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【連載】ノスタルジア大図鑑#03|日本全国キーホルダーぶらり旅:北海道編


昭和やそれ以前、物心ついた頃からあたりまえにあったもの。
めまぐるしく移り変わる時代の中で、気づいた時には無くなっていることも。

さまざまな理由で「このまま放っておいたらいつか無くなってしまうかもしれないもの」、後世までずっと残して受け継いでいきたいと思う「日本の文化・日々の暮らしの中の物事」を取り上げ、個性豊かな執筆陣による合同連載<ノスタルジア大図鑑>としてお届けしていきます。


今回はお届けするのは、「旅の思い出をなにかしらの形で持って帰りたい……この地に来たという証を何か……えぇい!これだ!」と掴んだ手のひらにのってる選手権第1位の「お土産キーホルダー」。

そんな観光名所の名を誇り高く刻まれたあのキーホルダーたちには、それぞれに細かなこだわり・個性が見え隠れしているのです。

約30年かけて集めたキーホルダーは2万点を超える(!)という日本一のキーホルダーコレクター・水上 友さんが「お土産キーホルダー」の魅力を語り尽くす<日本全国キーホルダーぶらり旅>をお楽しみください。


第1回:北海道編


A_日本メタル地図

『日本お土産キーホルダー大全』より


初めまして。
お土産キーホルダー友の会会長の水上友(みずかみ とも)と申します。
全国の観光地を巡り、お土産キーホルダーの収集・研究・普及活動を行っています。

B_八戸

八戸(青森県)の土産物屋


一昔前には、観光ペナントと並んでお土産の定番であったキーホルダー。観光地の風景が描かれた金属製のメダルやレリーフに「熱海」などの地名が大仰に刻印されていて、いかにも昭和な雰囲気を醸し出すレトロ系絶滅危惧種土産です。

キーホルダーの魅力はなんといっても、金属特有の重量に加え、耐久性に由来する高級感です。まさに“お土産界のダイヤモンド”と呼ぶに相応しい存在なのです。

C_秋芳洞

秋芳洞(山口県)の土産物屋 

D_展示風景

お土産キーホルダー友の会 コレクションラック


収集歴は約30年、コレクションは2万点ほどありますが、その中でも選りすぐりの魅力的なキーホルダーを都道府県ごとに紹介していきたいと思います。

「日本全国キーホルダーぶらり旅」第1回目は、観光大国“北海道”です!
北海道だけで当コレクションの1割近くを占めることから、キーホルダーの聖地と言っても過言ではありません。
それでは早速、キーホルダーで巡る旅のスタートです!


① 知床岬

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サイズ全長120㎜(フォブ本体72㎜)×幅85㎜ 重量85g


どうですか、この“ザ・北海道”とも言うべき地図型のキーホルダーは!
サイズと重量ともに通常のキーホルダーの2倍強を誇り、まさに“北海道はでっかいどう”を体現したような堂々たる佇まいには威厳さえ漂っています。

裏面は、知床八景のひとつに数えられる知床岬の夕日をレリーフ(浮彫り)仕立てで。ウトロ港と三角岩、オロンコ岩が力強く描かれ、幻想的な夕日の情景をハマナスが艶やかに彩ります。

知床岬

ウトロ 夕陽台からの絶景


②夕張メロン城

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サイズ全長102㎜(フォブ本体50㎜)×幅43㎜ 重量44g


メロンの産地として有名な夕張らしく、マスクメロンを前面に押し出したデザインはインパクト大!
当コレクションでもメロンをモチーフにしたキーホルダーは本品のみ。網目の再現度に職人の意地を感じる逸品です。

裏面は、キーホルダーの構成では最もベタな地図仕上げ。スマホのない時代には、おおよその現在地を知ることのできる地図メディアとしての役割も担っていたのです。
ちなみに、食品製造施設であった「夕張メロン城」は閉鎖しています。

夕張メロン

夕張メロンの出荷作業


③ 登別温泉

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サイズ全長125㎜(フォブ本体57㎜)×幅45㎜ 重量29g


紅葉の名所に多いもみじ型シリーズで、全国各地の観光地で見られたフォーマット。タイトルにはダイヤカットが施されるという高級感の演出に加え、地獄谷が「標高200Mにある」という親切な解説付きです。

レコードのようにメインのオモテ面には登別温泉を、裏面には登別の観光スポットのひとつであるオロフレ峠をカップリングさせるというリバーシブル仕様。オモテと同様に「登別⇔洞爺湖を結ぶハイウェイ」という心憎い( ?)解説付きです。

登別温泉

白煙立ち上る登別温泉地獄谷


==== キーホルダー用語解説①【ダイヤカット】====

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ダイヤカット機を使用して施す装飾技法のひとつで、先端部の回転数を調整することにより、目的に応じた切削加工が可能となる。

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左/タイトル装飾に用いられる1回転(通称・スライド)
右/外枠装飾に用いられる30回転(通称・アヤメ)

『日本お土産キーホルダー大全』(辰巳出版)より

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④ サロマ湖

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サイズ全長80㎜(フォブ本体32㎜)×幅29㎜ 重量33g


見た目は小粒ですが、中を開くと別のレリーフ楽しめるというカスタネット仕様。シリーズ化もされていて、外観のデザインは観光地に因んだものになります。本品はサロマ湖名物のホタテ貝がモチーフです。

小粒のホタテ貝を開くと、中から現れるのは、これまたサロマ湖名物の北海シマエビ!北海道最大であるサロマ湖の壮大な景色を眺めながら、湖に接するオホーツク海の恵みが躍る海鮮丼を味わいたいものです。

