる。笑顔で優しそうな女性。自分はここに生まれたい。》
ある幼い子どもが母親に教えたと言う。
この母親は幸せだったのではないだろうか。自分を選び、自分のところに生まれてきてくれた。何と嬉しいことだろう。
この子を生涯、大切にしていかなくてはと、誓いを新たにしたに違いない。
言葉を理解し、少し喋れるようになる2歳~3歳あたりに、何気なく子どもに、
「どうしてママのところに生まれてきたの?」
そう聞くと、このような話をしてくれる子がいるそうだ。
この話を知った時、自分ももし子どもを授かることができた時は、ぜひ聞いてみたいと、楽しみにしていようと思ったものだ。だが私は、訳があり子どもを授かることはできなかった。
しかし今、お世話をするたくさんの動物たちに囲まれて、毎日が子育ての時間だ。苦労や悩みは尽きないが、幸せなことである。
私も生まれる前の記憶は残っていない。
しかし、私もきっと母親を自ら選び、喜んでそこに生まれてきたのだろう。
この世に生まれ、生きるということは、容易いものではない。これはすべての命に言えることである。
生きるということは、痛みや苦しみの連続であり、冷たさや苦悩が尽きない。
何でこのようなところに生まれてきたのか…、生まれてこなければ良かったと思うことさえもある。
しかし時に、幸せの温もりが全身全霊を包み、生きるって嬉しい、生まれてきて良かったと心の底から思うこともある。それがまた、明日への原動力になり、自分の生きているその場所で、幸せの道を築き上げていくのだ。
命懸けで生んでくれたすべての“母”に、心から感謝。
すべての命が、どうか幸せに。
すべての命が、平和に生きていけますようにと心から願う。