デニム生地の生産の裏側をこっそり教えます
こんにちは。モリタです。
今回はデニムの生産に関する裏情報を書いていこうと思います。
1つのデニム生地の生産量(ロット)
みなさんは1つのデニム生地を作ろうと思うと、何メーター必要になるか知っていますか?
約2500メーター必要になります(諸条件によって変わります)
セルヴィッチのデニムを1本作るのに約2.5m必要ですから、本数にすると約1000本です。多いですね。。
デニムの生地はいろんな種類がありますが、1つの生地だけでこの生産量をこなすことはかなり難しいんです。
実はあまり知られていないですが、デニム業界(ひいてはテキスタイル業界)の裏技を使って、生産量を増やさずに生地の種類を増やす方法があります
タテ糸のインディゴ染色ロットは2500m
そもそもなぜそんなにも生産量が必要なのでしょうか?
それはタテ糸のインディゴの染色ロットが2500mだからです。
インディゴで染めた糸をそのままにしておくことはしないですから、その糸を消費する為にたくさん生地を作らないといけないんです。
タテ糸共通で生地を作る
そこで裏ワザが活きてきます
そもそも裏ワザと表現すること自体おかしなことなんですが、それくらい当たり前の生産テクニックです。
染めたタテ糸を使って、ヨコ糸に違う種類の糸を打つんです。
そうすると、何種類もの生地が出来上がります。
今回はそうやって出来上がった生地を紹介していきます
タテ糸の特徴
このタテ糸の特徴ですが、8番の糸を使っています。
通常リーバイスの501などに使われているのは7番なので、少し細い糸を使用しています。
ペインターデニムなどの生地を想定したタテ糸の為、インディゴの色は濃いめで、炭鉱で働く労働者たちの魂が色に乗り移ったかのような、少し鉄分を帯びた色を想像して色出ししました。
RS816-3R 10ozWORKERS SELVADGE DENIM
こちらはヨコ糸に16番のムラ糸(生成り)を打ったタイプです。
3種類の中では一番プレーンなデニムです。
今回はヨコ糸の違いが分かりやすいように、生地の裏側も写真に収めました。
表面↓↓
裏面↓↓
RS812N-3R 10ozWORKERS PAINTER SELVADGE DENIM
こちらは一番ペインターデニムに使われている素材です。
ヨコ糸をグレーに染めた糸を打っています。
表面↓↓
裏面↓↓
ヨコがグレーの為、生地がより濃く見えるようになります。
そもそもなぜペインターデニムにヨコ糸グレーを打っている生地が多いかというと、生地を濃くして、白い部分を少なくすることで、汚れを目立たなくさせているからという説があります。
RS811-3R 11ozWORKERS NEP SELVADGE DENIM
こちらはヨコ糸に10番のネップ糸を打ったタイプ。
オンスが少し重く、表情があります。
表面↓↓
裏面↓↓
ネップ糸が表情を出していますね。
ネップ糸→毛玉のような糸のことです。ネップ玉と呼ばれる原料を紡績の段階で入れます。
製織はシンヤさん
製織工場はシンヤさんでやってもらっています
シンヤさんの凄さはこちらのブログでどうぞ↓↓
https://note.com/txcollect/n/n7ed7c4a3f823
拘りの仕上げ加工
今までブログで紹介していたデニムは-03加工という仕上げ加工をしていました。
これは毛焼き+スキュー(捻じれ防止)+サンフォライズ(防縮加工)の工程をする加工なのですが、この3種類は-3R加工という加工を施しています
-3R加工
-3R加工とは通常の仕上げである毛焼き+スキュー(捻じれ防止)+サンフォライズ(防縮加工)の中の毛焼きの工程を省いた仕上げ加工です。
これは弊社オリジナルの加工方法で、独自に名前を付けているので、業界的にも一般的ではありません。
その毛焼きをしないことで、毛羽が通常のデニムより出るようになり、よりヴィンテージ感のある風合いが出るようになります。
まとめ
同じタテ糸で3種類の生地を紹介しましたが、同じタテ糸とは思えない生地の表情に仕上がっています。
今回は全然違うキャラクターの生地でバリエーションを組みましたが、
タテ糸が共通なことで、似たような生地を作ることも出来ます。
たとえば、表情は同じでもライトなデニムを作りたい場合などは、タテ糸共通で、ヨコ糸の番手を変えることにより、同じ生地のオンスを幅広く持たせることができます。