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美食倶楽部は「祭りと一緒」。地域の誇りをつくる「おいしい公民館」

新型コロナの影響で、正式オープンの直前に活動休止を余儀なくされた美食倶楽部@高崎(群馬県)。いまだ感染収束の気配が見えない中でも、10月から利用と会員募集を再開する決断をしました。オンラインのコミュニケーションが広がる今、なぜリアルな場にこだわったのか。主催者の小池秀明さんにお話をうかがいました。

コロナで正式オープンが急遽延期に

ーーいよいよ正式オープンというタイミングで、コロナで出鼻を挫かれてしまいましたね…

昨年12月からトライアルで会員募集を始めて、いよいよ今年4月から本格的に動き出すタイミングでした。一気に外出控え、自粛ムードが広がって、やむなく休止を決めました。頭が真っ白になりましたよ。

ーー会員の仮募集期間にはどんなことをされてたんですか?

トライアルで登録してくれた会員は約70人。特によく利用してくれたのが個人の方々です。ワイン好きの人たちがワイン会を企画したり、料理教室を開いたり。あとはちょうど年末年始だったので、忘・新年会などにもよく使っていただきました。

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(オープニングパーティーの様子)

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(参加者が一緒に料理しながら、会話を弾ませた)

ーー飲食関係者など法人利用はどうでしょう?

飲食店の経営者やシェフ、生産者の方々にご利用いただきました。

使い方は主に2つ。1つは社内向けのレシピ開発や人材育成、もう1つは販路拡大に向けたテストマーケティングです。

例えば、海外のバイヤーをお招きして開いた商談会。ただ商品のスペックや価格を伝えるだけでなく、「こんな使い方、こんな料理ができますよ」とキッチンから直接プレゼンし、試食してもらう。実際にそういうやり方で、初めてイギリスやドイツへの輸出が決まった会社がありました。

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(バイヤーを招いて商談会を開催)

美食倶楽部は「祭り」に似ている

ーーなるほど、とてもいい感じにスタートされてたわけですね…

そうなんですよ。それがいったん、コロナで白紙です。とはいえ、僕らがここでやりたいことはコロナがあっても何も変わりません。だから、再開に向けて何ができるかをひたすら考えました。

僕らが目指す美食倶楽部の姿。それは、日本のあちこちに根付く祭りのように、参加者一人ひとりが誇りを感じられる場所です。

ーー「祭り」ですか?

美食倶楽部の本場、サン・セバスチャンに行ったときのことです。そこに集まったメンバーは一人ひとり、誇りとプライドを持ってみんなで一緒にコミュニティをつくり上げていました。あのなんとも言えない熱量と空気感には、もう圧倒されましたよ。

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(サン・セバスチャンの美食倶楽部を訪問)

同時に、ここ高崎にも似たようなものがあることに気づいたんです。それが祭りでした。神輿の会の親方とか、祭りに関わる人たちの熱量ってすごいんですよね。365日ずっと祭りのことを考えていて、それにすべてをかけようという誇りとプライドに溢れています。

それに関わる仲間たちには、お金も地位も仕事も一切関係ない、祭りに情熱を注いでいるという一点でまるで家族のように強い絆があります。美食倶楽部はまさに、そういうコミュニティをつくるための場所なんです。

ーーそうそう、美食倶楽部のキーワードは「誇り」なんですよね!

それは、同じ会員制のサービスでもスポーツジムなどとは決定的に違うところでもあります。両者の違いを一言で言えば、テイク(受け取る)とギブ(与える)の違いです。

スポーツジムでは会員個人は会費を払うことでジムを使えるようになります。自分の権利をテイクできる仕組みです。

それに対して美食倶楽部の会費って、場を運営するためのもの。つまり、自分以外の誰かに楽しんでもらうためにギブする贈り物でもあるんです。そうしてつくられたコミュニティだと、おのずと誇りやプライドが生まれると思うんです。

僕らはそんな美食倶楽部を、「おいしい公民館」とも言っています。美味しいものを食べたい、いろんな人と出会いたい。そうやってここで「何かしたい」と思う誰もが参加できる、食でつながる誇り高きサードプレイスです。

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(焼きたてスコーンのランチ会)

ガス屋が美食倶楽部をつくった理由

ーー小池さんは、本業はガス屋なんですよね?

