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第4回 「今年は服が来る」

[編集部からの連載ご案内]
アーティストなのかパフォーマーなのか、芸人なのか構成作家なのか、グッズ業者なのかSNS界のマルジェラなのか、一言ではくくれない(SNS界なのに)ぼく脳さんの文章世界!(月1回更新予定)


先日渋谷に行って確信した。服は流行っている(これマジ)。
以前何かのテレビ番組で「今年はパンが来る!」というコーナーをやっていて「来っぱなしだろ」と思ったことがあるが、去年あたりから「服」が来ている。これは間違いないだろう。
 
服だって来っぱなしだろ、と思ったそこのあなた。それって本当に服が来ていましたか? 色が来ていただけじゃないですか? (無茶苦茶な言い分でも強気で言い切られるとそうなのかなって思いますよね)。しかしこれは突拍子もないことを言おうとして言っているわけではなく、大マジで言っているのだ。感覚の問題かな。服ってすごくないですか? 服が溢れてますよ今。
 
ありがたいことに(?)「オシャレですね」なんていうメッセージをもらう機会がある。この前なんて、パチンコがテーマのヒーローみたいな人が歩いてるなと横目で見ていたら「ぼく脳さんですよね? いつもオシャレで好きです」と言われて「誰が言ってんねん」の正解が出てしまった。しかし、この場を借りてハッキリと言っておきたいが、僕は全くもってオシャレではない。オシャレな人間が秋服を柔道着しか持ってないわけがない。稀にファッションの講義的なものを頼まれてゲストとして行くことがあるが、教えられることがなさすぎて、砂場に忘れられたおもちゃのようにじっと動かなくなってしまったこともある。僕のオシャレの実績なんて小2の時にくるぶしソックスを地域に持ち込んだことくらいである(十分アントワープかも)。
 
そもそもオシャレの定義って何だよ殺すぞみたいな意見もあると思うが、今回そこには触れずに話を進めていく。僕はオシャレではないが、表現としての服は好きである。正確には好きというか「あるあるネタのズラし」が根本である自分の芸風(ぼく脳のネタばらしです。ぼく脳というか芸術のネタばらしかも? 殺される?)に服という表現が妙にマッチしていると思っている。服は「あるあるネタ」がわかりやすい。どんなに服に興味がない人でもとりあえずファッションをしないと(何か着ないと)いけなく、絵画や他の芸術の見方がわからない人でも服の着方なら知っている。帽子を履く、鞄を被る、みたいにズラすだけで、何か作品っぽいものはできてしまう。
 
服に興味があるかないか、それは「服は自分の一番外側か、世界の一番内側か」、その捉え方によって決まると僕は思っている。どこかの偉い人が集まって決めた流行りの色、流行りの形、なんか社会そのものを丸ごと吸い込んだ布に思えて、僕は世界の一番内側である服がウザいと思ったことがあった。対して服好きな人は自己表現として「服は自分の一番外側」という認識を持って着ているように感じる。昔は今よりも外見ブームだったので、服はモテのスピードが速く(わかりやすく言うと眼鏡からコンタクトに変えるだけでモテだしたり)、思春期は多少ファッションを頑張ったりもしたのだが、僕のモテグラフはクソつまらないマリオの面かと思うほど一直線だった。
 
今も十分に来てるのだが、昔は外見(顔に重きを置いた)がもっと来ていた。ビジュアル系バンドというすごいジャンル名のバンドも流行っていたくらいだし。すごい名前だよビジュアル系って。昔よりも今のほうが中身が流行っていると思うのだが、昔より服も流行っているのは、やはり服は「中身の表現」であると考えている人が多くなったからだろうと思う。外見で判断するのがダメで中身で判断するほうが偉い、というものよくわからない論だが、その外見(容姿)と中身(性格)の中間(筋力、運動神経系)で判断する小学生がもしかしたら一番正しいのではと思えてくる。
 
冒頭で言ったように、今、服は確実に流行っている。ファッションが飽和し、オシャレが当たり前になりすぎてしまった。オシャレをしているはずなのに顔は楽しそうには見えず、ソフト七五三のようになってしまっている。僕は今一度、服を着る、オシャレをする楽しさを取り戻したい。そこで考えたのだが、オシャレを取り戻すイベントとして「断服(だんぷく)」というものはどうだろうか。断食をすると、敏感になった舌は今まで感じることができなかった味を感じれたりするらしい。素材そのものの味で満足感が得られ、調味料がいらなくなる人も多いという。断食と同じで、1週間ほど「服」を断つのだ。全裸で家の中で過ごし、1週間後、目一杯のオシャレをして玄関のドアを開け、外へと歩き出す。その瞬間をカメラで捉えておけば、何よりも素晴らしいファッションショーになるのではないか。単純にどんな服装になるのか興味があるし、断食後の舌が調味料を欲さないようにTシャツとジーパンとかになるのか、はたまた木星のフワちゃんみたいな格好になるのか、とても興味深い企画だと思う。どこかの媒体でやりませんか? オファーお待ちしております。服が流行っているうちに。

各コンビニがオリジナルの白Tシャツに力を入れだしたのも
服が流行っているひとつの証明だろう。

「コンビニに売ってる白Tシャツをドッキングさせた物」©️ぼく脳

ぼく脳(bokunou)
芸人・パフォーマー 。吉本興業に所属し芸人としてキャリアをスタートした後、漫画や音楽、ファッションの分野で作品を制作。ツイッターやインスタグラムなどで作品を発表し、日常に転がるアイテムを使った独創的なアートセンスが巷で話題を呼んでいる。文章の連載はこれが初めてとなる。渋谷PARCOの「金三昧」by Chim↑Pom from Smappa!Groupで商品販売中。
Twitter: @_bokunou | Instagram: @bokunou | YouTube: ぼく脳 bokunou

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