03 観覧車とメリーゴーラウンド
ずっと、観覧車を倒すとメリーゴーラウンドになるな、と思ってきた。
それは空想建築家的というかガリバー的視点というか、一人王様的というか身勝手な妄想というか……。
でもこれは、近景にメリーゴーラウンドがあって、遠景に観覧車がある場合の遠近感のもとでの発想だろう。実際に観覧車を倒したら、山手線くらいになってしまうからだ。
これは大げさな言い方だけれど、とにかく観覧車を倒したら、とてもメリーゴーラウンドでは済まない。馬たちはもっと大きな円を回ってしまう。それくらい、観覧車は倒したら場所を取る、ということだ。
自転車の車輪を考えてもらえればイメージが湧きやすいだろうか。
タイヤを本体からはずして玄関にメリーゴーラウンドのように置いてみると、靴をどかさなければならないほど場所を取る。
しかし観覧車のように立てれば、うまくすると壁と同化して何事もなかったかのような事なき景となるであろう。
このように、観覧車というのは遊園地における収納上手さんなのであり、メリーゴーラウンドは、こんまりに診てもらうべき、収納下手さんなのだ。
ちなみに、きっと誰もがメリーゴーランドと言ったり書いたりするため検索でも「メリー」と打った時点で候補にメリーゴーランドが上がってくるが、正確には「メリーゴーラウンド」である。
メリーがぐるっと回るのであって、メリーゴーランドだとメリーがコロンブスになって新大陸を発見してしまう。
たくさんの人類が一斉にメリーゴーランドという言霊を念じて打つと、時空が誤変換を起こして、卵がコロンブスを発見してしまう。
場合によっては、世界中のスーパーの卵からコロンブスが孵ってしまい、この星は永久に新大陸を発見できない。
コロンブスの仕事を奪わないためにも、わたしは心して「メリーゴーラウンド」と打とう、と思う。
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