サロマ湖

初夏の風も爽やかなサロマ湖畔


⑤大雪山

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サイズ全長98㎜(フォブ本体48㎜)×幅52㎜ 重量26g

本品は、チロル帽に宿る想い出の登山を見事に具現化した逸品です。厳しい北海道の大自然を踏破した登山者の脳裏に蘇るものとは……。
戦後初のレジャーとして登山が流行し、記念品の登山バッジがキーホルダーへと進化。主にピッケルやチロル帽をモチーフとしたデザインが用いられ、山岳系の観光地では定番のお土産でした。

裏面は、大雪山連峰の主峰であり、噴煙立ち上る北海道最高峰の旭岳。ロープウェイからは秋の芸術的な紅葉を愛でるもよし、冬の幻想的な霧氷に感動するもよし。

大雪山旭岳

大雪山系旭岳の絶景


⑥幸福駅

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サイズ全長120㎜(フォブ本体48㎜)×幅25㎜ 重量22g


お土産キーホルダーの中でも、切符は屈指の人気モチーフですが、本品は硬券の質感まで完全再現しようとした意欲作。「愛国から幸福ゆき」の切符を求めた人々の熱量が伝わってきます。

幸福駅は、昭和48(1973)年、NHKの紀行番組『新日本紀行』において紹介されたことから知名度が急上昇。北海道の国鉄広尾線で突如巻き起こった幸福駅ブームは、縁起物入場券の走りともなりました。

幸福駅

幸福駅舎内


⑦洞爺湖

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サイズ全長132㎜(フォブ本体65㎜)×幅45㎜ 重量36g


本品は、ヒグマとサケのチャームを左右に吊り下げたヤジロベエ仕様。アイヌの厳かな儀礼「イオマンテ」をポップに仕上げながらも、伝統衣装を丁寧に再現するなど、アイヌ民族に対する畏敬の念も込められています。

以前はアイヌモチーフのキーホルダーは定番でしたが、人権問題の高まりとともに最近は見かけなくなりました。「♪ピ~リカ、ピリカ~」小学校の修学旅行で訪れた際聞いた、どこか寂し気なアイヌの歌が今も胸に残ります。

洞爺湖

洞爺湖 中島の顔ハメ看板


⑧野生動物(ヒグマ、サケ、キタキツネ)

<ヒグマ>

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サイズ全長100㎜(フォブ本体51㎜)×幅64㎜ 重量46g


北海道の野生動物と言えば、サケをくわえたヒグマを連想する方も多いのではないでしょうか。「北海の暴れん坊 鮭喰熊」と大仰に銘打たれた本品を手にすると、かつて家具調ブラウン管テレビの上に佇んでいた北海道土産の王様「木彫りの熊」を思い出さずにはいられません。

ヒグマとサケ


<サケ>

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サイズ全長125㎜(フォブ本体63㎜)×幅28㎜ 重量28g


北海道グルメに欠かせない存在の「サケ」も、北海道土産では定番のモチーフです。鱗からヒレに至るまで丹念に彫刻されており、いかにも脂がのっていそうなサケのレリーフに思わず食欲をそそられます。
裏面には、生育過程までの簡潔な豆知識付き。

サケ


<キタキツネ>

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左:サイズ全長112㎜(フォブ本体60㎜)×幅48㎜ 重量21g 
右:サイズ全長112㎜(フォブ本体60㎜)×幅49㎜ 重量23g


そして、お土産キーホルダー史に燦然と輝くファンシー絵土産の登場です。ファンシー絵土産界で始祖とも言えるキタキツネは、北海道固有の野生動物にも関わらず、日本全国の観光地に出没する人気キャラクターですが、やはり北海道での出現率が最多。
「ボクヒトリボッチナンダ。ネエ、トモダチニナッテヨ」と、ファンシー絵土産特有のローマ字表記が哀愁を誘います。

キタキツネ


⑨函館

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サイズ全長98㎜(フォブ本体48㎜)×幅52㎜ 重量30g


北海道キーホルダーで一番多いモチーフはやはり北海道の地図型!というわけで最後も地図型で締めます。ダイヤカットで縁取りした北海道の中に、青函連絡船、五稜郭、ハリストス正教会、函館山と函館観光の名所をふんだんに詰め込んだ多景仕様となっています。

函館

函館山より百万ドルの夜景


函館は、小学校の修学旅行で訪れた想い出の地。言わば、キーホルダーの旅の原点です。
初めて汽車に乗って、連絡船に乗って、本州を飛び出して、ホテルに泊まって、と全てが初めて尽くしの想い出は今も色あせることはありません。あの時の楽しかった記憶が、キーホルダー収集の原動力になっています。

北海道の雄大な大自然を感じさせる逸品の数々いかがでしたでしょうか。
手にした時の重量感、充実感、家族や友人と過ごした楽しい想い出……。旅にお出かけの際は、是非お土産屋で実際にキーホルダーを手に取り、その魅力に気づいていただければ幸いです。

次回は修学旅行の聖地・京都へ!
団体旅行の代名詞でもある修学旅行として、日本人の誰もが一度は訪れたことがあるであろう一大観光地です。日本の美と伝統を凝縮したキーホルダーを紹介する予定ですので、乞うご期待!


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E_自画像_hosei

【著者プロフィール】
水上 友(みずかみ とも)
お土産キーホルダー収集家。全国の観光地を巡り、お土産キーホルダーの収集・研究・普及活動を行っている。約30年かけて集めたキーホルダーの総数は2万点を越える。おそらく日本一のコレクター。
著書に『日本お土産キーホルダー大全』(辰巳出版)がある。

●Twitter@mizukamitomo
●Webhttp://keyholdertaizen.pya.jp/


次回もお楽しみに!

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