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八丈島に行ったら一言目にフェイスマスクをしろと命令された。

誰もいない食堂に通されて、挨拶もほぼ無いまま「ココ座れ」と指令がくだる。会話が始まり、最初に口を開いた途端ちょっと待てアレしろと言われて渡されたのは、頭に青いラインが入るあのフェイスマスクだった。「クニから来た人は怖いから、マスクは全然意味ないらしいから、つけろ。」

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八丈島の顔。55年間伝説の民宿を続けてきたエイコバ(婆)との出会いは、はっきり言って最悪だった。

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「こうこうの趣旨でこんなことをやりたくて…」連れてきてくれた方が説明を試みるが、大体発言が10秒を超えたあたりで話をかぶされてしまう。

「であんた誰に何をしたいん?」
「ええと今、来たくても島に来れない人たちに向けて…」
「島ではでっかいオクラがあって生で食べるんよ、ホラこれな。」
「はい、ちなみに来月あたりだとどんな料理がこちらでは食べ…」
「刺身はワサビじゃなくて青唐辛子な。飛び魚はこれな見てみてい。」

1歩進んで3歩下がるを続けること2時間超。やっと、きっと趣旨が伝わって大体のことが決まった。命令形の「◯◯しろ」が島の普通の言葉であることも、感染者が1人もでていない8000人の島では大半の人がクニ(本土)からの来訪者を歓迎していないことも、分かった。そう言えばタクシーに乗ったとき、お客さん減ってますか?の答えは「はい、来ないで欲しいです」だっだ。

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(まったくもって熱帯な八丈島。「東京都亜熱帯区」のコピーは素晴らしい)

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(見どころの多い島だが、島中にある温泉はどこも最高だった)

夜。民宿の醍醐味である食事とお酒と語らいの舞台となる食堂は、天井から吊り下げられたり机の上に置かれたりした透明のプラスティックの物体で覆われている。

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夕飯は、基本的には部屋に持ち帰って食べてもらってると弁当ケースに入っていた。エイコバとの会話は、5メートルと透明シートを介して大声でした。

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ばあちゃん達は自慢話が面白い。町長が子分だという話も、町に電力会社を作ろうとした話も、あたしゃ芸能人は美空ひばりと石原裕次郎しか知らんのだよと、いっぱい来た芸能人たちを「有名になってから戻ってこい」と蹴散らしているという話も。でも宿のいたるところに、坂口憲二さんの「海から見たニッポン」のサイン入りシールが貼ってあった。

「なんで55年続いてるか分かるか?」と聞かれて、それはエイコバが嘘つかないからじゃないかと答えた。毎回そうだけど僕の言葉には反応を示さずに、あたしゃ客が無事に過ごせてるか気になって気になって仕方がないんだという話を始めた。

親より自分になついて大変だと言う家族連れの子供のこと、海が荒れて潜れないから島には来るなと伝えたけど飲むために来たというダイバーのこと。客は家族以上に家族なんだと言ったとき、目には少し涙が浮かんでいた気がする。リピーターってのは2回くる人じゃない、何十年と来る人のことなんだと2回繰り返して言った。嘘つかないからじゃなくて人として付き合うからだと思った。

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娘さんがもう22時ですよと言いに来たとき、最後お前ちょっと残れと言われた。

ようするにい、テレビ電話みたいので繋いで魚さばいて島寿司つくるんだろ?でこんな感じで話してこんなこと聞いてったら喜んでくれるかね?あたしゃね、この時代をどう生き抜くかの知恵を学んでるんだ。コロナの日々は新しい体験なのよ。ずーむって言うんだろ、今みんなやってるよな、あたしもやってみるよ。外人さんだってどんと来いうぇるかーむさんきゅ〜だから。って、言ってくれた。

エイコバとオンラインキッチンやります

↑は八丈島を訪問した時にFacebookに投稿したものです。

連れて行ってくれたのはJTBさん。オンラインキッチンの取り組みに興味を持っていただき、今はなかなか旅行で行けない南の島とつないで、飲みながら郷土料理をつくるバーチャル旅行xオンラインキッチンをやろうというのがきっかけでした。

今回こうした形で実現しました。ぜひご興味の方、一緒に島を感じる昼飲みをしましょう。



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