LPガスや灯油の販売、上下水道工事などの会社を経営しています。その傍らで、美食倶楽部をはじめ高崎や全国各地でいろんな地域活動に携わっています。だから周りからは「何屋だかわからない」とよく言われるんですけどね。

ーー地域活動に関わることになったのはなぜですか?

きっかけは、子供が生まれて親になったことです。子どもの将来を考えたとき、この地域は「このままじゃダメだ」「もっとおもしろい場所にしたい」と思うようになって、生き方がガラッと変わったんです。

それから十数年。音楽とアートと食のフェスや、屋台村の立ち上げ、それに祭りの運営など。地元を盛り上げるためにいろんなイベントを企画・運営してきました。

ーーそれがのちの美食倶楽部立ち上げにつながっていくわけですね。

どんなところでどんな活動をしていても、常に共通の話題に「食」がありました。テーブルを囲んで会議するだけでなく、食事やお酒をともにすることで人と人との距離がグッと近づく。飲んで食べて、一緒につくり上げていく。この体験に、底知れない豊かさと可能性を感じ始めたんです。

その後、大手飲料メーカーが主催する地域創生プロジェクトに参加したことがきっかけで、全国の食に携わる仲間と知り合い、彼らと地域プロデュース会社Inter Local Partnersを一緒に立ち上げました。

そして2年前、サン・セバスチャンの美食倶楽部を訪ね、すっかり魅了されて「高崎にもつくりたい」と思ったわけです。

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(居酒屋「おきらく亭」とのコラボイベント)

「再開して」 現場の声に突き動かされた

ーー話を戻しますが、活動再開に向けて具体的にどうされてたんですか?

1つは、お昼のレストラン営業です。事前予約制、人数を限定したスタイルで8月から始めました。

「会員制」と聞くと、敷居が高いと感じる人もいると思うんです。どんな場所なのかを知ってもらうために、お昼に気軽に来ていただける機会をつくろうと。そして、ご来店いただいた方々には「実はこんな使い方があるんですよ」と美食倶楽部を宣伝してきました。

ーーそして10月から、いよいよ利用と会員募集を再開されました。

「再開されたらぜひ使ってみたい」「身内だけならパーティーを開いても安心だし」。昼営業のレストランに来ていただいたお客様から、そんな激励の言葉を何度もいただきました。

オンラインのコミュニケーションが増えている中で、みなさんやっぱりリアルな場を欲してるんですよね。一言で言うと、人に会いたいんですよ。

当初は年内の再開は難しいと考えてたんですが、思い切って再開に踏み切りました。

ーー現場の声に背中を押されたわけですね。

正直、「フライングしちゃったかな」という気持ちもどっかにあるんです。ただ、数はどうあれ、ありがたいことに再開を待ち望んでくれている方々がいらっしゃる。その気持ちを受け止め、寄り添う場所でありたい。それが僕らの素直な思いでした。

難しい判断でしたが、ずっと立ち止まっているわけにもいきませんからね。誰かがやらなきゃ、何も始まらないわけですし。だったら僕らが先陣を切って、まずは動いてみようと。

ーーその思い、多くの人に届いてほしいですね。

この地域で生活し、子どもを育てる。仲間と泣き笑いを共にする、未来について話し合う。そうやってここで生きることを、誇りに感じてほしいんです。美食倶楽部はそのための場所。これからどんどん盛り上げていきますよ。

◆会員申し込みフォーム
https://takasaki-bishoku.club/entry/

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